ばけもの子供の物語 嘘
あるところに、毒蛇と仲良しな子供がいました。
その子供は、他の子供達と遊ぶのが上手くできなかったため、動物と遊ぶようになった子供でした。
遊び相手となる存在の中には、様々な動物がいます。
けれどその中でも、特に蛇と遊ぶのが好きでした。
蛇は物知りです。
そのため、子供に色々な事を教えました。
川の上を歩く方法、雲の捕まえ方、虹の渡り方などなど。
それらはどれも子供の知らない事でした。
蛇は大変なお話上手。
たくみに興味を引いては、得意の話術を駆使してお話を続けます。
中には簡単には信じられないような事もありましたが。
「僕達は友達だろう? 友達に嘘をつくわけがないじゃないか」
蛇は自信満々にそう言います。
なので子供はすっかり蛇を信じ込んで、その知識を正しいものだと思いこむようになりました。
ある真冬の日、雪の降り積もる極寒の夜。
子供は蛇から教えられた事をためしてみたくなりました。
それは燃え盛る火を一瞬で消す魔法。
パチパチ。
パチパチ。
燃える暖炉に近づいて、真っ赤に燃える薪を眺めた子供は、そこに並々とした油を注ぎこみました。
ぼうぼう燃える、真っ赤な炎。
火はどこまでも大きくなって、一つの生き物のようになります。
蛇に騙された事を知った子供は、愕然としたまま家の中が燃えるのを眺めていました。
雪の降る極寒の日だというのに、火の手がまわるのが早かったため、そこから逃げ出せる者はだれもいませんでした。
春になった頃。
一匹の蛇が、草花に満ちた土の上を這っていました。
「やぁ、蛇さん。とっても気分がいいから、抱きしめてほおずりしてもいい?」
そこに現れたのは、炎をまとった怪物。
草花を焼き焦がしながら現れた小さな怪物でした。
「大丈夫だよ。熱くても怪我なんてしないから」
その怪物は、当然の様に両腕を広げて自信満々に言います。
「僕達友達だろ? 友達に嘘をつくわけがないじゃないか」