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エンシェント・ロマンズ  作者: スイッチ&ボーイ
第二幕 巨樹と狩人と刺客と
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生い茂る樹海にて



たまたま迎合した傭兵仲間のメルギブから不穏な話を聞いてから数日後……ショコラ達は、いよいよ目的地であるジャングルに辿り着いていた。


三人の目の前に広がるのは古代然とした赴きのある民家よりも高い木々が生え並ぶ鬱蒼とした密林地帯……例の大樹と異民族があるジャングルである。

何の指針も無しに入ろうものなら即遭難するのは確実なぐらいの群生ぶりであった。


もちろん、ここに居る面子でそんな事態になることは無いだろうが……。


「あれが……大樹かぁ」


群生する木々の海の中、他の樹木より圧倒的な大きさの巨木〝エターナル・ツリー〟がここからでも見えてその存在感にショコラは感慨深く呟く。

目印となる大樹が見えていれば少なくとも行き先の道標にはなってくれるので、ありがたいと言えばありがたい。

ただ、ジャングルの中には多種多様なモンスターが蠢いてるだけでなく詳細不明な部族〝ジェロディア〟に加えて暫く前から多数の傭兵達がここに来ているらしいというのも聞いているのでレオリアの心中には不安があった。


わざわざ傭兵をここに集めた理由は分からないが、常に警戒はしておくべきだろう……特に危険度ではある意味下手なモンスターより高いダグラスも居るらしいのだから余計にだ。



「よし、それじゃあ今からここに踏み居るわけなんだが事前に約束した通り、不測の事態が起きた場合の対応は周知してるよな二人とも?」

「もちろん、バッチリ分かってるよ。まず何よりも身の安全を優先した行動を取れ、だよね」

「戦闘になった時の援護もばっちし任しといて~」

「オーケー、それじゃあ……行くとするか」



意を決して、ショコラ達はジャングルにへと入る。目指すは二つ目のクリスタルがあるという大樹だ。




◇ ◇ ◇ ◇




ジャングルに入ってからは時折、木々の上に登って大樹の位置方向を確認して、帰る際の目印に等間隔で木の幹にナイフなどで傷をつけながら一行は進んでいく。生い茂った木々や草花で歩きにくい中で、時々モンスターの襲撃がありながらもそれらを撃退しながら三人ともに難なく歩いていく。




「……ふっ!」



重い手甲を着けてるとは思えない素早い裏拳の一撃。それはレオリアの背後から忍び寄って来ていた爬虫類系のモンスターの頭部にクリーンヒットし、骨が砕ける音を鳴らしてそのモンスターは呻きすら上げる間もなく地に沈んだ。

文字通りの瞬殺であり、手甲に付いた血糊を払うレオリアにショコラ達が称賛する。


「流石はレオリアだね~、一辺の無駄ない動きだったわ~」

「ほんとほんと、キリッとした顔も合わせて超かっこよかったよ♪」

「お、おう、ありがとな」


ショコラの言葉に珍しく照れたような様子である。可愛いとか綺麗とかは頻繁に言われるがカッコいいとは滅多に言われないので慣れていないらしい。

その反応がショコラの何かしらに触れたようで、それから何度もカッコいいカッコいいと連呼されてレオリアは気恥ずかしくなる。


「今、私はレオくんの新しい魅力に気づいたよ。可愛いとカッコいいを両立させてるレオくんはもう人類の至宝だね、ほんと惚れ惚れしちゃうなぁ」

「も、もうそんな褒めんなってば……おだてても何も出やしねーし、うれ、嬉しくもねーんだってのっ」


そう言ってるが顔には隠しきれてない嬉しさの照れ笑いが出てしまってる。頬を染めてる姿は恋煩いしている少女のような可憐さで、ショコラもそれを見たいが為に言ってる節がある……そのように照れながらも死角から忍び寄ってきたモンスターを見もせずに的確な正拳突きをぶち当てて仕留めており、一部始終を見ていたエルフォルトは頼もしさと空恐ろしいものを感じていた。


もちろん、レオリアだけに任せておらずショコラは時にはナイフを投擲しての援護をしたり、エルフォルトは風魔法を使った真空波による飛ぶ斬撃で近づかれる前に攻撃をしたりなどした(エルフォルト的には火力のある魔法でバーッとやりたい気があったが森の中なので流石に自制した)



ーーそれから暫くは、適度に大樹の位置を確認して時折現れるモンスターを倒しながら進み、体感で三時間ほどは経ったところで小休止することとなった。

周囲に気を配りながらも持参してきた携行食を各々で食べつつ、束の間の休息に身を休める。


「はむ、むぐむぐ……それにしても惜しいね」

「惜しいって何が?」

「いやね、こういう場所じゃなかったらいいピクニック気分にでも浸れたのにな~って」

「あ~、それは同感~。自然に囲まれた中でゆったり食事すんのも乙ってもんだよね~」


干し肉をかじりながらエルフォルトが同意する。確かに自然に溢れた場所で飲食を楽しむのはいい療養にもなるだろう、ここは自然が溢れすぎともいえようがモンスターとかが生息してなければそれなりに良かっただろう。


「そういうもんか? 俺はどこで飯食っても同じだと思うけど」

「え~、そんなことないよ。例えばさ、威風堂々と聳える絶景の山々を見ながらとか景観溢れる滝壺を眺めながらとか、こう、何ていうかテンションとか気分が上がるでしょ?」

「んー、分かるような分かんねーような……」


ショコラが熱く力説して見せるが、レオリアはいまひとつ理解しきれてないように思われた。ここはやはり男と女とで感性が違う故のせいだろうか、ショコラは共感できなかったことを残念がるがその内にそういうゆとりを教えてあげようと考える。


「ところでさ~、そこそこ歩いたと思うけど大樹までどれぐらい掛かりそう~?」

「んー、一応まっすぐ進めてるとは思うんだけどな。でかすぎて遠近感がいまいち分かんねーんだよなあれ」

「歩いてる以上は近づいてる筈だけどね」


ジャングルを歩いてるとはいえ、目標物が大きいのでこまめに確認をしておけば見失うということはないがサイズ差がありすぎる為にどこまで近づけてるのかが曖昧にしか分からないのだ。

とりあえず着実には大樹にへと向かっているだろうが、どのくらいの距離なのか分からないのは精神的に地味に来るものがある。


「まぁまぁ、歩いてればその内に着くよね~。気長に気楽に行きますか~」

「ほんと、ピクニック気分だなお前……言っとくが、モンスターは問題なく対処できてっけどあんまり気を抜くなよ。メルギブが言ってた話じゃ、傭兵が何人かこのジャングルに来てるそうだし、何が目的か分かんねーけど対人戦闘する心構えはしろよ」

「え、その傭兵達が私達を襲ってくるかもってこと?」

「あくまでも可能性のひとつぐらいだけどな……目的が不鮮明だからあり得るかもってレベルだけど、取り越し苦労になったとしても警戒はしておくべきだろ」



元々、ここはモンスターが多数生息してるのだからどのみち散策中には気を張っておくことには変わりないのでそれには異論はなかった。

こうしてまだ見ぬ未開の部族や傭兵達の存在を気に掛けつつも、散発的に襲撃してくるモンスターとの戦闘は問題なく、日が沈み掛けた頃合いでその日はジャングルで一夜を過ごすこととなった。




ーーそして、二日目に移動を再開したその日にショコラ達は異様な光景を目にするのだった。







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