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エンシェント・ロマンズ  作者: スイッチ&ボーイ
第一幕 猫と美少年と伝説と
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道のりにトラブルは付き物



古文書の完全解読のため、ショコラとレオリアは隣国にある貿易都市”トゥルードラン”を目指していた。

公共馬車を乗り降りすれば早く着けたのだろうが、生憎と手持ちの資金がそこまで潤沢ではなかったので国境を越えるまでは徒歩で向かうこととなったのだ。


とはいえ、貴族などの上流階級でもなければ徒歩での移動は普通でもあるので二人ともに黙々と歩いている……魔導技術が発達した国では魔導車という乗り物が普及してるらしいが、どのみちお高いそれを買えるのは懐が裕福な者だけなので関係ないことだ。


しかし、徒歩での移動では様々なトラブルが起こり得るものである。野盗や山賊、野生のモンスターなどに襲われる危険は付き物だ。もちろん整備されて国の兵士が定期的に巡回する街道などは危険度はぐっと下がるが、警備の網の目を縫って旅人を襲う賊も居るなど決して安全度は百パーセントでない。

特に戦争中などで荒れた国などはちょっと街を離れたところで規模の大きい盗賊団が闊歩してるなど、世紀末のような荒れようなのも珍しくない。流石にそこまで治安悪化してる国は極少数ではあるが……。



そういう訳なのもあって、公共馬車などを使わない場合は基本的に徒党を組んで移動するのが当たり前となっている。単純に頭数が多ければ少なくとも小勢の賊からは狙われにくくなるし、護衛の数も多ければそれに越したことはない……なので、たった二人で出歩き、見た目もそんな強そうには見えないショコラとレオリアが賊から見たら格好の獲物と見なされるのも致し方なかった。




「ぐはぁっ!……う、嘘だろ、こんな、つええなんて……」



着用していた金属製のプレートメイルが拳の形に凹むほどの打撃を受けた盗賊は口から血を溢しながら倒れる。辺りにも同様に伸された盗賊達が転がっており、剣や斧が叩き割られていたり兜がベコベコに凹んでたりと散々たる有り様だ。それをほぼ一人で成したレオリアは手応えの無さに嘆息しつつも、気絶した盗賊達を縄で縛るなどして手早く処理していった。


「やっぱ、二人だけだとこういう輩に絡まれやすいよなぁ」

「しょうがないんじゃない? 私はレオくんの強さは十分知ってるけども、そうでない連中から見たら可憐な美少女にしか見えないしね……そう、仮にもし捕らえられた場合、女の子だと思ったらまさかの男の子。だけれどその花の蕾が開く前の未成熟な肢体が男達の性欲を刺激して……あぁっ、どうしようっ、そういうシチュエーションも悪くはなかったりしてっ!」

「気色悪いこと言ってないで、さっさと手伝えっ!」


腐向けの妄想を始めたショコラをしばくレオリア。間違ってもそんな事態は絶対にしないし、もしそうなったら躊躇なく舌を噛んで死のうとさえ思ってる。レオリアには断じてその気はないのだ。

コントを挟みつつ、取り敢えず五人ほどの盗賊達を縛り上げる。

仮にも公共の街道であるのに、こんな真似をするとは先が見えないというか計画性がないというか……まぁ、恐らくは女二人組で襲うには絶好の相手と思い込んで勢いでやった感が否めないが。


盗賊の処遇に関しては取り敢えず、そこらの木にでも縛り付けておいて近場の街で衛兵にでも知らせて捕縛してもらうことにした。歩かせるにしても二人だけでやるのは面倒でもあったので妥当な判断だった。



こんな風に時たま盗賊やモンスターに襲われたりすることはありつつも、いずれもレオリアの活躍で事なきを得て順調にエンドア王国とターレン王国の国境線までの道のりを歩いていた。



◇ ◇ ◇ ◇



ターレン王国へ向かい始めて、はや二週間が過ぎた。旅自体は問題なく進んでおり、このペースならもうあと一週間ぐらいで国境線に差し掛かれるだろう。それさえ越えれば、あとは公共馬車などを利用して”トゥルードラン”まで一直線である。

そんな中で二人は道中で遭遇して倒したモンスターから剥ぎ取った素材を路銀に換えようと、ある宿場町に寄っていた。


「旅は順調に進んでるね。商業ギルドに卸した素材もなかなかの値になったし、これなら今からでも公共馬車とか利用しても問題ないと思うんだけど、どうかな?」

「俺は別に構わねぇよ。あんたの身の回りの安全考えたら、その方が良いだろうし」


小料理屋で腹を満たしながら、旅路の計画を練る二人。

当初は懐具合がちょっと心もとなかったので、国境を越えるまでは徒歩という話だったがモンスターの素材を売ったお陰でショコラの財布も潤ったので予定より早く公共馬車を利用しようということになる。

それにはレオリアも賛成であった、護衛する身としては少しでもリスクを減らせるに越したことはないので反対する理由もない。


……ついでに言うと、人の目があればやたらベタベタされることも減るだろうという目算もあったが。なにせこの猫娘はちょっと気を抜くとこちらに抱きついてくるのだ、実った胸を惜しげもなく当ててきて。


(変態チックなこととか言うし、エロい妄想もするけど見た目もスタイルも悪くないのが余計になんだよなぁ……そのせいでやたらムラムラしちまうし、こいつにバレないように処理するのが一番の気苦労だよ)


容姿は悪くない上に巨乳までセットとくれば、性欲を煽られない男など少数だろう。見た目美少女のレオリアも歴とした男、故にショコラとの道中は彼女に気取られないようにムラムラを適度に発散させていた。

細心の注意は払ってるが、万が一にも性欲を持て余してるというのを悟られたらショコラが何をしてくるのか分かったものではない。

なので、出来るだけ衆人環視の中で過度なスキンシップを抑えさせる意味でも公共馬車を早い段階で利用しようというのは願ってもないことでもあった。


タイミングよく、今いるここは宿場町なので複数の公共馬車の出入りもある。それらの中でちょうどいい運賃のものを探そうということで、腹ごしらえを終えた二人は小料理屋から出たのだが、その時に裏路地から急に出てきた人影とショコラがぶつかった。


「わっ、とっ!」

「あぶねっ」


体勢を崩して、あわや壁に頭から突っ込むところをすぐにレオリアが手で支えてくれたお陰で難を逃れる。ぶつかってきた方の人影--ハンチング帽を目深に被った色黒で男か女か定かでない人物は一言の詫びも入れずに足早に去っていった。


「大丈夫か?」

「うん、レオくんが支えてくれたお陰でなんともないよ。しかし、急に出てきて人にぶつかったのに何も言わないとか失礼極まるね」

「ほんとだな……ん?」


相手の礼儀の無さに悪態を吐くショコラに同意したレオリアは、ふと目線を下にやるとショコラの腰に提げてるポーチの口が開いてることに気がつく。

確か、今しがた会計を終えた時はそこに財布を入れて口は閉じてたと思ったのだが、嫌な予感がした。


「なぁ、財布はちゃんとあるか?」

「え、財布?……あぁっ、ない、ないよっ! ついさっき、ここに入れてたのにっ」

「やっぱりかクソっ! さっきの奴がスリやがったなっ」


嫌な予感が当たってしまった。ポーチの中を確認したショコラが財布が失くなってることに気がつき、今ぶつかってきた相手があの一瞬でスッたことを確信した。不味いことに人相をよく見てなかった上に服装もどこにでも居そうな地味な格好であったし、そいつはもう人混みに紛れてどこかにへと消えていた。


この街の自警団に協力してもらうべきかと思案したが……生憎と相手の顔をよく見てないので、協力してもらってもしらみ潰しに探してもらうしかないだろう。何より、下手に大事にしてスリに警戒されたら宿場町から出ていかれる恐れもある。そうなったら、もう追いかけようがない。

唯一、レオリアが覚えてることは色黒で耳に星型の多面体を模したイヤリングを付けてたことぐらいだ。



地道になるが、その唯一の手がかりを元に聞き込みなどして行方を探す他はない。ショコラとレオリアは協力して、スリの犯人の情報を探すこととなった。





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