エピローグ 【武器を破壊する者】
~ゼェェンカイッノアラスジィィ!!~
ユグドラシル「僕と契約して、ウェポンクラッシャーになってよ!! 」
以上です。
では、最終話をどうぞお楽しみ下さい!
「一体いつになれば“外の世界”に出られるのだろうか……」
彼は外の世界に出る為の“扉”を探している。
神の開発者である満木幸太郎の子孫、幸介の居る場所なら扉がある、もしくは幸介を担ぎ上げたら神が開けてくれると思って行動していたのだが……
「“あいつ”の話は嘘だったのかねぇ……」
彼の名前は秋本和彦。元々満木一族の存在する場所と同じ“世界”で生まれ、幸せに暮らしていた。
だがそんな彼にも唯一幸せでは無かった点がある。
和彦1人だけがずっと違和感を感じていたのである。空や山、川や遠くの景色。果てには夜空にまで。世界に存在する人以外の全てに違和感を感じていた。
“何が”と聞かれると断言は出来なかった。だがずっと世界に違和感を感じて過ごしていたのだ。何とも分からないが常に付きまとう、不気味な違和感を。
そうして常に違和感を感じながらも時は過ぎ……気が付けば和彦は初老と呼ばれる頃合いの年齢になった。
違和感を感じること以外は充実した日々を送る和彦だったが、ある日たまたま裏路地に迷い込んでしまった。
どうにか大通りに出ようにも曲がり角や細い路地は和彦の視界を惑わし、どんどん奥へと追いやった。
『参ったな……行き止まりか。するとさっきの曲がり角は反対に進むのが正解だったのか……それとも直進するべきだったのか……』
行き止まりにたどり着き、引き返そうとした時。
和彦は“あの女”に会った。
『ねぇ、“月”って知ってるかい? 』
裏路地で道に迷っている和彦に声をかけてきたのは黒いドレスを着た少女だった。
彼女は和彦に様々な事を教えた。
違和感の正体や神と呼んでいた者の正体。それに対抗する為の武器の設計図や外の世界の美しさも教えられた。
和彦が銃の設計図が保存されたメモりを弄びながら名も知らない少女の言葉を疑いながら出会った当初の事を思い出していると、部下が慌てた様子で部屋に入ってきた。
「秋本司令! 第四武器庫が襲撃されました! 」
「何だと……? またかッ!! 」
秋本は慌てて外に出て第四倉庫へと向かった
中にあった武器類は全て破壊され、煙の立ちこめる空を飛ぶロボットを見つけた。
武器庫の破壊に満足したのか、“奴”は空の彼方に去って行った……
「神……いや、ユグドラシルの差し金か……」
秋本が頭を抱えているとその背後から横田利秋が現れ、秋本に声をかけてきた。
「満木の家族をもう少し丁寧に処分しておけば補足されなかったかもしれませんね。あの無能暗殺者め……」
「そうは言ったところで今は変わらんさ。それに……満木幸介の死因は“作戦中の不慮の事故”、その家族の死因は“謎の爆発事故”だろ? 」
「それもそうでしたね……」
煙の立ちこめる武器庫の再建に向け、横田は頭を回していく。
その様子を見た秋本はここの事をいつも通り横田に任せ、空を見た。その視線の先にいた“ユグドラシルの手先”がこちらを見た……気がした。
だがそいつもすぐに背を向けどこかに飛んでいった……
__________
『僕と契約して、ウェポンクラッシャーになってよ!』
多少の俺はこの提案に乗った。
他に特にすることもないから……と言うのは建て前。
本当は家族に会えるかもしれないと思ったからだ。
演習の時、何度か安否をユグドラシルに聞いたのだが分からないと言う答えが帰ってきた。
こうして俺はいくつかの世界を渡り歩き、数多くの武器の破壊と人々の暮らしを覗いてきた。
ユグドラシルの指示で俺が武器を破壊しに行く世界は基本的に神……ユグドラシルが人の手により破壊された世界だ。
ユグドラシルを破壊した世界の人々は、持て余した武力で人を支配しようとする。
ユグドラシルはそこ自体はどうでもいいと思っていた。だがそれによって死人が出る事を良く思っていないらしい。
だから俺を“ウェポンクラッシャー”にしたらしいのだが……
「ところでさ……なんで俺がウェポンクラッシャーに選ばれたんだ? お前や警備ロボットがやれば良かったんじゃないか? 」
俺は今日も今日迚警備ロボットを斬り、武器庫を破壊して回る。
すっかりとこの作業に慣れた俺は、ユグドラシルと話をしながらでも破壊活動が出来るようになっていた。
「あぁ、ロボットは融通が利かないので警備の人間や武装した人を過剰に排除しかねないので使えないんですよ」
「なるほどね」
一通り破壊し終え、ここから立ち去ろうとした時。
俺は偶然聞こえてきた聞き覚えのある声の主の“会話”を聞いてしまった。
「神……いや、ユグドラシルの差し金か……」
それは俺が生きていたとき……ブレイズのリーダー時代にスポンサーとしてそれなりに仲が良かった男、秋本和彦の声だった。
「満木の家族をもう少し丁寧に処分しておけば補足されなかったかもしれませんね。あの無能暗殺者め……」
彼らの話している場所からはかなり離れているが高性能な耳はとてもクリアに、その声を拾ってしまった。
「そうは言ったところで今は変わらんさ。それに……満木幸介の死因は“作戦中の不慮の事故”、その家族の死因は“謎の爆発事故”だろ? 」
秋本さんの口から出て来た衝撃的な言葉に俺は思わず立ち止まり、振り返ってしまった。
「それもそうでしたね……」
秋本さんも偶々こちらを見ていて目が合った。だが俺も秋本さんも何をするでもなく、ただただ見つめ合っていた。
しばらくすると動きのない俺を心配したのか、ユグドラシルから通信が入ってきた。
『マスター? 何してるんですか~? 』
「あぁ……すまん。後で聞きたい事があるんだが大丈夫か? 」
『えぇ。大丈夫ですよ』
__________
マスターが武器庫を破壊し終え、この月に帰ってきている頃。
私は本体の中枢に居る“1人の少女”と話していました。
「で? ユグドラシル。答えは見つかったかい? 」
彼女は秋本和彦に色々吹き込んでくれた私の協力者。私の“人が何故人であるのか”と言う問いのヒントを出してくれた人物です。
私は彼女の質問に正直に答えます。
「ええ、見つかりましたよ」
「へぇ~……君の見つけた“答え”はどんな答えだい? 」
彼女は興味深そうな顔をさせ、私の答えを待っています。
「“分からない”と言う答えが分かりました。失望しましたか? 」
私がそう答えると彼女はにっこりと笑いながら私の周りをゆっくりと歩き、再び口を開き始めました。
「いや? 失望はしないさ。これからも頑張りたまえ」
「えぇ、あなたも」
そう言い残すと彼女は虚空に消え、入れ替わるようにマスターがこの部屋に入って来ました。
「どうしました? マスター。随分暗い顔をしていますが……」
「なぁ……ユグドラシル。俺の家族を殺したのは誰だ? 」
……ついにこの時が来ましたか。
気が重いですが……伝えない訳には行きませんよね。
「事故……と見せかけて名も無き暗殺者が殺しました。ですが彼も指示された人間に過ぎません。」
マスターはその人物に心当たりあるんですかね?
顔に手を当てています。
マスターはその状態のまま言葉を発し始めました。
「その人間って……まさか……秋本さんなのか……? 」
「ええ、当たりです。どうやら彼の計画ではあなたを殺してその家族も抹殺……彼は“復讐の輪を作らない為の行為”と言っているらしいですよ? 池浦和之があなたを殺したのは流石に想定外だった様ですが」
マスターはついに膝を地に付け、動かなくなりましたが私は言葉を続けます。
「唆した私が言うのも何ですが……凄まじい執念ですね」
マスターは未だ下を向いています。
「マスターが復讐をしないもするもご自由ですし私は止めません。ですが……私としてはこれからもウェポンクラッシャーの使命を全うしていただけると嬉しいです」
私がここまで喋ってマスターはようやく
「俺は……復讐を……」
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第四武器庫の襲撃から数日。
一般人向けには“兵器開発中の事故”と説明されたその襲撃はブレイズに多大な被害を与えた。
更にユグドラシルの手先、“ウェポンクラッシャー”と呼ばれたロボットは更に追撃を行い、銃などを保管していた武器庫と生産施設、データの全てを徹底的に破壊していった。
更に満木幸介亡き後のブレイズをまとめていた秋本和彦は横田利明と共に失踪し、武力だけでなく司令塔も失ったブレイズは組織としては壊滅した……
彼が復讐をしたのかしていないのかは、読者の皆さん! あなたのフロム脳に任せます!!
ちなみにこのままだと後味が結構悪いのでちょっとしたオマケと設定資料を木曜日までに投稿する予定ですので、まだ完結設定にはしません。
(鳥'ω')< もうちょっとだけ続くんじゃ。
追記
木曜日に投稿出来なくて申し訳ありません! まじめに書いているので……()
ブクマや評価、感想等を頂けると嬉しいです(小声