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突如として出現したモンスターによって、遭遇した者は高確率で殺された。
しかし、人が密集している場では、他人を囮にする事によって逃げ延びた者、あるいは、モンスターから隠れて情報を流した者により、ステータス画面を開いた者が現れた。
そう、「ステータスオープン」を口にした者の内、あのウイルスに感染し治った者だ。
残念ながら、モンスターに遭遇した時に、ステータス画面を開くことが出来た者では、スキルもない為にほぼ殺されている。
ステータス画面を開き職業を得て、初めてモンスターと戦う事が可能となるのだ。
戦闘向きではない職業であった場合は、スキルポイントを使用して、戦闘可能なスキルを習得しなければならないが。
しかし、戦えるとはいえ、ステータスは高くて１０～２０の者ばかりで、スキルに恵まれるかモンスターに恵まれるか共闘できる仲間がいるかで、明暗が分かれた。
モンスター討伐に成功した者が上げた動画により、ステータス画面により職業を得てモンスターと戦う事が出来る事が、徐々に世間にも知れ渡り始めた。
そして、ステータス画面を開ける者と開けない者の違いも検証され、あのウイルスに罹患した者だけが開ける事が判明した。
これは、情報社会の恩恵といえよう。
しかし、その情報を正確に早く得られるかどうかは、個人の環境・資質が大きく、１日で社会に浸透するには至っていない。
時は少し遡る
薫が病院でオーク(伯爵)を倒した頃まで。
◇◇◇ 某市立中学校
１限目の授業が終わった休み時間、兄から来たメールに返信した。友人たちとくっちゃべっていると、あっという間に休み時間は終わり、２限目が始まる。
如月春人は、兄からの情報通りに呟いた。
「――ステータスオープン」
すると、あろうことか目の前にライトグリーンで半透明のスクリーンが現れたのだ。
「――ッ」
思わず叫び声を上げそうになった春人であったが、なんとか声を漏らさずに済んだ。
春人は、退院する兄からのメールを、退屈しのぎの悪戯だと思っていたものの、真面目に返信していた。
なにせ、今生の別れになるかもしれない体験を、最近したばかりだったのだから。
内容が荒唐無稽なものでも、無視をして後悔したくないからだ。
だが、兄からの情報は正しかったようだ。
春人は、先程の流し読みしたメールを読み直し、己のステータス画面を見て操作した。
春人は、職業を得られる画面へと移行し、無事に職業を手に入れた。春人のボタンは赤色であったし、薫のような長々とした演出はなかった。
ステータス画面へと戻った春人は、職業が変わっているのを確認し、自身の所持しているスキルを確認した。
さあ、スキルポイント使ってスキルを手に入れようとしたところで、パトカーや消防車や救急車のサイレンが聞こえてきた。
教室内の学生たちの視線が、一斉に窓へと向けられた。時間の経過とともに、窓際へと詰め寄り、外の状況を確認し始める生徒が増える。
そんな中、春人はスキルを手早く習得した。
キサラギ・ハルト（１４）
【種族】 新人族
【Ｌｖ】 １ new
【職業】 魔物使いランク１ new
【状態】 健康
・ＨＰ ４０／４０ new
・ＭＰ ５０／５０ new
・腕力 １５ new
・頑丈 １５ new
・器用 ９ new
・俊敏 ９ new
・賢力 ２０ new
・精神力 ２０ new
・運 １５ new
【スキル】
・鞭術レベル１ new
・魔物調教レベル１ new
・手加減レベル１ new
・従魔召喚レベル１ new
・ＨＰ上昇レベル１ new
・ＭＰ上昇レベル１ new
・腕力上昇レベル１ new
・頑丈上昇レベル１ new
・賢力上昇レベル１ new
・精神力上昇レベル１ new
・運上昇レベル１ new
【固有スキル】
・魔物魅了レベル１ new
【所有スキルポイント】 ３Ｐ new
ステータス画面で、習得したスキルが機能している事を確認した春人は、満足気に頷いた。
春人は、ステータス強化系スキルをすべて取るか悩んだが、器用と俊敏を外すことにした。
本当は、腕力も頑丈も外すつもりだったが、攻撃力が足りない場合を考え、習得することにした。
（新人族って。実感ないけど、俺って人間から進化したのかな？）
春人は、クラスの連中や友達に、情報を伝えようかとも思ったが、今は兄の指示に従い秘匿することにした。
その後、授業は行われず、全校生徒は集団下校となり、明日の予定は後ほど連絡メールで報せがくる事になった。
下校途中、兄から送られてきた新情報である”外にいればモンスターに襲われない”を、友達にだけ送信しておいた。
