第35話
おひさ
12月25日。イエス・キリストが生まれた日。カップルが一緒に過ごしたがる日。サンタさんがプレゼントを届けに来る日。そして今年のクリスマスは俺達の決戦の日。決戦とはやはり大きすぎる表現かもしれない。だが今後の人間関係が大きく変わるかもしれないのだ。だから決戦という表現は妥当か。
現在12月25日17時。
河川敷に悠人を呼び出し待っていると優香ときれいな恰好で登場した。
きれいな恰好と言うのは恐らく一般人からすると外に出かける際のちょっとしたおしゃれなのだろうがオタクからしてみればそんなちょっとしたおしゃれでも輝いて見えてしまうのだ。それもイケメンのとなれば直視すらできなくなってしまう。
「久しぶりだな悠人」
「久しぶり蓮君。冬休みは満喫してる?」
皮肉とはまたずいぶんなご挨拶じゃねえか。
「お陰様で楽しくやってるよ。それで要件は分かってるよな」
そう。今日は楽しく皮肉り合おうというわけではない。今日で俺達の中にあるわだかまりを払ってしまおうというのがこれの目的だ。あと優香を返してもらう。
「僕が言いたいこと分かったみたいだね」
「ああ。まず俺はお前に謝りたい」
「本当にごめん。俺は自分がなぜ助かったのか理解しようとしなかった。ただその時の状況に満足してしまってた。そのせいでお前がつらい目に合うとも知らずに。だから本当に本当にごめん」
言葉一つ一つを絞り出すように頭を下げて謝った。
すると悠人は俺の頬を思いっきり殴った。
「僕の方こそごめん。本当は君に謝らせたいわけじゃないのに謝らせてしまって。これは僕の伝え方の問題から本当ならこんな回りくどい方法を取らずに済んだんだけどでも僕と君にはこれが必要だったんだ。言いたいことは分かるね」
分かってる。本当ならこの期間は必要なくたった一言声をかければ済んだ話。
「こんど遊びに行かない?」
「ああもちろん!」
そう。俺たちは最初からこの言葉が言えていればこの半年こんなにも面倒くさいことをせずに済んだのだ。二人とも最初から以前のように仲良く遊びたかったはずなのにお互いそのことが自分の中で理解できずお互いをお互いが妬んでいたのだ。
「これで僕らは仲直りできたね。どうして僕らはこんなにも不器用なんだろうね」
「さぁな。でもその不器用さのおかげで今こうして話せてるんだ。俺は不器用さに感謝してるよ」
「確かに。それとさ蓮君。僕を殴ってくれないか」
こいつ何言ってんだ?不器用な上に頭おかしくなったのか?
「ほら、僕が一方的に殴ったままだとなんか不公平じゃん。僕ら今からまた親友に戻ったんだしさ」
「なら一発」
頬をぶん殴ってやった。俺と同じ左頬だ。
「やっぱり君はもっと食べた方がいいよ」
こいつ喧嘩売ってんのか。確かに運動不足のせいで高校生男子にしては弱いだろうがそこまで言うならもう一発くれてやろうじゃないか。
「待って待って。どうせならこの際お互いの嫌なところだったりいいところ言って殴ろうじゃないか」
「それいいな。じゃあ俺から。このイケメンクソ野郎が!モテない側の気持ち考えたことあんのかよ!」
一発
「かわいい子に囲まれて生活送ってるのにそれに気づかないポンコツ鈍感主人公が!」
もう一発
そのあともお互い力が尽きるまで殴り合い二人して地面に倒れ込んだ。途中から普通に無言で殴り合っていたが。
冬の空を見ながら息を整える。
「やっぱ都会だと全然星見えないな」
「それなら来年の夏どっか旅行行かない?キャンプとか楽しそうだと思わない?」
「却下。グランピングならあり」
「えー!テント立てるのも一つの醍醐味だよー!」
確かに苦労してテントを持っていくのもありかもしれないがやはり面倒なものは面倒だ。
それにしてもこいつとこんなに話したのはいつぶりだろうか。
「てか来年俺ら受験生じゃねぇか」
「僕は推薦もらってるから楽勝」
クソが。こいつもう一発いってやろうか。とも思ったがもはやそんな力はすでになく、この気分のいい時間を過ごしていたいという思いが強かった。
「じゃあ僕はもう帰るね。それと越谷さんがそろそろ来るはずだよ」
きっと悠人が来る前に連絡しておいたのだろう。今回で解決する自信があったのだろう。さすが俺の親友だ。
仰向けのまま土手に目を向けると土手の階段で優香と悠人が何か少し話してそのまますれ違っていた。
優香は俺のもとまで来ると
「久しぶり蓮ちゃん」
「ああ久ぶり優香。会いたかったよ」
もうここ何か月かいろいろありすぎていつぶりかなんて覚えてないが久しぶりに会った優香はやはり優香だった。
優香は俺同様に服が土で汚れるのも気にせず地面に仰向けになった。
「星全然見えないね」
「都会だからな」
「仲直りしたんだってね。おめでとう」
「ああ。お前のおかげだよ」
優香が俺達二人の事を考え俺から離れてくれたおかげで今回の事はうまくいった。MVPは優香にあげてもいいレベルだ。
「なぁ優香。俺今回の事でお前に迷惑かけたから謝りたいんだ」
「そんなのいいよ。蓮ちゃんの役に立ててうれしいんだから。それに蓮ちゃんはこの先きっと私に事件が降りかかっても助けてくれるでしょ。それでトントンだよ」
それ俺につり合いが取れてないだろ。
でもきっとそうだ。俺は優香のことであればきっと後先考えず必ず助けに行く。
それは今までもこれからも変わらない。
「それでも言いたいんだ。ありがとう。お前のおかげで解決した。本当にありがとう」
「もうそんなのいいって言ってるのに。まあどういたしまして」
こうして俺と悠人の仲直りはできた。
寒空の下転がっているのに心はなぜか温かい気がした。
やっと終わったよ悠人仲直り編。




