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エンシェント・ロマンズ  作者: スイッチ&ボーイ
第一幕 猫と美少年と伝説と
8/26

故意じゃなく事故

メリークリスマスっ! 今年もいよいよ僅かとなりました。オミクロン株なんかがちょこちょこ発生してるようで、皆さんも年越し前に掛からないよう気をつけてください。



ある日、とある宿場町ではひとつの話題によって住民達が騒いでいた。


「おいおい、近くの古城が倒壊したって本当の話かっ?」

「あぁ、マジだぜ。さっき見に行ってみたら、そこそこでかい城がもう瓦礫の山になってたんだ……老朽化で崩れたようには思えなかったが、一体なにが起こったんだろうなぁ?」


飯屋で料理を待ってる間に話している男達の話題となっているのは宿場町から少し離れた場所にある古城が突如として崩壊したというものだった。

前日の真夜中に周囲に轟くほどの爆音が鳴り響き、宿場町の住民が一時パニックに陥った事件は自警団が現場まで駆けつけて詳細を把握するまで続いた。町外れにあったそこそこな規模の城が完全崩壊していたことは自警団のメンバー達を驚愕させ、それを伝えられた住民達も聞かされた当初は戦々恐々とした。


古びた城とはいえ、それでも城は城だ。そんな建築物を崩壊させるような真似などそう簡単に行える訳がない……爆弾でも使ったのか、はたまた大規模魔術でも行使したか、なんの目的で古城を破壊したのか、いずれにせよただ事でなかったので今朝からは自警団による巡回と警戒で宿場町は物々しい雰囲気であった。


最も、住民達は一時は大騒ぎしていたもののそれほど不安に囚われてる者は少なかった。宿場町自体が狙われた訳でなく、被害に遭ったのはもう所有者も定かでない古城であり、実質的被害などゼロだったからだ。

自警団は警戒してるものの、これといった犯行声明も出されてないことから一部では愉快犯の仕業だろうという声まであった。


「ま、あんな城が壊れたところで別に誰も困りもしないがな」

「確かにそうだ、困るとしたらあそこをねぐらにしてた浮浪者ぐらいか」


そう締めくくって注文した料理がテーブルに置かれると男達は食事に勤しんでそれ以上は話されることはなかった--それを真後ろで聞いていた人物は話の内容に面白くなさそうな顔をするとグラスに残った酒を呑んで早々に飯屋から出ていった。



(困るとしたら浮浪者ぐらいだって? 困ってんのは俺の方なんだよ、クソがっ!)


心中で舌打ちをして不機嫌な面で通りを歩く人物……それは昨日にショコラから財布を盗ったあのスリであった。


ショコラとレオリアの二人を落とし穴に嵌めた後、スリは大急ぎで盗品の中から特に価値の高い物と持てるだけの金を持って古城から逃走したのだ。

流石に全ては持っていけず、残りは万一の時に用意していた隠し部屋に避難させた……それからは一旦隣町まで行って、ほとぼりが冷めたら回収に向かう手筈であったのだが、一日経ってから様子を伺いに戻ってきたらなんと古城が崩壊してるという話で持ちきりであったのだ。


半信半疑で見に行ってみれば、そこにあったのは崩れて瓦礫の山と化した城の残骸のみ。最早、自力で盗品を発掘することなど不可能であった。戦利品のほとんどを失ってしまったのは大きな痛手であり、同時にこれをやらかしただろうあの猫亜人と金髪男に逆恨みを抱いた。

しかし、これほどまでの破壊力をもたらす魔術の使い手とは思えず、それだけが疑問であったが……考えても答えなぞ出ないので止めた。


(あくまでスリは小遣い稼ぎでやってたに過ぎねえけど、この借りはいつか必ず返してやるぜ)


ショコラ達への報復を胸に、スリはそのまま宿場町を離れていったのだった。




--そして、肝心要のショコラとレオリアはどうしてるかというと人目を憚るように森の中をコソコソと歩いていた。心なしかあちこち焦げたような跡があり、頭髪もチリチリヘアーとなっている。


「ちょっとちょっと~。なんだってこんな森ん中を歩くわけさ~? 歩きにくいし疲れるんですけど~」


「「誰のせいだよっ!!」」


後ろから着いてくるリッチの女性--エルフォルトの文句に二人揃って声を荒げる。二人の格好とこんな人気の無い森の中を進んでる訳は昨夜に彼女がやらかした行為のせいに他ならない。


地下から脱出する為とはいえ、上部の城を完全に崩壊させるまでの爆裂魔術をなんの説明も無しにぶっ放した為にあわや生き埋めとなりかけたのである。寸でのところでエルフォルトが結界を張ってくれた為に埋まることはなかったが、それに関しては感謝なぞなかった……元凶なんだから当たり前である。


また爆裂魔術の余波でショコラもレオリアも焦げかけて、必死になって瓦礫から這い上がり、事態の説明が困難&捕まる恐れがあったから宿場町から駆けつけてきた自警団の目から逃れる為に疲れる体に鞭打って逃げてきたのであった。寝不足もあって、二人ともイライラのゲージが溜まりっぱなしなのも追記しておく。


「と言うか、なんで私達に着いてくる訳なのさ。貴女は貴女でどっか別の場所で余生でも過ごしたらどうなの」

「え~、て言っても数百年経った今じゃあ、あたしにゆかりとか無いし~。知り合いだってみんな死んじゃった訳だしさ~、他人ばっかの土地で過ごすより顔馴染みのあんたらに着いてった方が楽しく過ごせると思うんだけど~?」

「それは却下だよっ! せっかく男の娘美少年のレオくんと二人っきりのいちゃラブ旅をやってるのにそこに新ヒロイン参入だなんて事態は絶対に認めないからっ!」

「いやお前はなにを言ってんだよっ! 俺とお前はあくまで護衛主と護衛の関係でしかねーだろが」

「っ!?……そんな、ひどいよレオくんっ! 私は君にこんなに親愛とか性愛とか向けてるのにそれを全否定するだなんてひどいよっ、およよよ……」


わざとらしい泣き真似をして崩れ落ちるショコラが鬱陶しくて仕方がなかった。正論を言っただけなのにそこまでショック受けなくていいだろと内心で思った。


「おんや~、レオったらそんな見た目してんのに女泣かせな性格してる訳~? まだ若いからお盛んなのは分かるけど、女遊びは程々にしとかないと後で苦労するよ~」

「やかましいわっ! こいつの言うことは間に受けんな、百パー妄想の虚言なんだよっ!……で、実際のところ本当に俺らに着いてくる訳なのか?」

「ん~、ま~さっき言った通りだよ~。それに数百年も経ったんなら環境とか情勢とか色々と様変わりしてるだろうし~、そこんとこ考慮するとあたしだけで過ごすのはやっぱ不安だからさ~、ひとつお願いするよ~」


そう言って手を合わせて頼んでくるエルフォルト。

前述の後先考えないやらかしからトラブルを引き起こしそうなので突っぱねたい気持ちはあったが、確かに数百年前の人間がいきなり現代に蘇って社会などに順応して過ごせるかどうかと言われると、かなり難しい問題だろう。

それに断ったとしたら、リッチとはいえ女性を放り出すことになるしレオリアとしてはあまり女性に無下な真似をするのは気が引けた--あと心配になったのが強力な魔術を街中でポンポンと撃ったりしないかということもあった。


最終的に下手な真似をさせない監視の意味も含めてショコラを宥めすかして、エルフォルトの同行を頼みこむこととなった。もちろん戦闘の際には、きちんと働いて貰うというのをエルフォルトにも了承させておいた。

ショコラはかなり渋ったが、ある条件と引き換えに彼女が一緒に来ることを許容した……その条件というのが、一日一回レオリアに自分がハグすることを許すというもので、これのせいでレオリアの悶々が強まってしまったがそれは些細な話である。



紆余曲折あって、リッチの女性“エルフォルト・アインスラー”が加わり、一行は貿易都市“トゥルードラン”にへと向かった。






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