6話 判断基準
◆ 6話 判断基準
現代日本人の転生者が現代日本人の倫理観や道徳観を持っているとは限らない。というか、異世界転生して異世界で生きる上でそういうのもあったよね、と切り離すか忘れるのが良い処方箋になる。俺? ここは日本ではありませんが何か?
倫理観や道徳観は価値観にも繋がりやすい。そして価値観は判断基準にも影響を及ぼす。これをするのは良いことであり、美徳である。これをするのは悪いことであり、悪徳である、と思うのは勝手だがその倫理観、道徳観、価値観を元にした判断基準を異世界の判断基準に合わせない、合わせられないのであれば早々に壊れるか死ぬ。
この異世界は医療が発展していない。癒しの魔法を使える者も少ない。当然だが死産も多いし幼い時期の死亡率も高い。三人子供を産んで三人とも一桁の年齢までしか生きれないなんて話はざらにある。逆に五人子供を産んで五人とも健康に育ってしまうとその分食い扶持が減る。よって生まれすぎた子供を口減らしのために捨てたり売ったりすることを是とする価値観、判断基準になる。それは悪いことであると言うのは簡単だ。言われた相手からすればそれなら引き取って育てろ、養育費を寄越せと言うのがあたり前の価値観であり判断基準だ。
お金に余裕かあるから引き取って育てる、養育費を出すと言ったが最後。他の数千、数万世帯の口減らし候補の子供たちの親たちが何故わたしたちの子供を引き取ってくれない、養育費をくれないのだと押し寄せてくるまでにそれほど時間は掛からないだろう。そう、こういった問題は個人レベルでは解決不可能であり、国家の成長、文化、文明の成長を待つしか解決策はない。
どうせ捨てる命をどう利用しようが許される。
スキル帝国南方に大森林地帯がある。その大森林を抜けると亜人連合国があり、亜人と人間は相容れない不仲であり長らく戦争状態にある。といっても小競り合い程度の小さな局地的戦闘が殆どだがそれはそれで軍事費を消費することになる。大森林地帯の広さは相当なもので横に長く日本列島がすっぽり入る程であるが縦の長さは徒歩3日ほどである。舗装されていない道だが馬を使えば1日程度で大森林地帯を抜けれる。そんな広大な大森林地帯の防衛は困難を極める。基本的に大森林地帯から抜けたところで亜人たちを迎え撃つのがセオリーだが横に長く、どこから抜けてくるか分からないため巡回するにしても莫大な人員と資源を使うことになる。
はるか昔から戦争を繰り返してきたので要所には砦や古城などといった軍事拠点が点々とあるがその全ての軍事拠点に人員を導入するのは現実的ではない。よっていくつかの拠点はわざと空にしてあり、奪われたら奪い返す程度の戦を何年も繰り返している。
軍事拠点を奪われても拠点として運用するには、人員、武器、食糧などといった補給を続けて戦線を維持、そして拡大といった段階がある。帝国は拡大前に叩いて追い出す戦略を取っており連合国は少数精鋭で拠点数箇所を同時に制圧して戦果の拡大を狙う戦略を取っている。
そんなシーソーゲームに終止符を打つ。
亜人連合国の嫌がらせなんとかならね? という依頼だ。
やったことは単純明快。口減らしで死ぬ予定の子供たち、死んだ子供たちを使い大量のアンデッドを大森林地帯に大量投入。元手のかからない物量作戦だ。アンデッドたちは大森林地帯から出られないよう縛りをかけており、帝国領土には入れないが、亜人連合国領土には進出可能としてある。アンデッドは放置しておくとアンデッドを呼ぶ。リッチ、エルダーリッチなど上位アンデッドが発生する土壌は作ってあるしなんならエルダーリッチたちを支配するためのエンペラーリッチを召喚してあるので数週間で大森林地帯はアンデッドたちが闊歩する死の森となるだろう。死の軍勢が亜人連合国を壊滅させるか大打撃を与えた後にスキル教会の救いの手が差し伸べられるのだ。
ん? そんな回りくどいことせずにもっと直接的に滅ぼせるだろうって? なんて慈悲の無いやつだ。
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