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エンシェント・ロマンズ  作者: スイッチ&ボーイ
第一幕 猫と美少年と伝説と
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蘇りし者

アニメフィギュアを買ったはいいけど、置場所やホコリに難渋してます。取り敢えずガラスケース買いましたけど出費がやばい、でも後悔はありません。



祭壇らしき場所に置かれた棺桶……周囲には火の消えた燭台が囲むように並び、灯っていたならば厳かで幻想的な場になっていたかもしれないがその中心にあるのが棺桶では一気に気分が盛り下がる。

探索の果てに縁起でもないものを見付けてしまった二人は、暫し硬直するが程なくしてレオリアが我に帰る。


(嫌なもんを発見しちまったな、しかし棺桶ってことは誰かの遺体を入れてるんだろうけど埋葬したにせよ何だってこんな場所にあるんだ?)


もし、この棺桶がこの城に縁のある人物を埋葬してるなら何故こんな隠し部屋のような場所に置いてあるのか……当時になんらかの理由から人目に付かない場所にする必要でもあったのだろうか。

理由として考えられるのは高貴な人物であったから、埋葬品である高価な品々を墓荒しなどから守るためになど挙げられるが、或いは大っぴらには出来ない大罪人でも入れられてるのか……なんにしろ、触らぬ神に祟りなしとも言うし、ここは見なかったことにして立ち去るべきだろう。


「行き止まりみたいだし、こっから出るか」

「えぇ~、せっかくだしあの棺桶開けてみない? ひょっとしたら遺体じゃくて財宝とか入ってるかもしれないよ」

「仮にそうだったとしても、罰当たりだろ。祟られても俺は責任持てねー。ほら、さっさと行くぞ。早くこの地下から抜け出せるルートを探さねーと」


物欲から物怖じせずに棺桶を開けようと主張するショコラだったが、レオリアに至極真っ当なことを言われては仕方ない。

残念そうにしつつも、素直に言うことを聞いてその部屋から出ようとしたがその時にゴトッと物音がした。


「今の音はっ?」

「ネズミ、にしては大きすぎたな……なんか居るのか」


不意に鳴った物音に二人とも警戒して周囲を窺った。すると再びガタンっと物音がして二人とも即座に戦闘態勢に入る。ショコラはナイフを手に持ち、レオリアは拳を握り締めて身構えていたが物音の発生源が棺桶から聴こえてくることに気が付く。


ガタッ、ガタッと棺桶の蓋が中から開けようとされてるかのように動いており、二人は極度の緊張感に包まれる。


「も、もしかしてアンデッド……?」

「かもな。いつからあるのか知らねぇけど、こんな場所に放置され続けられてたら遺体がそう変化してもおかしくねぇ」


きちんと葬られているならともかく、こんな場所に長い間放置されてるなら遺体がアンデッドになってしまうことは充分にあり得た。

もしそうだったとすると、専用の装備もなくアンデッドを浄化できる技能も持ち合わせていない自分たちでは相手をするのは厳しい。

アンデッドは肉体こそ脆く動きも鈍い奴が大半だが、腐敗によって発生した毒素を撒いたり特定の手段でトドメを刺さないと決して倒せない厄介な特性があるのだ。


故にレオリアであっても負けこそしないが倒しきることが出来ない……特にこんな閉鎖環境で出くわすのは最悪といってもいいだろう。

まだ棺桶から出てこない内にこの部屋から脱出するかと思った矢先、とうとう蓋がずれて中に入ってるものが這い出てきた--が、出てきた”それ”は開口一番に大きなあくびをした。


「ふぁ~~~っ……あー、寝すぎた寝すぎた、寝すぎて身体中ガッチガチに固くなっちゃってるわ~。あてて、首も痛いし……こりゃ寝違えもしちゃったよ」


棺桶から上半身を起き上がらせた人影は怠そうな物言いをしながら、凝りをほぐすように肩や首を回したりしている。声からすると女性っぽいが暗がりなので顔の輪郭はよく分からない。声を聞く限りでは知性のないアンデッドではなさそうだが、では一体何者なのか?


「おい、あんた一体誰なんだ?」

「あ?……あ~、城主さんの使いの人? ごめんごめん、ちっと寝坊したけどすぐにやるから~」

「は? 使い?」


レオリアたちを城主とやらの使いと勘違いした人影がのっそりした動きで棺桶から出てきた。近づくにつれて、その人影の全容が明らかになってきた。


ゴシック系のドレスを身に纏っており、体型はショコラと比べるとスレンダーな感じで、レオリア以上に長く伸ばされた銀髪は足元にまで届きそうなぐらいにあった。寝起きだからかワインレッドのように紅い眼は半目であり、顔立ちはビスクドールのように整っているが顔色は青白く見える。病人じみたものだがそれでも神秘的な美しさを感じて思わず息を呑んだ。

だが、そんな外見の美女なのだが近くまで来られると非常に威圧的な印象を受けてしまう--なぜなら、彼女の身長は小柄なレオリアどころかショコラを軽く上回っており、目測でも二メートルぐらいはあるんじゃないかというほどなのだ。

そういえばあの棺桶は妙に大きかったような気がしたが、中身が”これ”だったからかとレオリアはいま納得した。


ほぼ無表情の長身美女に上から見下ろされるというプレッシャーを受けるも、相手はのびのびとした口調で喋りかけてきた。


「いやーめんごめんご。うっかり四度寝、五度寝しちゃってさ~。ちょっち寝坊しちゃったけどちゃんとやることはやるから勘弁してって、城主さんに伝えといて~」

「いやあのな俺たちは……」

「そんじゃあ、そっちの猫ちゃん案内お願いできる? 早いとこ行かないと駄目だからさ~」

「マイペース過ぎるよっ! まず私たちの話を聞いて欲しいんだけどっ」


こっちの話をろくに聞かずに自分のペースで話し続けるので、ショコラたちは困惑するばかりだ。怒鳴るぐらいに声を張り上げさせて、やっと向こうがこっちの話を聞いてくれるようになる。


「え~、話ってなにさ~。さっきも言ったけどあたし急いでんだよ~、早くしないと戦争が終わっちゃうじゃない」

「戦争ってなんのこと?」

「えぇ、なにってあんた決まってんじゃん。隣の国の、え~となんだったっけ、アレだよアレ……そうアレが攻めてきて大変なことになっちゃってんのよ~。だから、あたしはアレをなんとかする為に急いでんですよお分かり~?」

「いや、アレなんかで分かるかっ!」


あんまりにもふわふわした説明にレオリアは当然分かるわけがないと言う。この女性、見た目の綺麗さに反して中身はずぼらというかガサツなようだ。


「あれ~、よく見たらなんかここ地下っぽいんですけど~。なんだってこんなとこにあたしは居るわけ~? あんたたちさぁ、なんか知ってる?」

「それを聞きたいのは俺らの方だよっ! まずあんたは何者なのか、なんで棺桶の中に居たんだとか話してくれよ」

「そうだね、不都合なかったら話して貰っていいかな?」

「え~~、バリめんどくさいんですけど~。そんなこと話してる間に城が滅んじゃったりしたらどうするわけ~、あんたたち責任持てんの~?」

「いや、もうとっくの昔に滅んでんだよここは」

「……え、マジで?」


信じられないような顔をしたが、懇切丁寧に説明してやり、また自らも周囲の魔力を感知することが出来るらしい能力を使って周辺の状態を把握した結果……ショコラやレオリアの言うことが嘘偽りなかったことが分かり、愕然となって崩れ落ちた。


「うそ~、そんなことってあり~……ほんのちょ~っと寝坊しただけなのに取り返しのつかないことになってたなんて、これってさ~悪夢とかじゃないよね~?」

「夢だと思うんなら頬でもつねってやるけど?」

「え、嫌だけど~。そんなん痛いじゃん、痛くない方法で夢じゃないって分かる方法を提案してよ~」

「めんどくせぇなっ! それよりもう急ぐ必要もないんだから、俺らの質問に答えてくれよ」

「はぁ~、仕方ないな~。はいはい、話せばいいんでしょ話せば~ 」



グダグダな感は否めなかったがとにかく彼女の素性についての話が始まる--まず彼女の名はエルフォルト・アインスラー。この城の主である(正確にはもう存在してないが)ベスター卿という貴族に仕える魔術師であり……不死の存在であるリッチというものだそうだ。


”リッチ” それは魔術を極めた者が死後にごく稀にだが至れるという存在で、かなり砕いて説明すれば知能と理性は生前のままのアンデッドと言えば分かりやすい。

人の姿を保つが人間とは違うために亜人というカテゴリーに分類されてしまうが、リッチとなれば多少の怪我を負っても死なず大抵の傷ならすぐに戻り、保有する魔力量も跳ね上がる。更に年を取ることもないなど良いことずくめのものになる。


ただ、魔術を極めた者なら誰でもなれるというものでもなく、王宮お抱えの最高位の魔術師であってもリッチになるとは限らず、これについては個人個人の素養や保有する魔力の質量も関係してるらしいが如何なる要素によってリッチとなるかはまだ不明の部分も多かった。


「あたしの場合はね~、ベスター卿がそれ専門の研究しててさ~。上手く行けばリッチになれるっていう方法を考え付いて、あたしになってくれないかって頼まれたのよ~。あたし的には別に構わないから即オーケーしたんだけど~」


因みに勧められた理由は、彼女の言う”アレ”とやらの驚異に対抗するためであるそうだ。記憶があやふやでろくに説明も出来なかったので”アレ”というのがなんなのかサッパリだが、配下の魔術師にそんなことを勧めるぐらいなのだからよっぽどなことなのだろう。


「そうは言うけど、リッチってとどのつまりはアンデッドの上位互換みたいなもんじゃない。死人になるっていうのにそれを快諾したの? それに百パーセント成功するって訳でもなかったんでしょ」


そうショコラが指摘したが「まぁまぁ、リッチになったら理性や記憶はそのままだしそれで不自由なんかしないっしょ~」と割りと軽い気持ちでやったらしい。そして無事にリッチにへとなれた訳だが、その際に消費された魔力の回復と体を馴染ませるために休眠状態にへと入って、力が必要なその時が来るまでは眠りに入ったのだが……気が付けば数百年の長きに渡って眠りこけてしまったのである。

彼女が休眠に入る前と後で場所が変わってると言ったのは、万一に備えるのと彼女の存在を秘匿するためにベスター卿とやらが棺桶ごと地下に移動させたのかもしれない。


そして、詳細は不明だがベスター卿は彼女を目覚めさせることが出来ずにそのまま放置されてしまったようだ……”アレ”というのから逃げたのか、或いは襲われて死んだか今となっては真実は闇の中だ。


「まぁ、あたしの身の上話はこんくらいなんだけど~。あんた達はなんの用があって来たわけなの?」


そう聞かれたので、ショコラは自分やレオリアのことやどういう関係か、またどういう経緯でここに来たのかを全て話した。


「へぇ~、そんな事情で旅してんだ~。いいよね、ロマンとか夢を求めるのってさ~。こうなんて言うの、冒険心をくすぐられるとかワクワクするぞ!みたいな感じでさ~」

「あはは、そう言ってくれると私もやりがいを感じるよ」

「にしても、そっちのあんたがまさか男だったとはね~。全然見えないよ、まるっきり見えない。うん、どこからどう見ても可憐な美少女ちゃんだよ~」

「うっせーよっ! 気にしてんだからあんま言うなっ」

「あ、そうなんだ~。じゃあ常時素っ裸でいとけば誤解されないんじゃない~?」

「変態の汚名着せられて捕まるだろーがっ!」

「わ、私はその案に賛成だねっ。やっぱり着衣なんて余計なものがあるから間違えられるんだよ。レオくん、ここは身も心もさらけ出す覚悟を決めればそんな気苦労からも解放されると思うんだけど、どうかなっ?」


取り敢えず、邪な思いで目をギラつかせてるショコラにはチョップをお見舞いした。お互いの素性も明かしあったところで、またどうやってこの地下から脱出するのかという問題が浮上して、レオリアは彼女--エルフォルトにここの内部構造がどうなってるのかを聞いてみたが、彼女もこの地下のことは初めて知ったようで構造については分からないという答えしかなかった。



またしても行き詰まりかと思いかけるも、そこでエルフォルトが突飛な提案をした。



「じゃあさ~、もう思いきって吹っ飛ばしちゃわない~? どうせ上は犯罪の温床になってるみたいだし、後腐れなくドカーンとやった方があたしも吹っ切れるってもんだし~」

「えっ?」

「吹っ飛ばす?」



いい名案だという感じの発言にポカンとする二人を余所に、エルフォルトが普段の間延びした口調からは想像しづらい早口での高速呪文詠唱を始める。



間近でいるせいか、肌をビリビリとさせるほどの魔力の渦巻きを感じて猛烈に嫌な予感がしたレオリアは止めようと声を出そうとしたところで--



「”メガ・エクスプロージョン”」



呪文詠唱と同時に光と爆音が轟き、ショコラとレオリアの意識はそこで途切れたのだった。







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