第9話
特に何も言うことないわ。ユニコーンで5万溶かしたくらい?
体育祭。俺はあまり好きじゃない。なぜならこの体育祭というイベントは運動が苦手な者にとって公開処刑の場となるからだ。運動部の人間や運動が得意な者には夢のように楽しい青春の一ページとなるだろうがわざわざ運動が苦手な人間にそれを強要してこないで欲しい。あと実行委員で仲良くなっていい雰囲気になってるのもやめてほしい。羨ましいとかそんなんじゃないからな!!
体育祭を再来週に控えた放課後の部室。依頼人が来るまでは好きなことをしていいと言われたので好きなことをしている。狭山さんは本を読み、優香は友達とLOINでもしているのだろうか。未央はというと俺とソシャゲをしている。なぜだろう。あの一件依頼めちゃくちゃ距離が近くなった気がする。
あの後例の後輩が謝りに来たが未央は怒ることをせずイベントの話をし出した。それどころかROINも交換してさらに仲良くなったらしい。確かに今までとは違う人と関わり出してから彼女は生き生きし出した気がする。
すると部室のドアが開く。
「失礼します」
と中に入って来たのは3年の蓮田小春先輩だ。なぜ彼女の名前を知っているかというと彼女もまた有名人だからだ。彼女は陸上部のエースでジュニアオリンピックにも出たことのあるすごい人だ。そして男子生徒の間では困った顔をしながら赤ちゃんプレイしてほしいランキング1位とかいう巫山戯たランキングにも乗ってる先輩だ。
俺たちと反対側に座ってもらうと
「要件は何でしょう」
そう未央が切り出す
「八潮先生に困っていることがあればここに行くといいと言われまして・・・」
なるほど。うちの担任の差金か。依頼者が全然来ないことを見越してここに来させたのか。もう少し暇な時間を謳歌したかった。
「今、体育祭実行委員で5kmマラソンの打ち合わせをしていたんですが、昨日学校にうるさいから取りやめろという電話が入ったんです。それでどうしようか悩んでいた所に先生が・・・」
「それはもう無理なんじゃないですか。ご近所からの苦情が入ったなら学校としても中止の判断をせざるを得ないと思いますよ」
「でも今年はこの学校の創立100年の節目なんです。それでど何としてでもやろうということで委員会としてはまとまったんですがどうすればいいかがわからなくて」
まぁだが俺たちは万部。問題を放置する部ではなく解決するのが仕事だ。少しは考えてみよう。
「それで今週の金曜日に説明会をすることになったんですが我々には何の手札もなくて・・・」
「確かに相手はうるさいからやめろの一点張りで押し通せますね。蓮は何かないの?」
あるわけないだろ。だが使える手札がない以上は増やすしかないだろう。
「ひとまず俺たちもその説明会に出席して話し合いを見届けよう。今俺たちにできることはそれしかないんで」
そう言うと先輩は「ありがとうございます」と礼を言い部室を出て行った。
「で、説明会に出るのはいいけどそれじゃ解決にはならないわよね。私たちは先生でもまして実行委員でもないんだもの」
「その通りだが口ぐらいは出せるだろ。この学校の生徒だし」
「だから実行委員でもない私たちが何を言ったと声おで相手にもされないわよ」
「わかってる。だからこれから切り札を探すんだよ」
そう。たとえば相手がポーカーで2のワンペアを持っていた場合それを覆すにはジョーカーを2枚出さなければいけない。俺たちは今からそのジョーカーを探しに行くのだ。
「あら。意外とまともな考えしてるじゃない。見直したわ」
こいつ馬鹿にしてんのか?
金曜日になった。
教室には体育祭実行委員の役持ち何人かと俺達万部と八潮先生と他に3人ほど先生が居た、反対側には町内会の役持ち2人と不機嫌な顔をした60代くらいだろうか。おっさんが座っていた。少し先生多くないか?
八潮先生が
「それでは始めさせていただきます」
と開始の火蓋を切る
まず実行委員の5kmマラソンについての説明が始まった。
最初に校門を出て駅まで住宅街を走り、帰りは土手を走って最終的にグラウンドのゴールに辿り着けばゴールだ。
おっさん曰くこのコースの真横に住んでいるらしく、ならコースを変えればいいのではないかと思ったがどうやら他にも苦情を言っている人がいるらしくこの人は代表して来たらしい。
いちいち実行委員の説明に口を挟みウダウダ言ってくるのに耐えられないのか優香がずっとうずうずしている。何とか狭山さんが優香を抑え、話を聞く。
こっちがどれだけ妥協案を出してもおっさんは中止しろの一点張り。
なかなか引かない実行委員の態度に苛ついたのかとうとう俺たち生徒をディスり始めた。
「なぜ年長者の言うことが聞けんのだ。最近のガキは教育がなっとらんな。特にそっちの何も喋らんかかしの4人!なんか言ってみたらどうかね?」
なんかこっちに飛び火してきたし。いいのか?本当に、俺たちはお前を黙らせるカードを持ってるんだぞ。
すると
「失礼ですが今のお住まいに住めれてどれくらいになられますでしょうか?」
未央が口を開いた。
「大体4年くらいだ」
すると未央は俺たちだけ見えるように不敵な笑みを浮かべ
「そうですね。ご意見ごもっともだと思います。私共としましては今年は創立100年の節目でしてどうしてもやりたいと言う意見が大半を占めております。それにこのあたりには小学校、中学校、高校がそれなりの数あり、住む前に説明があったはずですがそちらの方はいかがなさいましたか?」
まず一つ目の切り札『学校あるって説明聞いてなかったの?』だ。この辺りの学校は全てここ2、3年で建ったわけではなくほとんどが50年以上続いてる学校である。ならば当然不動産会社から説明はあったはずだ。まして4、5年なんてここら辺だと新しい飲食店が2つ増えたくらいだろうか。
これならば言い逃れできまい。
「ふん。そんな説明聞いてない。きっと不動産の奴が説明し忘れたんだろ」
きったねぇジジイだな。不動産会社のせいにしやがった。
こうなってくると言った言ってないの不毛な争いになってしまう。どうしたものか。仕方ないからもう一つの手札を切ろう。
俺が口を開く。
今回からまた新しく始まりましたね。蓮の切り札とは何か気になる方は次をお楽しみに!