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第16話

ウェーーーい

ラブコメにおいて修学旅行というイベントは欠かせない。好きな異性と同じ班になったり、消灯後に恋バナしたり、雰囲気のある場所で告白したりされたり。そんなのを楽しみにしていたがよく考えてみれば好きな異性は今のところ何とも言えないし、恋バナなんて話に混ざれないだろうし、いい場所で告白なんて友達すら少ない俺には縁のない話だ。だから俺にとって修学旅行なんて学校行事以外の何者でもないのだ。自分で言ってて泣きたくなるな。


総合の時間。中間テスト、体育祭の次の学校行事である修学旅行の班決めを行っていた。


周りではそれぞれのグループで誰を切り捨てるかの心理戦が行われていた。仲良い奴ら同士一緒の班になりたいらしいが当然人数制限がある。切り捨てられた奴の顔ときたら・・・これ以上にないくらいご飯のお供になりそうだ。

俺は大丈夫なのかって?問題ない。なぜなら小学校の修学旅行も中学の時も切り捨てられた彼らの班に最終的に嫌な顔されながら入ったものだ。

今年もそれを待っていると八潮先生が「万部は4人な」と強制的に組まされた。

まぁ何となくは分かってたけどね。

あの先生、絶対何か企んでやがる。


3人が椅子を持って俺の机に集まってきた。優香の「えへへー。蓮ちゃんと一緒!」という満面の笑顔を見ながら俺たちはどこへ行くか話始める。

「あなたたちはどこに行きたいとかあるかしら?」

「京都でしょ?でも1日目以降自由行動だからどこでもいけるのか!」

「ええ。近畿ならどこへでも行けるでしょうね。ただ泊まる所次第で行動範囲は変わってくるのだけれども」


そう。うちの高校の修学旅行は1日目の全体行動以降自由行動ができて宿泊場所も班の自由、何なら次の授業が始まる前に帰ってくるなら何日滞在してもいいというほぼ置き去りな修学旅行が名物でもある。


「私は京都の清水寺とか金閣寺とかに言ってみたいわね」

「お前それアニメの修学旅行といえばみたいな場所じゃねぇか」

「うるさいわね。あなたは何かないのかしら?」

「俺はそうだな。友ヶ島とか?」

「あなたもサマータ○ムレンダの聖地じゃないの」

「あの、私伏見稲荷神社とか行ってみたいんです」

「伏見稲荷神社って何が有名なんだっけ。名前は聞いたことあるんだよな」

「伏見稲荷は鳥居がトンネルみたいに続いてる階段とかが有名ですよ」


それなら見たことがある。五等○の花嫁の修学旅行でも出てきたし俺ガ○ルの修学旅行にも出てきたな。


「この感じなら京都に行動範囲絞ってもいいんじゃないか?」

「優香さんどこ行きたいとかあるかしら?」

「私はね・・・美味しいものが食べたい!」


勿体ぶってそれかよ。心配しなくても近畿ならたくさんあるぞ。


「なら尚更京都でいいかもしれないわね。今日だけだと調べきれないでしょうからまた次の授業までに各々行きたい所を調べておきましょう」


よく考えたら俺の意向は無視かよ。友ヶ島は見どころたくさんあるのに。


〜放課後 部室〜

図書室で借りてきた京都のガイド本で盛り上がっている3人を横目に1人で黙々とソシャゲをやる俺。そんな空間に来客が来た。

2回のノックの後「失礼します」と5人の男女が入ってきた。おい。ここはトイレじゃねぇぞ。

ついツッコんでしまったが5人で来るとは一体何事だろうか。


「ようこそ万部へ。何か依頼かしら?」

「その、はい。あの・・・」


未央が切り出すと1人の女子が答えようとするが言葉に詰まってしまう。

すると後ろで控えていた4人が励ましつつ自分で言うように促している。


「その、修学旅行で・・・こっ告白がしたいんです!!」


これまたすごい依頼が来たな。

でもそれ俺達じゃなくて良くね?と言う言葉を飲み込んで話を見守る。


「告白!?え!誰にするの!?」


と調子良く乗ってきた優香。そんな優香をなんとか押さえつけ話を続けるよう未央に合図を送る。


「どんな方法でするか聞かせてもらってもいいかしら?」

「ええっと、それがまだ決まってなくて・・・。とにかくいい雰囲気のところで告白したいんです」

「でも、具体的な場所くらいは聞いておかないと準備もできないのだけれど」

「とりあえず京都市内で決行しようとは思ってます」

「それなら私たちも京都をメインに散策しようと思っているからちょうどいいわね。ただし条件があるわ」

「条件?ですか」

「ええ。まず京都市内であること。それと3日目の午後だけ私たちが手伝う。という条件であれば引き受けましょう」


なるほど。この2つの条件は俺達の班の修学旅行への支障を最低限に抑えるための条件だ。

1つ目の『京都市内であること』は京都をメインに散策する俺達がいつでも行けるようにするという彼女らのほぼ何も決まっていないことへの対策だ。2つ目の『3日目の午後だけ』というのは彼女らの仲もある程度良くなっていそうなラインで何も決まっていない彼女らの計画を補助しているのだ。

俺達へのダメージを最小限にし、かつ彼女らへの配慮を怠らない。未央はいい上司になりそうだ。


俺がまとめている間に彼女ら5人の話し合いも終わったのだろう。


「わかりました。それでお願いします」

「ええ。場所が決まったら早めに連絡お願いするわ。それで誰に告白しようとしてるのかしら?」


だろうな。お前も聞きたかったんだな。優香と同じ属性だったな。

相手の女子は少し迷った後覚悟を決めたのか教えてくれた。


「5組の日高悠人君にしようと思ってます」

「ゴッホゴホゴホ!?おぇっほごほ!」


ついむせてしまった。正気か!?まさかあの悠人に告るとは命知らずにも程がある。

相手様方にすごい目で睨まれた。


「なるほど。日高君ね。彼ならよく知ってるんじゃないかしら?」


と俺を指差す。


「一応聞くけど正気?」

「馬鹿にしてるんですか?正気です。本気で日高君のことが好きなんです!」

「いや、、じゃあ止めないけど・・・」


あいつのよくない噂は少なからず知っているはずだ。入学式の日にあんな振り方をしたのだ。それを知っていて告ろうというならまず正気ではない。だがそれでもやめないというのであれば俺もそれ相応の対応をしよう。


「あいつは・・・そうだな。うーーーん。どんな場所でも状況でも同じだと思うよ」


それしか答えられないのだ。俺はこの告白がどんな結末になるか大体予想がつく。だがそれを彼女に伝えてしまうと俺の評判はいいとして万部の評判が落ちてしまう。それはまずいので絞り出した答えがこれだ。


「でも雰囲気が良くて気を悪くする人はいないですよね!じゃあいい場所探さないとなー。ありがとうございます。また連絡します!」

そう言って彼女らは部屋を出て行った。


その後は特にすることもないので解散しそれぞれ帰路についた。

久しぶりに土手を通って帰ろうと思い優香と共に学校の裏門から出て土手を上がる。

沈みかけの夕日が照らす荒川の水面は綺麗だ。普段は汚いくせに。

ふとグラウンドを見てみた。

男子サッカー部と野球部が活動していた。

悠人は9対9のゲームで一際輝いていた。顔が良くて、運動神経が良くて、勉強も人並みにできる。そしてクズ。神様はなぜあんなモンスターを生み出してしまったんだ。完全に罠だろ。さっきの依頼者もこの罠にかかってしまった可哀想な子羊になってしまうのか。なまんだぶなまんだぶ。というかよく考えてみればさっきの5人の内2人の女子は悠人と修学旅行の班が一緒だったな。ということは後の依頼者含め3人も同じ班なのだろう。合計3班による合同作戦か。そう考えるとかなり大掛かりになってきたな。

コート外を見てみるとサッカー部の顧問ではない男が指揮をとっていた。あれは花奏の父だな。見たことのある背格好をしていた。というかあの話し合いが先週の日曜日だぞ。八潮先生やっべー。少なくとも今後の学校生活で歯向かうことは極力したくないな。


その後彼女達から連絡は来ず1週間が経ちついに出発前日の夜。

日が経つごとに楽しみになっていった俺の心は楽しみと同時に不安で眠れなかった。

結局今日まで依頼者から連絡は来なかった。どうするつもりなんだろうか。このまま失敗して万部の評判を落とすことだけは本当にやめてほしい。仕方ない。最悪の場合は俺が無理やり動こう。

そんなことを考えていたらいつの間にか寝ていた。


翌朝優香に叩き起こされ危うく遅刻しそうになりながら川口駅へと走った。

優香。叩き起こす時はみぞおちじゃなくて普通に顔とかぶっ叩いてくれ。朝起きた時に走馬灯流れたの初めて見たぞ。

いえーーーい今回から修学旅行だよーーん。すっごい色々調べたから期待してて。あごめんやっぱなしで

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