第六十六話 魔王様、ぶっちぎる
「うおおっ!?」
「……っ!?」
「ど、どうしたのだ、まおたん?」
「あ、いや、あの……原理はよくわからないですけど、このコンタクトを介して見た対象のステータスが表示されるっぽいです!」
配信時のコメント欄みたいに、文字が書かれたキラキラ石板みたいなのが空中に浮かんでる。
これはすごい!
ロールプレイングゲームとかでよくあるステータス画面みたいなやつって言えばわかりやすいかな?
レベルに体力……腕力とかスキルまでしっかり描画されている。
ていうか、高濃度なんちゃらが脳波ぱたーんでゆらぐ……とか訳わからんこと言わずに、「いい感じでステータス画面が出るよ☆」って書けばいいのに。
それ、八十神さんに言っとこ。
「ステータスなんて初めて聞いたでござるよ。誰のステータスが見えてるでござるか?」
「今見えてるのはみのりちゃんのステータスで……って、ちょっと待って。面白そうだから、ステータス大公開は配信をしながらやろう!」
「あ、それ、ナイスアイデアでござるな!」
「いい考えだ! 私も自分のステータスがどんなものか、リスナーたちに紹介してやりたい!」
みのりちゃんとトモ様も興奮気味。
自分のステータスがどんなもんなのか、誰も知らないしこれは盛り上がりそう。
というわけで、ダンジョンに入ってドローンちゃんを飛ばし、全員で配信を開始。
まおは魔王軍のみんなに、さらっと顔合わせ配信と八十神さんから提供してもらったARコンタクトの件を説明した。
【うおおお! 突然のコラボきたあああああっ!】
【しかもトモ様とみのりちゃんだなんて・・・生きててよかった】
【ありがてぇ! ありがてぇ!】
【だけど、ステータス表示ができるARコンタクトとかやばくない?】
【八十神さん、すげぇな・・・】
【あの会社、ドローンだけじゃなくてARコンタクトまで開発してんのか】
【ステータス表示って、なんでそんなことができるんだよww】
【どういう仕組みなん?】
【解説おじ〜】
【解説おじ:わ、わかりません】
【wwwww】
【そりゃそうだ】
【WEBサイトに概要書いてるけど、ダンジョンに滞留してる魔素を検出して、いい感じに変換して描画してるんだと】
【なるほど、良くわからん】
【魔素を検出って・・・もしかして八十神さんってばダンジョンの仕組みを解読してる?】
【ありえるな】
【んなわけねぇだろwww】
滝のように流れてくるコメントだけど、概ね好感触の反応みたい。
だけど、見る限りあまり一般的な技術ではなさそう。
これって結構革命的な技術なのかな?
「というわけで、早速、大魔王軍に加入してくれたみのりちゃんとトモ様のステータスを大公開していこうと思います! 最初は……はいっ、みのりちゃん!」
「えっ!? しょ、小生からでござるか!?」
小動物みたいにビクリと身をすくませるみのりちゃん。
はい、可愛い。
そんなみのりちゃんをじっと見て──。
「……いくよ! 『ステータスオープン』!」
どれどれ、みのりちゃんのステータスは……?
―――――――――――――――――――
名前:湯川みのり
レベル:48
HP:480/480
筋力:33
知力:60
俊敏力:32
持久力:29
スキル:【モンスターシンドローム】【下剋上】
―――――――――――――――――――
「……おお、レベルは48!」
「えっ!? よっ、48でござるか!?」
「すごい! これはなかなか高いんじゃないでしょうか!?」
基準がよくわからないけど、始めたばっかりなのに48は高いと思う。
あ、もしかして、スキル【下剋上】でレベルが上がってるのかな?
確か自分のレベルとパーティメンバーのレベルの差が大きければ大きいほど強くなるって能力だったよね?
【すげぇ! マジでステータス画面だ!】
【これはwww】
【すごいよ魔王様! 配信にも乗ってる!】
「……えっ、マ?」
スマホの管理画面から配信をチェックしてみると、確かにまおが見ているステータス画面が配信にのっている。
すご。
特に設定する必要もなく配信に乗るなんてホントにどんな技術でやってんだろ、これ?
「よおっし、どんどん行くよ! お次はトモ様です! 一体どのくらいのレベルなのか、期待ですね〜」
【wktk】
【これは期待せざるを得ない】
【強いってのは解ってたけど、レベルを測定するなんて初めてだからな】
「……ごくっ」
トモ様も期待している様子。
では早速。
トモ様を見て、ステータスオープン!
―――――――――――――――――――
名前:神原トモ
レベル:474
HP:5020/5020
筋力:565
知力:422
俊敏力:890
持久力:1070
スキル:【鉄拳制裁】
―――――――――――――――――――
「ええっとレベルは……おお、すごい! 470! いきなり3桁いきましたっ!」
「す、すす、すごい! 流石トモ殿でござるっ!」
「こ、これは高いのか?」
トモ様は困惑気味。
やっぱりスピードを活かした戦闘スタイルだからか、俊敏力が高いけど持久力もずば抜けてる。
流石、バスケ部のエースだわ!
【すごすぎて草】
【桁が違うwww】
【まぁ、納得のレベルの高さだな】
【青山10号のボスをタコ殴りできるわけだww】
しかし、ステータス表示できるって面白いな。
これ、スカベンジャーさんだけじゃなくて、モンスちゃんのステータスも見られるってことだよね?
これを使えば、ダンジョン探索もぐっと楽になりそう。
危険なモンスちゃんとの戦闘を避けることができるし。
あ……でも、ひとつだけおっきい欠点があることに気づいた。
これ、自分のステータスは見ることができないよね?
だって自分の顔を見ることなんてできないし。
「まお殿ご自身のステータスは見ることができないでござるか?」
「そうみたいだね。ステータス表示させたい対象の顔を見ないといけないみたい」
「顔、か」
ふむ、とトモ様。
「だったら鏡を使ってみたらどうだろう?」
「え? 鏡?」
「ああ。それだったら自分の顔が見えるだろう? スマホの自撮り画面でも良さそうだが……」
「……あっ」
確かに。
トモ様、天才かな?
早速、スマホのカメラ機能を起動。
画面にデカデカとまおの顔が映る。
「じゃあ、やってみますね! 『ステータスオープン』!」
まおの声に反応して、ビュワッとステータス画面が表示された。
やった、成功だ!
無理だと思ってたけど、自分のステータスを見られるなら、ぐっと使い所の幅が広がって──。
「……え?」
思わず唖然としちゃった。
だって……まおのステータス、超やばかったんだもん。
―――――――――――――――――――
名前:有栖川まお
レベル:6000
HP:15000/15000
筋力:43000
俊敏力:12000
持久力:25000
スキル:【以心☆伝心】【この指と〜まれ♪】【私ってば無敵すぎる】【元気吸っちゃうぞ♪】【あたし好みにな〜れ】【どどんがどん☆】【キラキラ☆結晶】【超・理不尽パンチ】【スキルリネーム】
―――――――――――――――――――
「どうだったでござるか?」
「えと……レベル6000でした」
「……え?」
「……へ?」
トモ様とみのりちゃん、唖然。
魔王軍のみんなもびっくりしてる様子で。
【wwww】
【ウソだろ】
【こ・れ・はwwww】
【レベル6000きちゃああああ!wwww】
【しかもスキルの量よwww】
【レベチwwww】
「うん、ちょっと待って?」
まお、目をゴシゴシとこすってステータス画面を二度見する。
だけど、表示されていたレベルは、間違いなく6000。
トモ様の軽く10倍である。
ええと、このコンタクト……壊れてるのかな?
「た、多分、測定ミスだと思うのでもう一回確認してみますね! 『ステータスオープン』!」
ステータス画面が消え、すぐに再表示される。
だけど数値は変わっていない。
【6000ですね】
【変わらないですね】
【確定ですね】
【草草草】
【レベルろ・く・せ・んwwww】
【いやぁ、さすまおだわ〜】
【色々謎が解けたわ】
「……解せぬ」
むしろ謎が深まった感じじゃん……。
いや、前に木下に【ジャッジメント】されたとき、レベルが半分の半分になってるのにあんま影響ないな〜とは思ってたよ?
だけど……レベル6000て。
ちょっと桁が違いすぎない?
【そりゃS級モンスターも完封するわ】
【銃弾を脳天に食らって痛いで済む理由がわかってよかった】
【まぁ、ダンジョン最下層をソロで行くくらいだからなw】
【SS級くらいないと、相手にならんなこりゃ】
【んなもん存在するんか?www】
【するわけない】
コメント欄、大盛りあがり。
まおの予定では「トモ様のステータス、ダンチだわ〜(笑)」みたいな感じで盛り上がるつもりだったんだけど……まぁ、いいか。
それから軽くダンジョンを散歩して雑談したり、トモ様がおっかなびっくりでモンスちゃんを愛でたりして、わくわく顔合わせダンジョン探索は終了することに。
またコラボしましょうね〜なんて話しながら、待機エリアに戻ってきたんだけど──。
「……ん?」
「なんだか騒がしいでござるな?」
待機エリアで準備をしていたと思わしきスカベンジャーさんたちが、急いで荷物をまとめてダンジョンを出て行こうとしている。
一体どうしたんだろう?
スタンピードが起きたときと似てるけど、何かから逃げてるって感じじゃないし──。
「何があったんですかね? まお殿?」
「ん〜、わかんないな。ちょっとそこの人に聞いてみる」
近くにいたスカベンジャーさんに声をかける。
「急いでいるところ、ごめんなさい」
「ああ? なんだよ……うぇっ!? ま、まま、魔王……様ぁぁっ!?」
スカベンジャーさんがギョッと目を見張る。
どうやら、トモ様を見てびっくりしたみたいだ。
いや、わかるよ?
生トモ様見たら、そうなるよね。
誰だってそーなる。
まおもそーなる。
だけどここはちょっと落ち着いてもろて。
「ちょっとだけ聞きたいことがあるんですけど、良いですかね?」
「き、聞きたいこと? な、なな、な、何でしょうか?」
「みなさん慌ててダンジョンを出ているみたいですけど、何かあったんですか?」
「え? ダンジョン? ……ああ、あれですか」
スカベンジャーさんは慌ただしい準備フロアを見て続ける。
「なんでも六本木に未知のダンジョンが現れたらしいんですよ。それで皆、そこに急いでるみたいで」
「……未知のダンジョン?」
つい首を傾げてしまった。
なにせ、新しいダンジョンが見つかったなんて話はまおがスカベンジャーをはじめて一度もないのだ。
ダンジョンが現れて十数年が経ち、日本中にあるダンジョンはあらかた調べ尽くされている。
最後に新しいダンジョンが発見されたのって何年前なんだっけ? なレベルだ。
だけど、そっか。
新しいダンジョンが発見されたってなれば、そりゃあ大騒ぎになるよね。
きっとこの人も早くそのダンジョンに行きたいはず。
すんごくソワソワしてるし。
「あ、あの……魔王様?」
「あ、引き止めちゃってごめんなさい。状況はわかりましたのでそのダンジョンに行っちゃっても──」
「あのっ! 良かったら、サインください!」
「なんて?」
思わず聞き返しちゃった。
え? サイン?
もしかして聞き間違いかなと思ったけど、色紙とサインペンを差し出してるし、ガチなやつだよね。
いや、まぁ、別にいいんだけど……すぐ後ろにトモ様もいるのに、なんでまお?
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