表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/183

49

 4/20


 世界にモンスターが出現し始めてから11日目。


 如月春人は、同級生とダンジョンに来ていた。

 参加者は、全員新人族である。



 始まりは、4月15日早朝、友人から来たラインだった。


 何でも、彼らが避難生活を送っている場所では、最近風邪が流行し始めたようで、もしかしたら春人が薬を持っているのではと。さらに、春人も新人族ではないのかと。


 だが、春人が薬を持っているわけがない。当時、症状の軽かった春人は、市販薬を内服して治ってしまったのだから。

 だから、春人に出来る事は、俺の場合は○○製薬の○○○を内服してたら治ってた、としか答えられなかった。

 春人も兄と同様、新人族である事を教えた。まあ、相手も分かってて確認の意味で問うているのだと、春人には分かっていたからだ。



 それから翌日の4月16日。


 数日前、兄の薫がSNSに上げた情報を知った友人が、春人に再度ラインを送ってきた。

 内容は、()()ウイルスに効く薬を持ってないか? 若しくは、付けで販売してくれないかと。もしも、あのウイルスに罹患しているのなら、治ってから春人と一緒にダンジョンを冒険して、必ず利子を付けて返すと。


 迷宮化防止結界については、問いただしてこなかったし、春人を責める言葉もなった。そのことについては、薫の例を知っているので、友人の反応をうれしく思った。


 しかし、あのウイルスに効く薬と問われても、春人にはどれが効果的なのか分らないのだ。そもそも、効きそうな感じの薬に心当たりはあるが、本当に効果があるのか判らないからだ。


 そこで春人は、頼りになる兄の薫に相談した。

 薫の返答は、もうしばらく待てだった。春人は薫の言葉を信じて待つことにした。



 そして今日、4月20日。


 あのウイルスに罹患して、治った者が新人族になる。


 期待と不安を抱えた顔色の悪い友人たち18名が、春人の条件を受け入れ如月家を訪れた。

 条件は、新人族になった者は、なれなかった者の治療費も肩代わりすることだ。2度目はやらないので、新しく新人族になれた者に頼ること。育成期間は8日間で、ダンジョン内で動画の記録をして投稿することに了承すること。と、3つの条件を出したのだ。


 今回の治療費用は、1人8000SPとして18名で合計144,000SPだ。勿論、本来の価格で計算しているので、実際はもっと安く済む。


 春人は、今までみんなの力にならなかった事に対して、頭を下げて謝罪した。しかし、友人たちは怒るどころか、今回春人が協力してくれることに感謝していると言って、逆に春人を励ました。

 厳しい条件を付けた自分に対する友人たちの温かい言葉に、春人は鼻の奥がツンとなり目頭を押さえ暫し俯いた。



 まず最初に、春人は400SPの万病薬(微)を全員に与えてみた。それで治ったのは3分の2の12名。残念ながら、普通の風邪であったようだ。症状が回復した者は、とても悔しがっていたが、このご時世では体調が良くなっただけでも、ラッキーであるといえる。


 春人は、健康になった12名に万病薬(微)を222本与えた。

 春人は、戸惑う彼らに笑みを浮かべてこう告げた。


「そんだけあれば、風邪気味の奴が222人救えるんだ。後はわかんだろ?」


 そこまで言われても、ピンと来たのは2人だけだった。まあ、その2人が正解を口にしたのだから、全員が気付き感謝を述べて帰って行った。


 残り6名は治らなかったので、万病薬(中)を与えた。


 なぜ、万病薬(小)ではなく万病薬(中)なのかは、薫が雫で試していたからだ。


 6名ともあのウイルスに罹患していたようで、全員が新人族になっていた。春人は、6名中新人族になるのは2~3名くらいだと思っていたのだが、予想以上だった。

 結果的に、6名が他12名の薬代も負担する事に決まった。1人当たり24,000SPだ。


 春人が実際に消費したのは、14,400SP。

 つまり、万病薬(微)222本は差額分であり、129,600SPが春人の儲けである。

 たとえ友人であっても、否、友人だからこそ、金銭に関する事で貸し借りはするなと、薫だけでなく両親にも言われた春人は、アドバイス通りに従った。


 少なくとも、騙されたとかケチなど、文句を付ける相手とは今後係わる必要はない。その見極めができるのだから、良い機会だと両親は喜んでいたりする。



 加藤かとう大輔だいすけ川畑かわばたしおり、田中たなか智一ともかず永井ながい俊樹としきの4人は、小学校からの友人だ。

 蓮見はすみ勇気ゆうきは中学1年から、松本まつもとあいは中学2年から知り合った友人である。


 加藤の職業は、槍士♂。

 名は体を表すとはよく言ったもので、身長は180cm台と背が高く、体格も比較的がっちりしている。見た目とは違って、大人しい性格で本を読むのが好き。


 川畑の職業は、騎士♀。

 名前のしおりからブックマークと呼ばれるようになり、ブクマ呼びが定着してしまった。原因は英語の授業であった。しかし、本人は自分のことをしおりと言い、力ない抵抗をしている。139cmと小柄であるが、本人はこれから大きく育つと豪語している。


 田中の職業は、弓士♂。

 春人の一番の親友であり、カズと呼ばれている。薫とも比較的仲が良い。サッカー部の副キャプテンで、ゴールキーパーを務めている。反射神経がかなり良い。


 永井の職業は、盾士♂。

 ゲーム・パソコン好きのオタク。目が悪いのに眼鏡が嫌いでコンタクトもしないため、目つきが悪く他人に誤解されやすい。なぜか、薫の事を慕っているが接し方が歪な為に、薫から邪険にされる。


 蓮見の職業も、盾士♀。

 母子家庭の一人っ子。父親の影響か、赤い髪で顔が整っている美少女。一人称が僕。体を動かすのが好きで、ダンス(ストリート)を踊るのが趣味。


 松本の職業は、回復士♀。

 身長は170cm台で春人より背が少し低い。お気に入りの髪型はポニーテール。中学3年生とは思えないプロポーションの持ち主で、男女問わず人気がある。好き嫌いをはっきり言うため、敵も多い。



 回復士の松本藍以外は物理職であるが、盾が2人と中距離の槍に遠距離の弓がいるので、それなりだろうと思う春人であった。


 全員が職業に就いた事を確認した春人は、ステータス強化系スキル9種と物理耐性スキルを習得するようアドバイスした。

 ステータスは、レベルが1上昇する毎に1.1倍強化されること。しかし、小数点は切り捨てとなり、1桁だと全く上昇しないことを自分の失敗も交えて説明した。


 物理耐性スキルは、モンスターから受ける物理ダメージを軽減してくれるため、役に立つと。魔法耐性は、魔法を使うモンスターがレアなので、後から習得しても問題ないと付け加えた。


 春人の説明に納得した友人たちは、スキルポイント10Pをすべて使い切った。それでも、数項目1桁のままの者が項垂れる。

 しかし、マナコインを使用すれば、すぐに挽回できる数値だと春人は励ました。そして6人の友人たちには、再度条件を書いた書面にサインをしてもらい、ちゃんと了承を得た春人であった。


 全て薫の指示通りにこなした春人である。春人自身、薫の言った事に納得したからこそである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ