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第四十二話 魔王様、絡まれる

 まおたちがやってきたのは、ダンジョンの最下層。


 えへへ、最下層まで来ちゃいました。


 中層、下層はささっとクリアしちゃったんだよね〜。


 だって、メリッサさんが「かわいいまおたんの実力を見たい!」っていうしさ。


 金髪碧眼の美少女から「かわいいまおたんお願い(ハート)」なんて言われたら、フルスロットルで飛ばしちゃうよね?



「はい! というわけで、やってきました最下層! ゴミはどこかな!?」


《ゴミ(意味深)》

《相変わらずのスキップ能力だなww》

《まるで3分クッキングで草なんだが》

《できあがったものがこちらになります(最下層)》

《ほぼ魔王様のノックバックでフライアウトさせてたからなww》

《途中から刈谷さんも笑ってたな》

《そら笑うしかないわww》

《こりゃ余裕で最速クリアだな》

《他の4人、体力温存してるしねwww》

《いやぁ、さすまおだわ》



 ここに来るまでゴミ掃除も順調に進んでて、ダンジョンの空気も心なしか清々しくなってる気がする。


 これならスタンピードも沈静化しそうだよね?


 というわけで。


 最下層の最終エリア「エリア10」に到着したんだけど──。



「……何だかすごい光景だね」 



 ぽつりとこぼしたのは四野見さん。


 ここは白金10号ダンジョンのボスがいるエリアなんだけど、山頂みたいな雰囲気があって、周囲を溶岩に囲まれただだっぴろい空間だった。


 今更だけど、階段を降りてるのに周囲の景色は山頂に近づいてたし、西麻布14号と同じ「逆型」ダンジョンだったんだね。



「ん〜……でも、ボスモンスちゃんは見当たりませんなぁ?」



 周囲をぐるっと見渡して確認したけど、モンスちゃんらしき影はない。


 それに、他のクリーナーズメンバーさんたちの姿も。


 あれ? もしかしてもう倒されちゃった?


 な〜んて思ってたら──。



「ぐおおおおん……」



 突然、地鳴りのような雄叫びが響いた。


 溶岩の中からザパッと現れたのは、岩のような甲羅を持った巨大な亀さんモンスちゃん。


 ──あ、ウルツァイタイマイちゃんだ!



「なるほど、ここのボスはウルツァイタイマイか」

「うげっ、面倒な子がきたわね……」



 険しい顔をする刈谷さんとメリッサさん。


 だけど、配信コメント欄の魔王軍の皆さんは大盛りあがり。



《顎亀きたあああああっ!》

《ウルツァイ大枚ちゃんやwww》

《???》

《なんぞそれ?》

《説明しよう! ウルツァイタイマイは、顎がしゃくれていることから「顎亀」「顎兄」と呼ばれている巨大な亀型B級モンスターだ。その巨体から当初は討伐不能のSS級モンスターだったが、安価で生成できる「ダイニーマ・ロープ」を足に絡めて転ばせることで簡単に討伐できたため一気にB級までランクダウンし、「ウルツァイ銀行」「ウルツァイ大枚」と揶揄されるようになった》

《なるほど》

《詳しい説明助かるw》

《いや、ウルツァイタイマイさん悲しすぎんか?wwww》

《ウルツァイタイマイたん・・・(´;ω;`)》



 そう。


 ウルツァイタイマイちゃんって、悲しい歴史を持つ防御特化のモンスちゃんなんだよね。


 あのでっかい甲羅に頭と手足を引っ込める【絶対防御態勢】中は全ての攻撃をシャットアウトしちゃう。


 それを無効化するために、ダイニーマ・ロープってアイテムを使ってひっくり返すのがセオリーみたいなんだけど……。



「誰か生産スキルを持っているヤツはいるか?」



 刈谷さんが尋ねる。


 四野見さんとトモ様が首を横に降った。



「残念ながら持ってないね」

「私もだ。メリッサはどうなんだ?」

「私も持ってないわ。まおたんはどう?」

「え? まおですか? 一応持ってるのでダイニーマ・ロープは生産できますけど、多分必要ないですよ。だって、モンスちゃんに頼んでひっくり返してもらえばいいので」

「「「「……あ〜」」」」



 キレイにハモるまお以外の4人。


 お、息ぴったり。



《wwwww》

《その手があったね》

《【速報】魔王様、顎亀倒すのにダイニーマ・ロープいらない》

《みごとな力技で草》



 というわけで、みろろんとやもりんを呼ぶ。


 やってきたふたりを見て、刈谷さんとメリッサさんが目を丸くした。



「じょ、冗談だろっ!? 魔王はモンスターも手懐けているのかっ!?」

「しかもミノタウロスとティアマットなんて……」

「はい! みろろんとやもりんです!」



 あ、そっか。


 刈谷さんたち、みろろんたちを見るの、はじめてだもんね。


 ここはしっかりふたりの可愛さをアピールしとかないと!



「えへへ、どうです? 可愛いでしょう?」

「……え? かわいい?」


 

 目を瞬かせるメリッサさん。



「ああ、おっしゃらないで! 大きな体につぶらな瞳のアンバランスさが最高だって言いたいんですよね? だけど見た目だけじゃないんです。この子たち……甘噛も得意なんですから!」

「甘噛」

「さぁ、どうぞみろろんたちの足音も聞いてみてください。ほら、良い音でしょう? 余裕の音だ。馬力が違いますよ」

「何を言っとるんだお前は」



 刈谷さんに冷静にツッコまれてしまった。


 どうやらみろろんたちの魅力は伝わらなかったみたいだ。


 悲しい。



「ぶもっ!」

「がおっ!」



 まおの精一杯のセールストークをよそに、猛スピードで突っ込んできたみろろんとやもりんが、ウルツァイタイマイちゃんとがっぷり四つを組む。


 そして、ふたりの怪力で巨大な亀ちゃんをひっくり返そうとしたんだけど──。



「うえっ!?」



 突然、ウルツァイタイマイちゃんの足元が大爆発した。



「な、何だ!?」

「爆発!?」


 四野見さんと刈谷さんも驚きの表情。



《ファッ!?》

《なにごと!?》

《タイマイちゃん、大爆発したんだがwww》

《魔王様、ドドンがドン使った?》


「ふぇっ!? ま、まお、何もやってないよ!?」

「ぶもぉ……」

「きゅうっ」

「みっ、みろろん!? やもりん!?」



 爆発に巻き込まれ、みろろんとやもりんがバタンと倒れた。


 でも、やられちゃったってわけじゃなくて、衝撃で一時的に行動不能状態スタンしちゃっただけみたい。


 とはいえ、安心はできないよね。


 ここは大事をとって、ふたりには一旦下がってもらって──。



「……待ってたよ、まおちゃん」



 背後から女性の声が聞こえた。


 ふりむくと、大きな岩の傍に黒尽くめの女の子が立っていた。 


 あれ? この人って──。



「ちひろちゃん?」

「……ちっ、面倒なやつに出くわしちまったな」



 真っ先に反応したのはメリッサさんと刈谷さん。


 ──喜屋武ちひろちゃん。


 ちずるんの幼馴染にして、セブンスレインに所属する女子高生スカベンジャー。


 その手にはリモコンみたいなものが。


 刈谷さんが渋い顔で尋ねる。



「電気起爆装置《IED》……まさか、あの爆発はお前の仕業なのか? 喜屋武?」

「そ。あの顎亀をTNTでふっとばそうと思ったんだけど、ちょっと失敗しちゃったな。もう少し火力盛ったほうがよかったね」

「TNT……」



 ……って、何?


 電話の会社?

 


「お前がこんなゲームにやる気を出すなんて珍しいな? 最速クリアで関東チームのリーダーを狙っているのか?」

「冗談言わないでよ、刈谷。あのデカブツが邪魔だっただけよ」



 喜屋武ちゃんが、まおを見る。



「あたし、絶対まおちゃんが一番最初に来るって思ってたんだよね。だからまおちゃんとの勝負の前に片付けておきたかったんだけど」

「……え? まおと勝負?」


 

 どういうこと?



「何そのキョトン顔。冗談でしょ? このゲームがはじまったとき、ちゃんと伝えたじゃない……」

「……あっ」



 思い出した。


 そう言えば「わからせダンジョンRTAアタックin白金10号!」が始まったときに、「どっちがちずるんにふさわしいかわからせる」とかなんとか言ってたっけ。


 ……え? あれ、今からやるの?


 この状況で?

 

 ウソでしょ?



「なるほど。魔王とサシの勝負をしたいってわけか」

「そ。あたしが求めてるのは、どっちかがリセットになるまで殺し合う『わからせ真剣勝負』……だから、邪魔しないでね刈谷?」

「うええええっ!?」



 ちょま……えええ!?


 リセットって、ガチな勝負なの!?



《いやいやいやwww》

《キレイな顔して、怖すぎんだろこの人!!( ゜д゜)》

《どっちかがリセットするまでバトルとか、マジで言ってんのかこいつw》

《見た目かわいいけど、言ってることは物騒すぎwww》

《あ、思い出した。こいつ、凶暴すぎて「セブンスの狂人」って呼ばれてるやつだwww》

《セブンスの狂人www》

《なにそれ((((;゜Д゜))))》



 こ、ここ、怖いっ!!!


 てか、ちずるんってば、こんな怖い人とどうやって仲良くしてるの!?



「……ふん。生憎だが、私のまおたんにそんなことはさせんぞ」



 まおを守るように一歩前に出てきたのは、トモ様だ。



「まおたんをリセットさせるというのなら、私を倒してからにしてもらおう!!」

「……ト、トモ様!!」



 これはトゥンク案件っ!!


 さらに、四野見さんも出てくる。



「し、四野見さん?」

「一応、僕も魔王様のパーティメンバーだからね。彼女に危害を加えるっていうのなら、多少は抵抗させてもらうよ」



 ええええっ!?


 ふたりともイケメンすぎないですか!?



「へぇ、面白いじゃない」



 そんなイケメンふたりを前に、喜屋武ちゃんは嬉々とした表情で、とんでもないことを口にした。



「それじゃあ、ここにいる6人で殺し合っちゃおっか?」

「……6人?」



 ん〜……ちょっと待って? 


 6人って、刈谷さんとメリッサさんも数に入れてない?


 え? 喜屋武ちゃんたちって、同じスカベンジャーチームに所属してる仲間じゃないの?



「お前、本気で言ってるのか?」

「もちろん大マジよ、刈谷。だって、セブンス内でのバトルってご法度ってわけじゃないでしょ? それに、()()()()()()()()だっていうあなたと前から殺し合いたいって思ってたし」

「……この狂人の破滅主義者め」

「ありがとう。けど、褒めても何も出ないわよ?」



 喜屋武ちゃんが冷たく笑う。



「ふふふ……まおちゃんとの勝負だけじゃなく、業界トップのスカベンジャーたちとのリセットをかけた真剣勝負バトルロイヤルなんて……ゾクゾクしてきたわ!」



 め、めちゃくちゃ怖い。


 というか、とんでもないことになってきたけど、どうしよう?


 この状況、完全にまおのキャパシティオーバーなんですけど……。


 困惑するまおをよそに、ウルツァイタイマイちゃんが「ぐおおおん」と大きな雄叫びをあげた。


 ……えっ、もしかしてウルツァイタイマイちゃんもバトルロイヤルに参加する感じ?


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