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18 1章 18話 氷霊剣鬼

 1章まで毎日投稿予定。

 良いね。賛否感想お持ちしております。

 読み終わったら、星マークの評価をよろしくお願いします。何卒。

 

「それじゃあ。やりますか」


 町で準備を終えて、やってきたのはジャッカーロープの森だ。それも今回の今回の目的地は少し遠くで、当然に道中何事もなくとはいかない。


「一匹そっち行きましたよ」

 

 スラムでもよく見るような野犬の群れだ。


「任された」


 私がほとんどの野犬を相手にしているが、たまにどうしてもコントロール仕切れなかったりすることもある。その場合はわざとマードブの方になるべく逃がすようにしているのだ。

 マードブの戦闘力はさすが元開拓者と言うべきか、その技術は目を見張るところがある。攻撃力は所有している武具にもよる所があるが、総合的に見て、あの氷精霊の猟犬とも十分戦えるだろう。

 だが純粋な反射神経や速度、腕力ではさすがに私に分がある。私の能力が一方的に劣っているとは思わなかった。それでもモウドットの護衛を請け負おうのは御免蒙るのでマードブに任せる形に落ち着いた。


「おっと、一匹モウドット様のところにー。さあ、モウドット様。出番ですよー」


 前腕骨折。前歯全損。くたばり損いの野犬の後を歩いて追いかける。

 マードブも察して手を出さず、危なくなったら助けられる位置で見守っている。


「ちょっとシーカ。あ、まって、マードブ、ひゃん」


 変な声を出すな気持ち悪い。

 モウドットはロシュの用意した武装で全身を固めている。正直、私素人目で鑑定したところ、軽さと見た目を重視した粗悪品である。しかし、モウドットの好みで彼が着用して森を歩けるという需要を満たしている、良いチョイスだ。

 マードブは抜き身の槍の他に、槍が入っているだろう筒状の箱を背負っている。今回は木が密集していないところが目的地だから良いが、動きにくくないのだろうか。箱も槍も身長の倍ぐらいの、よくある長さの槍ほど長くはないが、何かと引っかかりそうなものである。

 一方、私の装備は背中が寂しい感じで、スタッフを杖代わりにするには少し短かいけれど、ベルトに吊せるようにしてきたので身軽なものだ


「そろそろ限界、頼む」


 なんて貧弱なのだろうか、スラムのガキでもブラックジャックでたこ殴りにしているというのに。

 そして今晩の食卓に並ぶのだ。私よりたくましいかもしれない。

 モウドットはまるで死ぬ前の私である。いや全くこのような性格ではなかった、弱さは同等という話である。もし、モウドットがあの世界で生きていたのなら、クラスの人気者になれただろうに。そして家族と共に死んだだろう。


「まだ、死ぬには早いよね。もっと絶望して貰わなきゃ」


「すごい不穏なことが聞こえたのだが。何か怒らせてしまいましたか謝りますからお願いでストもか苦難でもいいので助けてください、モウドット」


 あまりに見苦しく、戦いが上達しそうな気配もないので、そろそろ助けることに。


「えい」

 

 なお、野犬はつま先で突っついたら死にました。

 そんなこんなで森のワクワク仲間達と戯れつつ、ようやく目的地にたどり着いた。

 

「シーカ。僕が先頭を行くぞ。僕の新たな鎧と剣にかかれば、怪物なんて敵ではない」


 どこからどの自信が出てくるのやら。

 

「モウドット黙っていろ」


「今、呼び捨てにしたかぁ」


「いえ、そんな事はありませんよ」


 目前には大樹の洞が広がっている。

 マードブ、モウドットとの3人で、身軽にやってきたのだが歩みは遅く、ある意味険しかった。今回は足手まといも居るが、初めからジャッカーロープの森は相も変わらず広大である。

 噂だと、村の所の他に、町に向かうように冷気が残る場所が有るとか無いとか。それで新しい怪物が居るのではと、スラムの面々が衛兵に相談しに来たらしい。恥ずかしい話だ。


「痕跡を見て恥ずかしがる、そんな誰得な場面はやってこないけどね」

 

 今回、用があるここは、村の方からは外れた方向の、開拓者でも用がなければあまり近づかないエリアである。

 その理由は、単純に危険だったり、建造物がなければ用事も何も無かったりとあるが、私は以前魔術師の依頼で立ち寄ったことがある。それは森の深層に立ち寄らずとも、ある素材が安定的に手に入る地点だからだ。

 ジャッカーロープの森の植生は、どこもかしこも同じというわけではない。ここらは比較的浅い位置、つまり海岸線に近いにもかかわらず、もはやビルのような巨木が群生して、それが重要だ。

 そんな場所には決まって、今回のターゲットは巣を作る。

 樹精霊。そのうち今回狙うのはウェンシェンと呼ばれている存在だ。詳しくはよく分かっていないが、ジャッカーロープの元眷属の樹精霊は基本的にウェンシェンとその変異種らしい。精霊という時点で危険度が高いが、ウェンシェンは討伐方法が確立している敵だ。

 ゲームと同じだ。友好な攻撃方法、武器種、状況。長い間のジャッカーロープとの戦いですでに、ウェンシェンは攻略されている。

 そんな事はモウドット知る余地もないだろうが。

 どうか勘違いして、過剰に怖がってくれれば良い。


「では予定通りに、マードブ殿は護衛をお願いします。私が釣りだして、そのまま討伐するので」


「ああ、分かった」


「モウドット様も当然それで良いですね」

 

 モウドットは緊張を浮かべて、静かに頷いた。

 少しは恐怖の感情がこの男にもあるみたいだ。それを普段から考えることが出来ればウースー子爵も喜ぶだろうに。

 ずた袋から小瓶を二本と、砕くと火が出る水晶、アポテフロシの欠片がめい一杯詰まった袋を取り出した。

 アポテフロシの欠片をポケットに詰め込み。残りを瓶一本と共にマードブに渡す。マードブの服にはポケットが付いていない為、腰のポーチにそれらを詰めている。

 この瓶には、油が入っていて主に武器に塗布することで使用する。この油はどういう仕組みか、ウェンシェンを火傷させるらしい。再生力を低下させ、強い痛みを与える。肉体を破壊することで殺せる類いの精霊にしか効果が無いが、ウェンシェンを狩るにはうってつけだ。


「バックパックがありゃ、もっと一杯買い込むつもりにもなったのだけれど購入予算が歩いてやってきてくれないかな」


「ウースー卿に言えばそれくらい買ってくれたやもしれないぞ、シーカ」


「空っぽなバックパックだけを持ち歩いてもね。どうせなら、バックパックの他に、いろいろな道具を買い直したいのですが、それをねだるのは良心が少し痛んで」

 

 なんだか類似品が売り出されているのはありがたいのだけれど、アレも良い値段がするからな。ただのボロ皮で作られた前のバックパックは、猟犬との戦闘でチーズになってしまったが、現在販売されている製品は開拓者仕様。燃えない、濡れない、穴が空かない、切れない、中身が潰れない。便利なのは間違いないが、価格も性能相応なのである。


本当(ほんと)、デカい足跡だね。(もぬけ)の殻じゃないようでありがたいけれど、化け物らしい化け物だよな。怪獣感があるというか、見た目は植物系アンデットって感じだし」


 たいまつを片手に、スタッフをベルトに吊して、アポテフロシの欠片を握りしめて中に入った。ウェンシェンは普通に活動していれば良いのだが、地面にうずくまっていたり壁からぬるりと出てくる辺りサバイバルよりのホラーの驚き方をするはめになる。なので、人数が多い場合はモクモクと煙を炊いていぶし出すのだが、それでウジャウジャと群れが出てくると危険なので、今、私が一人で(うろ)に侵入しているのである。

 中は骨塚が有り、果物の腐臭が立ちこめていた。


「ノックノック。ヘイ、ウェンシェン。これから毎日家を焼こうぜ」


 骨塚のすぐそばに、鹿の頭骨のようなが視界に入る。

 ためらいなくアポテフロシの欠片を手の中で砕き。頭骨めがけて投げつけた。小さな爆発が幾度も起こり、火の手が上がる。その中から炎の巨人が立ち上がった。


「マードブさん、一発で当たりです。少し後ろに下がって警戒を」


「了解した。シーカ気をつけろよ」


 どうも。けど問題ないね。

 

「薪のように殺してやるよ」


 瓶の油をスタッフに塗り直し、たいまつを入り口に投げ入れた。松明の明りに照らされた、巨獣はすでに鎮火し、全容が露わになる。4足にもかかわらず、その状態の身長でも私の身長の4倍ほどだ。

 異様に長細い手足と、手足の先から伸びる指がヒョロヒョロとうねり根のように大地に突き刺さっている。大地との接点が小さくまるで空中に浮いているようだ。鳥の巣や茨のように絡まった胴体から次々と触手のような植物とも肉とも言えない独特な器官が生えそろう。

 足の裏で大地が揺れた。沈み込むように加速する。竹槍のように私の影を貫いて、風と土塊を肌に感じる。

 避けた先に用意されていたのは触手の迎撃だ。だが猟犬に比べるとあまりに遅い。


「よくこれと戦ってたな、昔の私」


 軽く触手を払いのけ、ついでに砕け散るところを前に走る。別にウェンシェンも弱い敵ではない。それこそ猟犬戦以前の私なら危ない場面もあったかもしれない。戦士(プレイヤー)のレベルが低ければ、最適な装備があっても当然勝てないのだ。

 前足を横薙ぎでへし折るつもりが、スタッフがすっぽ抜けそうになる。勢い余って、汚い断面で切断したらしい。支える物が無くなったことで、ウェンシェンは頭から崩れ落ちる。

 潜り込むように股下を抜ける。

 触手が勢い無く私を絡め取ろうとするが、簡単にむしり取ることが出来た。反対の足の膝を掌底を抜いて逆方向に曲げる。

 ウェンシェンは完全にバランスを失っていた。


「まあ、今更苦戦する相手でもないよな。思い出せば外からじわじわと削って、もっと慎重に戦っていた気もするけれど、距離を置かなきゃいけないみたいな威圧感を感じていたのかね」


 戦いにおいては、成長を実感できる瞬間ほど気持ちの良いものはないね。戦いがつまらないだけとも言うけれど。

 高かった頭部もやっと同じ高さまで落ちてきた。足の再生をすでに初めて、前足も再生しようとしているが、その傷口は炭のようでで治らない。小瓶の油を塗っておいたおかげだ。

 ちぎれたウェンシェンの部品は、やはり樹木とも魔人のとも違う。そんな不気味な肉塊からアルコールの匂いと血肉が焦げているような、嫌なにおいが漂っていた。

 完全に殺すためには、胴体を分割する大工事が必要だろうが、まずは感覚器官を排除しようと頭部に近づく。

 私を串刺しに仕様と相変わらず触手が大地から空から襲いかかるが、一撃目とは違い、奇襲性も速度も全くダメで、くだらない。

 頭蓋を砕こうかとというところだったが、まだウェンシェンは諦めていない。後ろに飛んで、アポテフロシの欠片をありったけ投げつけた。小さな火が爆ぜるが、繭のようになった触手がそこにはあった。

 モウドットはまだ気がついていない。

 更に大きく距離を取る。

 一見ウェンシェンが防御行動を取っているだけに見えるが。触手の量が続けている。別の所からやってきたのか。ウェンシェンの肉体が変態しているのか。

 それは何か別の、もっと恐ろしい生き物に、化け物になろうとしていた。


「マードブ殿、コレ見たことありますか」


「ない。異常事態だ。俺も参加するか」


 全く過去に見たことのない行動だ。

 まーた、こんなのばかりか。

 もう、あんまりだよ。


「モウドットを護衛していてください。私一人でなんとかします。なんとかならなかった場合、最悪は撤退を。護衛しながらでは戦力が足らないでしょう」


「モウドット、お前は頭を下げてマードブ殿のそばを離れるな。後はなんか頑張って避けろ」


「ひい、いま呼び捨てにしたな。」


 繭が開く。

 誕生だ。

   

「木人?いや、森人か」


「アレは、ドライアドか?」


 初めて聞く。


「なんです、そのドライアドって」


「ドライアドは、古くジャッカーロープ全盛の時代に、この地に暮らしていた最大種族だ。現在は魔人と混ざって、その子孫は森人などと呼ばれているが、その忘れ去れた本来の名がドライアドだ。だが形はドライアドに似ているが、このような木人形のような姿ではなかった。単純にウェンシェンが我々を模倣したと考えるべきやもしれん」


 なら、奴が完全に動き出すま前に叩く。


「ハーピーバース死ねぇ」


 体格も構造も今できたてホヤホヤなら、それになれる前に潰してやる。

 小瓶を直にドライアドに投げつけて、ついでに残った分全部のアポテフロシの欠片もおまけした。火炎を中からスタッフを顔面にたたきつける。一息の間に魔人100人分を殺すほどの力と回数で叩き潰した。

 手応えが。

 対象の体内でミミズが這っているようにうごめき膨らむ。

 それは先ほどよりも一段階洗練された姿になった。

 動き出したドライアドの攻撃を避る。炎の中から現れたそれは、たいして傷も負っていない。クソ、堅さは猟犬級か。


 パンッ

 

 突然、ドライアドの腕が伸び反射でスタッフで弾く。

 私に傷は無い。まだ戦える。

 だが、猟犬戦からの疲労もあったのだろう。スタッフの半分ほどで罅が入る。コレでは戦えたものじゃない。


「マードブ殿、撤退を、それともマードブ殿があれと戦いますか」


「いや、戦うのはシーカだ」


 何を


「コレを使え」


 マードブは私に叫びながら、背負った筒をこちらに投げる。空中で留め金が外れ、中から3mほどの棒が露わになった。

 クォータースタッフだ。

 嫌われ者(アナテマ)


「ウースー卿から、報酬の前払いだとよ。狩りの帰りにでも渡してやれと言われていたが、コレも予想していたのではあるまいな」


 ドライアドを正面に先端を下に、上段に構えて対面する。ドライアドが行動する前に喉に下から飛び上がるような軌道で突き刺す。狙いから拳1つ分ずれて、今度は木の体を破壊ことするが、首はつながったままだ。

 長さも重さもまるで違う、似ているように見えて全く別の武器だ。練度に低さを誤魔化すように、一撃で仕留めようとしたが、裏目に出た。

 こちらの体制が崩れたところで先ほどと同じ突きだ。

 先端で絡め取るように払いのけ、地面にドライアドの腕が突き刺さる。だが先端が地面に接触し私の手からクウォータースタッフがこぼれた。


「クソ」

 

 とっさに転がり、横に距離を取る。接近して拳で吹き飛ばそうとしたところ、手の中にスタッフが戻ってきていることに気がついた。脇と腕でとっさにホールドして。体ごと横を向く要領で相手の体をなぐ。

 回転のエネルギーを生かすように。懐に潜り込み両手で掴み反転させ短くなったクォータースタッフで今度は頭をぴったりと突き、破壊した。


「死ね。怪物よ」

 

 はじけた頭蓋がうねうねとうごめき、地面の上を足掻き、色褪せ、萎み、枯れた。

 こうして無事にウェンシェン狩りは完了した。


「シーカって戦っているとき、口が悪くなるね。僕ちょっと怖かったよ」


「え」


 失礼な。悪態の1つでもつきたくなるだろう普通。

 そしてモウドットの心を折るはずの怪物狩りは、どうやら失敗したらしい。なんだかアドレナリンのようなものが出ているのか、興奮していて普段の倍うるさいモウドットだけが残っている。

 私はヘトヘトだ。

 ウェンシェンの素材も、ドライアドのような怪物に全て食い散らかされて、枯れ木に変わり果てている。ただのゴミである

 

「まあ、全員無事で何よりだ。ウーサー様に良い報告が出来る」


「モウドットは、どうやら相変わらずの様子ですが。ほら、すっごい目キラキラしてる」


 マードブは腹を抱えて、それはそれは愉快だと言わんばかりに、大笑いして言った。

 

「報告するのは、新たな英雄の卵が生まれたということだよ、シーカ」


 

 良いね。賛否感想お持ちしております。

 読み終わったら、星マークの評価をよろしくお願いします。何卒。

 

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