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第五十四話 魔王様、質問攻めを受ける

「えっと、魔王様……そろそろやめてもらえませんかね?」

「……うん、そうだね。ごめん」



 調子に乗って5回くらいぶっ飛ばしたところで、チンチン丸さんを追いかけるのをやめた。


 だって、マジで怖がってる感じで、流石に可哀想になってきたんだもん。


 ストーキングされてるのはまおのほうなのに、これじゃあどっちが悪者なのかわからないよ……。



《ボコボコにされるチンチン丸さん・・・ww》

《光の速さでデコイが5回死んじゃったね》

《【朗報】魔王様、アンチに対しても慈悲の心をお見せになる》

《アンチなのかどうなのか判断に困るけどなw》


「あ、あの……魔王様? 改めてですが、どうしても元の世界にお戻りにならないと?」

「戻るもなにも、まおが住んでるのはジャパンだし」



 最初から言ってるけどさ。


 というか、元の世界ってどういう意味なの?



「それに、まおはダンジョンストリーマーとして生きていくって決めたんだ! 配信観てくれる人もたくさんいるし、みんなを置いてはいけないよ!」



 グッと握りこぶし。


 あっ! 今まお、すごく良いこと言った気がする!



《(´;ω;`)ブワッ》

《魔王様・・・》

《感動しました! ¥3000》

《ストリーマーの鑑だわ ¥4000》

《一生ついていきます魔王様! ¥10000》



 うええっ!? なんでスパチャ!?


 自画自賛はしちゃったけど、そんな気軽にお金投げるのやめて!!


 ご利用は計画的に!



「……配信……なるほど。そうですか、わかりました」



 神妙な面持ちでチンチン丸さんが続ける。



「それでは、あなたが魔王イブリズ様であることを、配信を観ている数万の方たちの前で我が証明してみせましょう!」

「はへ?」

「いわゆる外堀から埋めていくというやつです! それでもう逃げることはできませんよ、魔王様!」


《おお》

《なかなかに賢いかもしれない》

《確かに言い逃れはできんな》

《証明できたらの話だけど》

《豪語するからには確固たる証拠があるんやろな?》

《証明とか無理じゃね?》

《この人、魔王様と同じくらいアホっぽいからな》

《↑あっ、こらっ!》

《おいwwww》

《もっとオブラートに包んでもろて》

《てか、魔王様は魔王様だし》

《証明なんてする必要ないよな》

《チンチン丸さん、魔王様はすでに「異世界から転生してきた魔王」って広まってるよ?》


「……え? マジで?」



 配信を観ていたのか、動揺するチンチン丸さん。


 まおもひどく動揺してしまった。


 現在、まお配信の同接数は9万5000人……。


 そんな大勢の前で、魔王だって確固たる証拠を出されちゃったら魔王認定書が発行されちゃうんじゃなかろうか。


 汚名返上とか言ってる場合じゃなくなる大ピンチなのでは!?


 反撃しなければマズい!!



「そっ、そそ、そんなの無駄だよ! まおは魔王じゃないってこと、逆に証明してあげるから! じっちゃんの名にかけて!」



 ビシッとカッコよくチンチン丸さんに言い放つ!



《・・・??》

《えっ?》

《じっちゃんの名にかけて?》

《なにその聞き覚えのある決め文句ww》

《魔王様のおじいちゃんって有名人なの?》

《まさか、有名な探偵さんとか?》


「いや、ただの可愛いおじいちゃんです。たまにパンツ履き忘れるのが玉に瑕……」



 むしろそこが可愛いとも言う。



《草》

《wwww》

《もうろくおじいちゃんじゃねぇかwww》

《この孫にしてそのおじいちゃんアリか・・・》

《そんなおじいちゃんの名を賭けてもらっても困ります》

《チンチン丸さんも呆れてて草》

《だけど、どうやってまおたんが本物の魔王様だって証明するんだ?》



 確かに。


 何かこう……パパラッチ写真みたいな物証でもない限り、まおは認めないよ?



「ふっふっふ、簡単ですよ。魔王イブリズ様との共通点を示せばいいだけです。転生されても性格は変わっていないご様子ですからね? 共通点が多ければ多いほど、あなたが魔王イブリズ様だという証拠になるというわけです!!」

「そ、それは……っ!」

「さぁ、我の質問に答えていただきましょうか……()()()っ!!」


《え? 本人に質問するの?》

《本人に質問したらだめじゃね?》

《ドヤ顔で「性格が一緒」ってバラしてるし、ウソつかれて終わりだろ》

《それな》


「……あっ」

「……あっ」



 き、気づかなかった……。



《いやいやw》

《あっ、じゃねえよwww》

《ふたりでキョトン顔やめいwww》

《魔王様も気づいてなかった系か》

《アホの子がふたりww》

《なぁ、この人マジで異世界人で魔王様の部下だったとしたら、異世界の魔王軍って相当やばくね?》

《wwww》

《確かに》

《心配になるレベルだわ》


「で、でで、ではこうしましょう。我が魔王様について質問しますので、リスナーのみなさんに答えてもらいます。どうです? これでウソはつけないでしょう?」


《なるほど》

《チンチン丸にしては良い考えだな》

《いいよ》

《協力します》

《あずき:なんだか面白そうだから協力する》



 うええっ!?


 なんであずき姉が協力すんの!?


 あんたはこっち側の人間でしょ!?



《wwww》

《華麗に裏切るあずき姐》

《こやつ、やはり黒幕だったかww》


「こ、これはちょっとマズいのでは……」



 ど、どうしよう!?


 あずき姉だったら、魔王軍のみんなが知らないまおの私生活まで熟知してるし……!


 こ、こうなったら配信を強制終了させるしかない!?


 ──と思って、慌ててポケットからスマホを取り出そうとしたんだけど、その前にチンチン丸さんが質問をはじめてしまった。



「では、最初の質問です。イブリズ様はとても綺麗好きなお方でしたが、まおさんはいかがでしょう?」

「き、綺麗好きだって!?」



 愕然とするまお。



「う、うわあああっ! まおと一緒だぁあああああ!!」



 最初からドンピシャ当たってるじゃん!!!


 これは……魔王確定!?



《え〜と・・・》

《この前、あずき姉とのコラボで部屋配信してたけど、汚部屋だったような》

《だね》

《あずき:久しぶりに実家に帰ってきたけど想像以上にヤバかった。脱ぎ捨てて丸まってるパンツが5個くらい放置してあったし》

《赤裸々www》



「ちょま、あずき姉!? それバラすのやめて欲しいんだけどっ!?」



 あれはウッカリ洗濯機に入れ忘れてただけだし!


 カバンの中とか、意外と綺麗なんだよ!?



「ま、魔王様のお部屋が、汚部屋だと……?」



 まるで頭を殴られたかのようにフラつくチンチン丸さん。


 なんとか踏ん張り、キッとこちらを睨んでくる。



「に、にわかには信じがたい話ですが、ひとつくらい差異があったとしても誤差……続けます!!」

「か、かかってこい!」 

「魔王様は人一倍、健康に気をつかっていました。早寝早起き……必ず8時間以上の良質な睡眠を取られていましたが、まおさんはいかがでしょうか?」


《夏休みは徹夜でゲームしてるとか言ってたよね》

《基本、遅寝遅起きだよね》

《朝、親に起こされてブチギレることがあるとかなんとか》

《あずき:昨日も深夜にスマホで純愛恋愛漫画「僕はキミに二度目の恋をする」略して「僕キミ」を読みながら、ひとりでニヤニヤしてたよ》

《wwwww》



「な、なにっ!? 恋愛漫画でニヤニヤ!?」

「読んでた漫画のジャンルは関係ないよね!?」



 寝る前にダンTV配信観るのと、僕キミを読むのが最近のまおのお決まりなんです!!


 甘酸っぱい恋愛とか、憧れるじゃん!



《しかし、2問連続でバツだな》

《不穏な空気》

《チンチン丸さん・・・》

《まおたんにとっては朗報なのでは》

《え? もしかして魔王様ってマジ魔王様じゃないの?》


 

 ざわつくコメント欄。


 みんなは魔王認定して欲しいみたいだけど、そうはいかないもんね。



「ま、まさか2回連続で合致しないなんて……そ、そ、そんなはずでは……」



 今にもブッ倒れそうな雰囲気のチンチン丸さん。


 がんばれっ!



「つ、次の質問です! 魔王様は1日3回お風呂に入るほどのお風呂好きだった!」


《あずき:お風呂なんて3日に1回入ればいいが口癖だな》


「……」



 バツ、と。

 


「魔王様は完璧主義者で、非のつけようがないお方……」


《あずき:むしろ非のつけどころしかない。おまけに自分はしっかりしてると思ってるからたちが悪い》


「……」



 えっと、次もバツだね。


 けど何だろう。


 ちょっと胸が痛い。



《wwww》

《あずき姉容赦ないなwww》

《魔王様、白目剥いてて草》

《一番の被害者は魔王様なのでは?》


「げ、解せぬ……」



 これって確か、まおが魔王かどうかを審議する質問会だったよね? 


 いつの間に、まおの恥部大発表会に?



「ま、魔王様は可愛いものが好き」

「……あっ!」



 ビシッと手を挙げるまお。



「はいはい! ピンポンピンポン! それは合ってる! だってまおも可愛いもの、超好きだもん!」



 魔法少女マニキュア好きだし、あと……モンスちゃんとか!


 キタコレ!



「どうよ!? やっと合致しているところがあったんじゃない!? えっへっへ」


《なんで合致してて喜んでんだwww》

《外れてたほうが良いのでは?》

《魔王じゃないってのを証明するんじゃなかったんか》

《す〜ぐ目的忘れる》

《かわいい》

《草》


「……あっ」



 しまった。


 つい喜んじゃた。


 い、いまのナシで!



「次の質問……魔王様はすぐキレる」


《あ、それは◯だな》

《すぐ超理不尽パンチぶっ放すしな》

《見境なく周囲をぶっ壊すね》



「間違いない! 魔王イブリズ様だ!」

「早く次の質問っ!!」



《ちょっとキレてるww》

《ほらな?》

《実際に証明する魔王様かわいい》

《さすまおだわ》


「最後の質問です。これはあまり口にしたくないのですが、魔王様の突出した個性なので出題させていただきます」

「……お、おお?」



 な、何だろう。


 世界一大人っぽいとか、宇宙一可愛いとか?


 ヤバい。


 まお、魔王認定されちゃう……!?



「魔王様は……アホの子」



 しん、と静まり返ったダンジョンに、チンチン丸さんの声が響く。


 沈黙。


 静寂。



《◎》

《◎》

《◎》

《◎◎》

《あずき:◎◎◎◎◎◎◎◎》



 コメントが滝のように流れてて。


 ……うん、待って?

 

 誇張抜きに、満場一致で二重丸なんですけど。



「やはりあなたは魔王様だ!!」

「ちょおおおおっと待って!? アホの子って何!?」



 え? ウソ? 


 もしかして、まおのこと言ってんの!?


 なんでよ!? まおのどこがアホなの!?


 どっからどうみても、知性の塊でしょ! 

 

 知性が歩いていると言っても過言ではない!


 我、ダンTV登録者数220万人の、ダンジョンストリーマーぞ!?



「……質問は以上です」



 スッと目を閉じるチンチン丸さん。


 どうやら、大質問会は終わったらしい。


 結果はほとんどがバツだったよね?


 あ、でも、後半は当てはまっている質問も結構あったような……。



「け、結果はどうなの? 樹洞さん?」

「……ええと、グレーです」


《グレーwwww》

《wwww》

《なにその微妙な結果www》

《無駄な時間の極みで草》

《あずき:しかし、楽しませていただきました》

《それな》

《楽しかったからいいよな》

《うん》

《笑わせてもらったから満足》



 満足したなら良かった♪


 ……じゃなくて!!


 何なのこの状況!?


 チンチン丸さんも、気まずそうに笑ってるし!


 グレーって、まおは魔王じゃないような魔王のような、良くわからん存在ってことだよね!? 


 ナニソレ! ほんっと無駄な時間!!


 意味のない質問ばっかりして、まおの恥ずかしいところばっかりバラされて──。



「……あ」



 ふと、そのことに気づくまお。


 ちょっと待って?


 結局これって……まおの恥ずかしい私生活を全世界にさらしただけ?


 まお、泣いてもいいのかな?


 いいよね?

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