第36話
「ねえ蓮ちゃん寒くないの?」
12月の夜だ。寒いに決まってる。
「寒いよそりゃ」
「じゃあこうして・・・ほらあったかい!」
何をするのか身構えていたが優香はふつうに手を握ってきただけだった。
普段の俺ならここで驚いていろいろ勘ぐってしまうが今はただ優香の手の暖かさが心地いい。
「ねえ蓮ちゃん。私に言うことないの?」
そんなことあっただろうか。さっきありがとうを言ったばかりだし他に言うことは・・・?
「迷惑かけてごめんなさい?」
「違うって。それはいいってさっき言ったじゃん。もっと他のほら恥ずかしがらずに言ってみて?」
なんだ言うことって。
「わからん。教えてくれ」
すると優香は俺の上に覆いかぶさってきた。
「もう!分からずや!あるでしょこう・・・もういい!私の事好き?」
「好き」
「即答じゃん!じゃあもう今から恋人ね!」
なんだそういうことか。
まじか。このタイミングかつ流れでいくのか。
「こういうのってもっとロマンチックな感じじゃないの?」
「クリスマスで星空で完璧でしょ!」
「いやここ河川敷で都会だから星もほとんど見えないしなんなら暗いからよく見えてないんだけど」
「じゃあキスしていい!?いいよね!?するよ!?するからね!?」
こいつ変な空気に当てられておかしなテンションになってないか。てかキスはダメだ!俺がリードする!
と優香ごと体を転がし体制を逆転させるも痛みで手に力が入らずそのまま優香に倒れてしまった。
「もう。無理しなくていいのに。ほら仰向けになって」
体を転がすと間髪入れずに唇を合わせてきた。
ああ。優香の唇ってこんな感じなんだな。暖かくてやわらかくて。なんかもう幸せだ。
どうして今までこの想いに気づかなかったのだろう。
長いキスの後再び話始めた。
「私蓮ちゃんと会った日から蓮ちゃんの事好きだったんだよ。気づかなかったでしょ」
「とっくに気づいてたよ。俺の方はいつ気づいた?」
「もうずっと前から。でも蓮ちゃん最近未央ちゃんと花奏ちゃん気になってたでしょ」
バレてたか。
だが俺は優香への想いを貫き通した。こればかりは誇りたい。あれだけ美人ぞろいの部活の中で一途であり続けたのだ。本来誇る事ではないのだろうが普段女子と接点のない弱者男性だったせいでこんなことでも誇りたくなってしまう。
「でもあの二人なら浮気してもいいよ。なんなら高校卒業したらアフリカ行って4人で結婚しようよ!」
「バカか」
一夫多妻が認められてる国がアフリカに多いからって行くわけないだろ。俺は日本が好きなんだ。それどころかこの川口と言う町が好きなんだ。一人暮らしするときもこの町から出るつもりはない。
「いいこと聞いたわね」
噂をすれば何とやら。未央と花奏が来た。
「私まだあなたの事諦めなくていいってことでしょ。いつ襲われるか覚悟してなさい」
「私も蓮さんに振り向いてもらえるように頑張ります!」
なんてタイミングだよ。
だがこんなにも好意を寄せられたのは初めてだ。悪い気分じゃない。モテ期ってやつか?
なにはともあれこうして以前からあった諸々は解消した。
3月。
終業式後。
俺達はいつものように未央家で食卓を囲んでいた。
俺、優香、未央、花奏。そして悠人。
実はあの後3学期に入ってから悠人は転部し万部へ入ってきた。
サッカー部の顧問にも推薦が危うくなってしまうからやめとけと言われたにも関わらずすべての反対を振り切り万部へ転部してきた。だが3学期は一件も相談は無かったが。
今は優香の家から持ってきたホットプレートで焼肉をしている。
相変わらず未央は戦力外通告され菜箸すら持たせてもらえていない。
意外だったのは悠人が焼くのがうまいことだ。
鶏肉もしっかりと中に火が通ったタイミングで上げてくれるので焼肉で食べる鶏とは思えないほどうまい。
俺も焼肉には自信があったが悠人の焼き加減を見てすっかり自信を無くして米を食べている。
肉米米肉米米野菜米米肉米米野菜米。
肉を噛みしめるようにこの一年万部で得た関係を噛みしめる。
噛めば噛むほどいろいろな思い出がよみがえる。
修学旅行、文化祭、クリスマス。
恐らくこの一年は今までの人生の中で一番濃い一年だっただろう。
そしてこれからの人生一度も忘れることはないだろう。
人の細胞と言うのは約90日で入れ替わるらしい。
だが得た経験、記憶、思い出と言うのは一生忘れることなく体が覚えている。
つまりこの先どれだけ人間関係や環境が変わろうと得たものは一生だ。
俺はこの先の人生つまずくことがあればこの一年を思い出す。
それがきっと解決に導くと信じているから。
俺の万部だから。
いままで幼馴染がラブコメのバランスブレイカーすぎて辛いをありがとうございました。彼らの一年いかがでしたでしょうか。自分自身今までいろいろな人と様々な関係を築いてきました。その中でも悪いことをする人や何年たっても友達でいてくれる人。様々な人がいます。自分はつまずいたとき必ずその状態に似た人を思い出します。すると必ず道は開け解決へとつながります。俺がこの作品を通して伝えたいことは人間関係というものはどんな関係であっても必ず自分を成長させてくれるということです。皆さんももしつまずくことがあったら今まで会った人を思い出してみてください。あのときこんな手を取っていたらと言うのが見えてくるはずです。
それでは本当にありがとうございました。
PS.うんこ




