第18話
対戦お願いしま
新大阪駅に着くと時刻は11時を過ぎていた。集合時刻までは2時間ほどあり新大阪駅からは40分ほどなので約1時間の猶予があるため朝ごはん兼昼ごはんを食べられる。そう。俺達が早めに出発したのはこのためだ。
駅の中の串カツ屋に入り、あの有名な二度漬け禁止の串カツを堪能し集合場所である大阪城公園に向かう。
集合場所に着くとすでにかなりの人数が到着していた。
その後時間になり大阪城の見学が始まる。
豊臣秀吉やっべー、いやすごいのは豊臣秀吉じゃなくて大工さんか。みたいなひねくれた感想を垂れ流しながら一通り回る。優香は終始何がすごいのかわかっていなさそうな雰囲気だったが正直俺もそう思う。景観はすごいけどね。
16時ごろまで見学後解散して各々の宿に向かうのだが俺は八潮先生に呼び止められた。
「おい川口」
「なんですか。万部はちゃんと機能してますよ」
「見ればわかる。ところで今回の修学旅行で依頼を受けたそうだな」
「ええ、まあ。少し厄介な依頼で・・・」
「私にも検討はつく。大変そうだな。だが残念なお知らせがある。この依頼を失敗した場合万部は廃部だ」
「そんな、悪魔ですか?」
「お前の言いたいことも分かる。折角部として機能し始めて部員達の中も良くなってきたところだとは思うが校長や教頭が私への腹いせに依頼を失敗したら廃部にした上に勝手に万部を作った私の減給をすると言い出してな。私の威厳のためにも頑張ってくれたまえ。それとお前達万部のために」
この人腐っても教師だよな?
生徒を脅す教師なんて今日日ラブコメでも見ないぞ?見るとしたら同人誌だけだぞ?
だが逆らう勇気なんか出ず小さく
「ガンバリマス」
と言うと先生は満足したのか他の先生の元へ向かった。
俺も3人の元へ戻ると、怒られたのか心配されたり爆笑されたりしたがそんな非行少年ではない。
不安を胸に募らせつつ大阪城を離れ京都の予約してある宿に向かう。
ここからだと約3時間で着いたのは19時頃だった。
花奏に案内されるままついて来たが目を疑った。
行きの新幹線で読んだガイドに載っていた高級旅館そのものだった。
「ねぇ花奏?どっか道間違えたりしてない?」
「間違えてないですよ。とりあえずチェックインしますよ」
そう言って中に入る。
受付で花奏がチェックインを済ませて帰ってくるとそのまま部屋に案内された。
部屋に入るとそこはもはやマンションの一室だ。それも港区のタワマンだ。
「お父さんとお母さんが皆さんに何かお礼をしたいと言ってて『最高の修学旅行のためならいくらでも出そう!』とお父さんがここを取ってくれたんです。お父さんがすでに全額支払ってくれてるので楽しみ尽くしましょ!」
固まる俺達3人にそう説明する。豊臣秀吉もやっべーが花奏のお父さんもやっべーな。
やっと動けるようになり荷物を置いて部屋を回ってみた。
ベッドルームは2つありそれぞれシングルベッドが2つずつ置いてあり、広いリビングのような空間や備え付けの温泉などもあった。俺は川口の方向を向き深く一礼した。
花奏のお父さんありがとう。
その後荷物をほどき部屋で夕食を取る。6月ということで色々な旬を逃しているがそれでも一級品というのが分かるほどにどれも美味しかった。明日以降の夕食は外で食べたいものもあるだろうという花奏のお父さんの配慮で予約されていなかった。
夜ご飯の後は温泉タイムだが前の未央家での過ちは起こさない。
彼女らが温泉に入っている間俺と優香のベッドルームに籠り家から持ってきたゲームで時間を潰した。
が、2度あることは3度ある。
浴衣を忘れたのか未央が間違えて俺がいる部屋に入って来てしまった。タオル一枚だけ巻いて。
それはもう華麗な回し蹴りだった。脳が揺れる感覚ってこんな感じなんだね。
3人とバトンタッチして俺も温泉に入る。久々の温泉はなかなか良かった。
その後リビングで依頼について話し合った。
「結局今になっても連絡来なかったね」
「ええ。彼女達は成功させる気あるのかしら」
「そのことだが俺たちから選択肢を提示してみないか?」
依頼者から連絡がないのであればこちらから強制的に決める必要が出てくる。それとさっき先生から言われたことは黙っておいた。彼女達に無駄な心配はさせたくないし焦らせたくもない。
「場所だけでも絞り込んで決めないと全部手遅れになるからな」
「そうね。できればやりたくなかったけれどもね」
LOINで彼女達に選択肢を提示する
『流石にそろそろ決めないとまずい。
嵐山か清水寺どっちがいい?』
5分ほどして
『嵐山でお願いします』
という返信が来た。
ひとまず大まかな場所が決まったのはいいのだが問題は彼女達がどんなアクションを起こしてくれるかという点だ。
だが今いくら考えても仕方がない。少しでも話が進んだことを喜ぶべきだろう。
朝も早かったので皆眠いのだろう。あちこちからあくびの声が聞こえる。明日から本格的に観光が始まるため今日は寝ることにした。
そして俺は新幹線の中で決まった罰ゲームの執行で優香と同じベッドで横になっている。
新幹線で少し寝たせいかあまり眠くないのだ。優香はベッドに入るなり3分ほどで寝てしまった。
普段なら眠くなるまでゲームをするのだが今ベッドを出ると優香が起きてしまうかもしれないので身動きが取れない。さらに優香を起こしてしまう要因として俺たちは手を繋いで横になっている。さらに優香が俺の胸に顔を埋めて寝ているため本当に身動きが取れないのだ。
優香が寝言で「蓮ちゃんだめぇ、そこは弱いのぉ」とかほざいていたので引っ叩いてやりたくなった。
だが寝顔が可愛い。普段は鬱陶しいが優香のふとした瞬間に見せる表情や仕草にときめいてしまうのは仕方ないことだろう。そんなことを考えながら優香の寝顔を眺めているといつの間にかいい眠気が襲ってきた。
依頼どうなっちゃうんだろうね




