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縁をもらって東へ西へ  作者: 赤雪トナ
62/224

62 無事成功

「来たのか。ちょうど調整が終わって呼びにいくところじゃった。集まるまで少し待ってくれ」


 ファロント爺さんはそう言うと、兵に声をかけて宿までひとっ走りしてもらう。

 魔法陣は少し変化していた。でもどこが違うかというと明確にいえない程度の変化だ。

 二十分ほどで全員が集まって、説明が行われる。


「一度試しにやってみて、問題なければ明日本番という流れになる。これから陣に立ってもらうが、リョウジは陣の中心に、四人は四方向に立つ。先に四人に魔法を使ってもらって、リョウジはその後に増幅させてくれ」


 なにか質問はあるかとファロント爺さんが聞き、誰からも質問がでなかったことで準備が始まる。

 昨日は俺のそばにシャーレがいたが、陣の中心だと邪魔になるということで、ダイオンのそばで俺を見守っている。


「それじゃまた俺が合図を出すぞ」


 そう言ってフーイン様はファロント爺さんに始めてもいいか確認し、頷きを見て「いくぞー」と声をかけたあと手を叩く。

 加護持ち四人が魔法を使う。問題なく発動した魔法によって、風が次に向かう予定地へと吹いていく。


「ヴィント。あと吹きて、さらなる風よ、強くあれ」


 俺も魔法を発動させる。すると吹いていた風は強めになる。四人の魔法を邪魔して風を止めることがないから成功だな。

 研究者たちも吹き続ける風を見て頷いた。


「明日、いよいよ本番だ! 陣をきちんと整備するぞ!」

「おー!」


 研究者とその手伝いの兵が早速作業に移る。

 フーイン様はそれを見てからこっちに声をかけてくる。


「五人ともお疲れさん。今日やることは終わりだ。宿に戻っていいぞ」


 宿に戻る前に俺たち三人は預けた薬の鑑定結果を知るため寄り道する。


「いらっしゃい。ああ、あんたたちか。結果出てるよ」

「どうもー」


 鑑定結果の書かれた紙と作ったものを受け取って店を出る。

 作ったものがどんな評価になっているのか気になるのか、シャーレがちらちらと俺の持つ畳まれた紙を見ている。

 その気持ちはわかる。俺も気になるしな。

 宿の部屋で、武装を解いて、普段着になり、椅子に座ってテーブルに置いた紙を広げる。

 隣に椅子を持ってきたシャーレが覗き込むように見てきた。ダイオンは剣の手入れをしつつ、こっちを見ている。

 ポーションのできは良いものと判断された。低品質品の中では上の中だと書かれている。粉薬の方は丁寧に作られていて感心するが、できは並みより少し上だそうだ。

 どちらも丁寧な仕事を心がけて、この差。どういった違いがあるか考えて、魔法かなと思う。


「上質な霊水と加護持ちが使った魔法でポーションの方は評価が加算されたってことかな?」

「そうだと思います。そこを抜いたポーションの評価は中の上か、上になんとか届くくらいでしょうか」

「初めて作ったもので、この評価は十分だな。あとは水温を細かく管理して薬草から成分の抽出をしやすくしたり、使う材料の分量をきっちりと量ってたりして、上の上に届くって感じかな」


 もらった本にはそこまで書いてなかったけど、注意すべき点はそこらへんだと思う。あとは道具にこだわるってのもありか。今回使ったものは誰でも買える量産品。良い道具を買ったらそれだけで良い物が作れるわけじゃないだろうけど、質の向上には確かに役立つだろう。


「何度もやって慣れることも質の向上に繋がると思います」

「そういったことも大事だろうね。作る速さも上がるだろうし」


 次に生かすため、あれこれと話す。

 評価のほかには、二つの薬の使用期限について書かれていて、ポーションは常温保存で五日目から効果が薄れて来て、十日でただの色のついた水になる。低温保存ならば、もっと長く一ヶ月ほど。粉薬の方は湿気にさえ気を付ければ一年くらいは余裕で保存がきくようだ。

 最後に注意書きとして、これらの薬を使用した際、痒み痛み腫れ咳そのようなものが出てきたら薬に使った薬草が体質に合わないので、使用をすぐにやめるようにと書かれていた。

 薬草でもアレルギー反応とかでるんだなー。体の中に入れるものだし、これはよく覚えておく必要がありそうだ。一度飲んでみて、拒否反応がでないか試しておくのもよさそうだ。


「使うのはこの三人だけだし、今少しずつ飲んでおこうか。少しだけなら体に合わなくても異常も少なくてすむだろ」

「一度に全部種類飲みますか?」

「それやると、どの薬で異常が出たかわからないし、薬の効果が体内でおかしな反応を起こすかもしれないから、一種類だけでやめとこう」

「わかりました」


 ダイオンにもそれでいいか聞くと、頷きが返ってくる。

 早速、粉薬から飲むことにして、少しずつわけて飲む……にっがいな! 渋さとえぐみのマリアージュとでもいうべきか。眠気覚ましにもなりそうだ。そしてシャーレが少し涙目で吐き出したそうな顔になっている。

 口直しにドライフルーツを取り出して、シャーレに渡すとすぐに水を飲んでドライフルーツを口に放り込んだ。


「病気にならない方がいいし、この苦さをまた味わいたくないから体調には気を付けることにしよう」

「そうですね!」


 力強く賛同したシャーレにダイオンが小さく笑い声を漏らした。

 そんな感じで過ごし夕食の時間がきて、昨日食べたかったシイタケステーキを味わう。バターのコクとシイタケの旨味があわさって美味かったけど醤油があればもっと美味かったはず。

 夕食後ダイオンはまた兵たちと遊ぶようで食堂に残り、俺とシャーレもシェーゾンたちとゲームをして過ごす。

 今日もダイオンは俺たちが寝た後に戻ってきたようだった。


 翌日、朝食と支度をすませて、魔法陣に向かう。

 丘の上では、騎士や兵が緊張した表情で周囲を警戒していた。空を飛べる者は丘の周辺まで警戒範囲を広げている。

 なんであんなにと考えて、また残党がやってくることを警戒しているのかとすぐに思い至る。神守の森を出たあとからここまで残党も反体制派も動きを見せなかったから、脳内から彼らのことが消えかけてたわ。気を抜きすぎだろうか?

 少しピリピリとした雰囲気にのまれ、俺たちも静かに開始を待つ。

 研究者たちの最終確認が終わり、フーイン様に準備完了を伝える。


「さあ、いよいよ開始だ。加護持ちたちは所定の位置についてくれ」


 頑張ってくださいと言ってくるシャーレに頷きを返して、陣の中央に立つ。

 俺たちが陣に立ち、開始を待っているとファロント爺さんが声をかけてくる。

 

「昨日やったとおりにやればいい。あれで問題ないからの」

「注意すべきことはあるか?」


 フーイン様が念のためといった感じで聞く。

 それにファロント爺さんは少し考えて口を開く。


「魔法発動後は昨日よりも強い風が吹くだろうから、加護持ちたちは転ばないように。リョウジが増幅の魔法を使うまではしっかりと魔法を維持してほしい」

「ということだ。ではこれまでと同じように合図を出すぞ。いいか?」


 俺たちはフーイン様に頷く。

 フーイン様が「いくぞ」と言ったあと、パンッと手を叩く。

 俺を囲む四人が魔法を発動する。たしかに昨日よりも風が強い、体が少し押された。

 増幅の魔法を使ったらこれよりも強くなるのか、気をつけておこう。


「ヴィント。あと吹きて、さらなる風よ、強くあれ!」


 吹いている風に俺の魔法が混ざる。とたんに木々が大きく揺れて台風一歩手前といった風が吹き始めた。この風の影響なのか、雲も風が吹く方向へと流れている。

 体格の小さなシャーレとシェーゾンが体勢を崩しかけた。特にシャーレはスカートを押さえるのと風に耐えるのとで大変そうだ。


「どうだ?」


 フーイン様が風に負けないよう大声でファロント爺さんに成否を尋ね、研究者たちはすぐに魔法陣や風そのものを調べ出す。そして三分もせずに成功だと示した。

 俺たち加護持ち組は安堵の溜息を吐いて陣から出る。

 風に耐えているシャーレを支えるためそばに行き、風に対する壁になると礼を言ってくる。


「撤収だ!」


 フーイン様の号令で、魔法陣作りに使った道具などを兵たちが回収していく。

 すぐに作業はすんで全員で丘を降りる。遮蔽物のある丘の下だと風は少し弱くなっていた。

 

「そういえば魔法陣は放置なのかな? 今後あそこに見張りの兵とか置くんだろうか」

「おかないぞ」


 近くを歩いていたフーイン様が答えてくれた。


「あの魔法陣は本格始動した時点で、あそこに刻まれるらしい。だから白線を消しても魔法が止まることはないと説明を受けている。魔法が止まるのはだいたい半年後だそうだ。増幅の魔法を使ったからもう少し伸びるかもしれん」

「各地で魔法を発動してまわるのに、スムーズにいって三ヶ月って話でしたっけ。だいぶ余裕をもって効果が維持されるんですね」

「道中どんなトラブルが起こるかわからないから、余裕をもっておいた方がいいと考え、そうしたそうだ」

「トラブルといえば、今回は邪魔が入りませんでしたね」


 そう言うとフーイン様は安堵した表情で頷いた。


「ああ、よかったよ。魔法の使用場所はできるかぎり秘密にしたからな。これでばれていたら陛下にすごく近い人間が情報を漏らしたことになる。身内といっていい人間を処罰せずにすんでよかった。といっても情報は漏れていて、準備が整っていないから邪魔が入らなかっただけという可能性もある。今後も油断はできんよ」

「最後まできっちりとやりとげてやっと気を抜けるのですね。大変だなぁ」


 魔法を使うだけでいいこっちは気楽でいい。

 フーイン様は首を横に振って、魔法陣の方を見る。


「国の平穏のためだ、なんてことはないさ。たまには休んで気を抜くつもりでもいるけどな」

「気を張り続けるのも大変でしょうし、それがいいですね」


 町に戻り、その日は慰労会として宴が催される。

 そして翌日の午前中に出発の準備を整えて、午後から次の魔法使用場所へと出発する。

 丘を出発点とした風はいつまでも追い風のように吹いている。

 俺たちを押すこの風のように、この国家計画も追い風が吹いてスムーズに進んでほしいもんだ。

感想と誤字指摘ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[気になる点] フーインがおもいっきりフラグを立てて、、、、。
[一言] 自転車で追い風(風向が安定した風)だと楽でいいんですよね。 台風などの強風だとちょっとヤバイ速度まで加速しちゃいますが。「角を曲がれないよ!」 【妄想】 ……その後、常に嵐のような強風が…
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