第十話 魔王様、ドラゴンちゃんと仲良くなる
天高く舞ったやもりんの体はボス部屋のドアに衝突。
壁の一部を破壊しながら、部屋の外に倒れる。
やった!
体の一部が外に出てるし、まおの勝ちだよね!?
「勝負ありだね、やもりん! 相撲勝負はまおの勝ちで……って、あれやもりん?」
よろよろと立ち上がるやもりん。
そして、部屋の奥へとすごすごと戻っていく。
「……ど、どうしたの? もしかして怪我しちゃった?」
「きゅっ!?」
やもりんはまおの顔をみるなり、慌てて走っていく。
そしてぷるぷると震えながら丸くなっちゃった。
尻尾をお腹の下にくるんってしてるし。
こ、これはちょっとやりすぎちゃった感あるな。
《あ~》
《フロアボスが完全に戦意喪失しとる》
《これはあれだ》
《トモ様の動画でみたやつww》
《うう、こんないじめられっ子みたいな姿になって・・・》
《トラウマ級》
《ティアマットたん・・・(´;ω;`)ブワッ》
「ご、ごめんね、やもりん?」
「くるるぅ……(泣)」
恐る恐る近づいていったけど、涙目で見られてしまった。
うう、心が痛い。
もっと力をセーブしてあげるべきだったかな。
「ごめんね。はい、痛いの痛いの飛んで行け~」
お詫びの印に目一杯ナデナデしてあげた。
トカゲってどこを撫でたら気持ちよくなるんだろ。
猫みたいに顎の下とか?
「ぐるるる……?」
最初は怯えていたやもりんだけど、次第に心を開いてくる。
おもむろに顔を向けてきたので、顎の下をナデナデ。
「ぐるるぅ♪」
「あはは、やっぱりここが気持ち良いのかな? うりうり」
「ぐるる……ゴロゴロ」
《【以心☆伝心】が発動しました》
ついにごろんと横になり、お腹を見せてくるやもりん。
やったぁ!
一時はどうなることかと思ったけど、やもりんと仲良くなれたぜ!
《マジか》
《すげぇw》
《ティアマットってこんなふうになるんだwww》
《これは間違いなくデカいトカゲだわ》
《くそ、ティアマットのやつ、魔王様にすりすりしてやがる》
《おい俺と代われ》
《うらやましい》
《すりすりさせろ》
《トモ:ころすぞティアマット》
《トモ様wwww》
「ト、トモ様!?」
せっかく友達になれたのに殺さないで!?
それからしばらく【以心☆伝心】のちからで友達になれたやもりんとじゃれ合ってから、一旦さよならすることにした。
だって、そろそろ家に帰らないと。
19時までに帰らないとお母さんに怒られちゃうんだよね。未成年の厳しい現実……。
うう、 また【この指と〜まれ♪】で呼ぶから、そのとき遊ぼうね、やもりん!
電車の時間を調べようと思ってスマホを取り出す。
画面のロックを解除しようとしたとき、変な告知が表示されているのに気づく。
【おめでとうございます! 同接10万アチーブメントを達成しました!】
これは多分、ダンTVの実績だと思う。
チャンネルを成長させるためにダンTVの運営が設定した目標みたいなものって言えばわかりやすいかな?
そっか~、同接10万のアチーブメント達成かぁ……。
「……ファァァァァッ!? ど、どどど、同接、じゅ、じゅじゅじゅ、じゅうまん!?」
これってあれだよね!?
同接10万ってことは、つまり同接が10万ってことだよね!?
一夜にして同接2から10万ってこと!?
というか、そもそも10万なんて数字、他の配信者さんでも見たことない。
多分、あずき姉もびっくりしてると思う。
あわわわわ……。
現実味がないっていうか、信じられないっていうか。
……いやでも、それよりもだな。
「ふ、ふふふ……」
同接10万人の実感がなかったからだと思うけど、まおは数字よりも別のことでニマニマしてしまった。
「念願のやもりんと仲良くなれて良かったなぁ……えへへ」
前にここにきたときは逃げられちゃったし、感慨ひとしおってやつだよね。
うふふ、ゴロゴロするやもりん、可愛かったなぁ。
《これには魔王様もニッコリ》
《同接10万おめでとう、魔王様!》
《トモ:10万はすごいな! おめでとう!》
《てか10万ってやべぇな》
《だけど同接10万<モンスター》
《それな》
《やっぱりまおたんは魔王だったw》
《やっぱりこれは魔王だなww》
「……で、でも、同接10万か」
改めて噛みしめる。
これ、すごい数字だよね?
だってトモ様でも、同接6万とかだし。
初回だからみんな来てくれたんだろうけど、こんなにたくさんの人たちに見てもらえるなんて嬉しいなぁ。
何にも反応が返ってこなかった同接2だったときと比べると、天国みたいな世界だ。
やっぱり反応してもらえるって良い。
本当にありがたい。
ナンマンダブ、ナンマンダブ……。
「よし! というわけで、まおのダンジョン散歩……今日はここまでです!」
天井からカメラを向けているドローンちゃんにむけてニッコリ。
「また配信見てくださいね! チャンネル登録と、ツリッターのフォローもよろしくお願いしますっ!」
あずき姉から教えてもらった決まり文句を読み上げて終了。
これをやるかどうかでフォロワーが一桁変わってくるとかなんとか言ってたもんね。
本当か疑わしいけど、リスナーさんたちの反応は上々だった。
《魔王様、おつかれさま!》
《おつおつ! いっぱい笑わせてもらいましたw》
《次の推しモン探しも楽しみにしています!》
《トモ:おつかれさま! ティアマットにソロで挑んだときはどうなるのかとハラハラしたが、楽しかった!》
《おつまお!》
《おつまお~》
《また見に来ます魔王様!》
《あずき:魔王様バンザイ!》
《魔王様~》
《魔王様!》
《魔王様、一生付いていきます!》
《ビバ魔王!》
「…………」
ん~……ちょっと待って?
なにこの魔王様コール?
気のせいかもだけど、魔王の汚名、さらに広がってない?
もしかして、同接増えた分「魔王まお」の名前が広がっちゃったとか?
「……げ、解せぬ」
最下層への散歩配信で人畜無害さをアピールして、まおは魔王じゃないってことを知らしめるはずだったのに……。
ていうかさ、今更ながらよくよく考えると、バチコリとモンスちゃん愛でちゃうのってアウトじゃない!?
いや、絶対アウトだよね!?
そんなん、汚名広がって当然だよね!?
ああ、もう! まおのばか! おばか!
というか、リスナーのみんなも止めてよ!!
コメントで「まおさん、趣旨がずれてるよ」とか「愛でちゃってるよ」とか注意しなきゃ!
これは連帯責任だよ!?
***
有栖川まおのバズ後初配信はある意味大成功で終わり、ネットやツリッターではふたつのニュースが大きく取り上げられた。
前人未到の同接10万を記録した化け物配信者が登場したこと。
そして──現代に転生してきた魔王が、凶悪なモンスターを手懐け魔王軍を結成し、高レベルダンジョンを踏破したこと。
特にS級モンスターのオルトロスとミノタウロスを従え、ティアマットに戦いを挑む切り抜きはわずか1時間で1000万再生を記録し、さらにティアマットをぶん投げた切り抜きは5000万再生を達成した。
リスナーだけではなく多くのスカベンジャーの心を奪ったまおは、一夜にして無名ダンジョンストリーマーから時の人──いや時の魔王となってしまったのだった。
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