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エンシェント・ロマンズ  作者: スイッチ&ボーイ
第一幕 猫と美少年と伝説と
21/26

ショコラの成長?





神殿での戦いの後、ショコラ達はフラノイズ村に寄り村長のラクヨウにモンスターは退治したという報告をした。

とは言え、流石に未知の昆虫モンスターが居たなどと話すのは余計な不安を煽りかねないのでただのモンスターということにしておいたが。


『いやぁ、助かりましたぞ。あの神殿から出てこなかったとは言え、得体の知れぬモンスターが居るというのは精神にも悪いですからなぁ……いや実に感謝いたしますじゃ、ぜひとも謝礼の方は弾ませていただき……え? 謝礼などは必要ないと? おぉ、まさかそのような善意溢れる言葉を聞こうとは長生きはするものですじゃなぁ、ほっほっほっ』


……最初の時のように返事を聞かないで自己完結させる会話にはもう誰も突っ込む気が起きなかった。

まぁ、もしクリスタル関連で居たとするならばこうして持ってきた以上はもうあの神殿に類似したモンスターが出ることは無いだろう……その代わりに自分達の方に危険が及ばなければいいがとクリスタルを手に入れてご機嫌なショコラとは反対にレオリアはそう秘かに心配していた。


「ところでさ~、フランクリンさんに報告してからの後はどこに行くつもり~? 二つ目以降のクリスタルの場所とかまた調べてもらうとか~?」

「ふっふっふ、それには及ばないよ。さっき、巻物スクロールを見てた時に気付いたんだけどね……ほら、この部分を見てごらんよ」

「これは、新しい絵が増えてるよな? いつ出たんだこんなの」

「たぶんだけど、クリスタルが石から変わった時のあの光が関係してると思うんだ。その前までは無かったしね」


ショコラが自信たっぷりに巻物スクロールの中を開けて見せたところには、最初にクリスタルの図柄が描かれてたところに付け足されたように新たな図が浮かび上がるように現れていた。


それには巨木のような図の中にクリスタルが収められてるような構図があり、どうやら二つ目のクリスタルはこの巨木とみられるものの中にありそうだが、例によって地名などに関する記述はあの古代語で書かれていてこちらでは読み解けなかった。


「相変わらず、不親切な巻物スクロールね~。あたしらでも読める文字にしといてほしいわ~」

「確かにな、新しいのが出てくる度にフランクリンさんに解読してもらうのも手間が掛かるし。この際、あの人に読み方ぐらいは習っとくか?」

「え、二人とも読めないのこれ?」

「「ん?」」


古代語の読み方に二人があれこれ言ってると、ショコラが意外そうな顔をして文字が読めてないことに驚いてるようだった。

この文字は当然二人には読めないし、ショコラとてそれは同じだった筈である。だからこそこの国に住んでいるフランクリンの元にまで出張ってきた訳なのだが……聞いてみると、浮かび上がったこの文字をショコラは読むことが出来たらしい。


本人は見慣れない文字が読めたことに戸惑ったが、自分が読めたのだから古代語でなく、現在使われている文字の一種かと勘違いしたようだ。もちろん、レオリアもエルフォルトもその新しく浮かんだ文字は読めなかった。


「なんで読めるんだよ、最初に会った時から読めない読めないって嘆いてたじゃねぇか」

「いや私も分からないよ……はっ! これは、もしかしなくても遂にアレが来た予兆なのかもしれないよっ!」

「予兆ってなにが~?」

「冒険の末に秘められた才能が開花するっていうお約束イベントだよっ! やった、やったよ、苦節幾ヶ月の末に私は成長できたんだよ、いやっふーーっ♪」

「お約束イベントとは何だよっ!?」


ツッコミを入れるが、浮かれてるショコラには聞こえてないようで喜びを現すようにクルクルと踊り回っている。

読めるようになったことはまぁ素直に喜んでもいいかもしれないが……例のクリスタルを見つけた直後であるのを考えるとあの時の光が彼女に何かしらの作用を促しでもしたのかと勘ぐり、今のところは元気一杯な様子だが本当に大丈夫だろうかとレオリアは心配していた。



そんな一幕もありつつ、ショコラ達はフランクリンが住むトゥルードゥランにへと帰還したのだった。




◇ ◇ ◇ ◇




「おぉ、ワシの予想は当たっていたのだなっ! いや無駄骨にならずに済んで実に良かったぞ。危険なモンスターにも遭遇したそうだが、君たち全員に大きな怪我も無さそうで安心したわい」


自宅にて、戻ってきたショコラからクリスタルの実物を発見して持ち帰れたことを聞いたフランクリンは手放しに喜んだ。道中でメイジゴーストや正体不明の昆虫モンスターと思われるモノの襲撃を受けたと聞いた時はすぐにショコラ達の身に大きな怪我が出来ていなさそうなのを確認してホッと安堵もした。


「それでこれがそのクリスタルという訳か?」

「うん、何て言うか言葉では言い表せない不思議な魅力があるでしょ。苦労した末に見つけたけど、その労力に見合ったものだよ」

「確かにそうだの……これだけでも相当な価値が付きそうじゃな」


薄く透き通るような水色のクリスタルを手渡されたフランクリンが鑑賞しながらそう言った。宝飾品の鑑定などは門外であるが、素人目で見てもこれはなかなかに値打ちものになりそうなのが分かるぐらいにこのクリスタルは綺麗なものであった。


これが道標となる訳なのだから〝秘宝〟はこれ以上に素晴らしい宝に違いないと確信を深める。


クリスタルをショコラに返し、他に進展のようなものはあったのかと聞くとあの巻物スクロールに新たな図が浮かび上がったというのを聞いた。

その箇所を見せてもらうと、なるほど確かに前に拝見させてもらった時には無かったところに図が出来ている。

魔術の使い手であるエルフォルトの推察によれば、クリスタルを発見するとこれに組まれた術式が発動して次のクリスタルの在処を指し示すようになってるようだ。


「ふむ、なるほど。例によって古代語で書かれておるか、まぁこれの解読ならすぐに済むが……」

「あー、それは必要ないぜフランクリンさん。どういう訳だが、読めるようになったんだよ」

「なぬっ? 読めるようにとは一体どういう訳なのじゃ」

「にゃはは、何て言うかねー、このクリスタルを見つけた後ぐらいにこの文字が読めるようになったんだよ私。秘めてた才能が開花したんじゃないかって思ってるんだけどねー、にゃははは♪」


読めるようになったのが余程嬉しいのか、照れ笑いながら尻尾をぴーんと立てているショコラ。それ自体は確かに喜ぶべきことではある。 


ーーしかし、いくらなんでもそんなことがあるのかと当然ながらフランクリンは疑問符を浮かべており、その疑問をこそっと耳打ちをしたレオリアが解消させた。



(実はな……最初に見つけた時にあのクリスタルは石だったんだけどよ、巻物スクロールが反応して光輝いたあとになったんだ。そん時の光があいつに何らかの影響を与えたかもしれねぇんだ)


(なるほど、悪影響などは?)


(今のところは無さそうなんだけどな……でも、場合によっちゃ俺はクリスタルを探すのを止めさせるつもりだ)



例え、ショコラがあれこれと文句を言ってこようがこれは譲る訳にはいかない。そもそもが、どういう宝なのかよく分かっていないままなのだから危険そうなら諦めさせるつもりだ。

まだ二度ほどしか顔を会わせていないフランクリンだが、ショコラに好印象を抱いてるのもあってレオリアのその考えには素直に賛同した。


「レオくん、先生となに話してるのさ?」

「別に。ちょっとした世間話だよ、それよか次の目的地はどういう場所なのかまだ行ってなかったよな?」

「あ、そうそう。読めたはいいんだけど肝心の場所が分かんないんだよね。先生、浮かんだ文字には〝エターナル・ツリー〟っていうのが書かれてたんだけど聞き覚えとかありますか?」

「〝エターナル・ツリー〟とな?……少し待ってくれ」


さらっと誤魔化して話を変えさせ、ショコラが次の目的地に関する情報をフランクリンに求めた。読めてもその場所が分からなくてはどうしようもないので、ここに来たのは博識である彼の知恵に頼る意味もあったのだ。

数百はある書物から本をいくつか取り出し、それぞれに目を通してから幾ばくかして目的地の詳細が判明した。


「うむ、あったぞ。〝エターナル・ツリー〟の記述が……しかし、これはまたえらい場所にあるのぉ」

「何かマズイ情報でもあんのか?」


顔を険しくさせたので聞いてみると〝エターナル・ツリー〟というのはここターレン王国の最南部に広がる密林地帯の中心に聳え立つという巨樹のことで一説に寄れば樹齢は二千年にも及ぶものらしい。

その地帯は人の手が全く入っていない、文字通りの広大な密林があって多数のモンスターが巣食っているそうなのだが、それだけデカイ大樹ならば目印としては申し分ない……のだが、その地が開拓などされていないのにはある理由があった。


「このジャングルには〝ジェロディア〟という先住民族が住んでるようなのだ。そこが長らく手付かずのままで放置されてるのは自然の険しさとモンスターに加えて、その〝ジェロディア〟が類い稀な戦闘民族なのも関係しておるのだよ」

「戦闘民族って……つまり、国の干渉をはね除けられる程に強い戦士が大勢いるってこと?」

「うむ、これまで交流らしい交流が無いから〝ジェロディア〟に関して詳しいことはこの本にも載っておらんが、何でも開拓の為に国から派遣された武装した兵士を含めて一万人近い集団をあっという間に追い散らしたという記録が残っとる」


あくまで開拓団であるから全員が職業軍人という訳ではないし、地の利などの有利な要素もあったろうがそれでも一万人の人間を追い返したというのはなるほど凄い話だ。部族の総数も何千人も居るとは思えないが、モンスターがひしめく土地に住んでるのだから優秀な戦士は確実に居るだろう。


「でもさ~、別にあたしらはその〝ジェロディア〟ってのに会いに行く訳じゃないし~。本命は〝エターナル・ツリー〟にあるクリスタルなんだから遭遇しないように気を付ければ良いんじゃない~?」

「言うのは簡単だけどな、未開の地ともなれば詳細な地図なんて無いだろうからどの辺りに〝ジェロディア〟が住んでるのか俺らには分からねぇからニアミスで出会っちまう危険はあるだろ。それ以外にもモンスターだって生息してんだし、今度は相当厳しい旅路になるぞ」


本音を言えば、不確定要素が多い今度の旅は出来れば避けたいとも思っているレオリアだが……チラッと横目で見れば、ショコラは行く気満々といった感じであり、それなりに付き合いが長い経験からこのようにテンションが高まったショコラを制止するのは容易ではないと早々に気付く。


また神殿の時のようなことが起こらないかどうか危惧するレオリアを余所に、ショコラは〝エターナル・ツリー〟がある密林地帯への行き方をフランクリンに訪ねてメモまで取っている。

不安要素はあるが、ここまでイキイキとしたショコラの表情を曇らせるのも気が引けたレオリアは自分の仕事は彼女の護衛なのだから、どんな場所に行こうが守りきるのが務めと気合いを入れ直したのだった。






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