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出会い



―――2ΧΧΧ年―――


―――メイゲン町―――



「はぁっ...はぁっ...クソッ!クソッ!はぁっ...クソッッ!!」


バケツをひっくり返した様な、どしゃ降りの雨の中

バシャバシャと、地面に溜まった水を跳ね上げながら

悪態をつきながらも、転がる様に、不恰好でも必死に走る男が一人


男は見た目は若く、首が隠れる位の長さの髪は、暫く染めてないのか、地肌から数センチ黒く、それから下は金髪で不良かの様な風貌だ。

喧嘩でもしたのか、転けたのか、それとも、お洒落なのか、服はボロボロで、身体中が傷だらけである。


男は頻繁に後ろを振り向きながら走っていたが、体力が限界だったのか、振り向いた勢いで、大きな水しぶきを上げながら、ド派手に転けてしまった。


「うぐっ...!...はぁっはぁっ...逃げきっ...」


慌てて上半身を起こし、後ろを見た男は、後ろには何も無い事に安堵し、地面に座ったまま、近くの壁に背中を預け、顔に引っ付いて視界を遮る前髪を、両手で顔を覆ってから、指で髪を解かす様に後ろへと掻き上げ、顔を上げ息を整える。


「あ゛ーあ゛ー」

「ひぃっ!くっ...はぁっ...来るなっ!」


男が顔を上げれば、男の目の前に、映画やゲームなどに出て来るゾンビの様な、この世のモノと思えない、奇っ怪な動きをした黒い二足歩行のナニカが、男にゆっくり、着実に、迫って来ている。


男は思わず後退ろうとするも、既に背中が壁にくっ付いている為、これ以上下がる事が出来ず、少しパニックを起こしている様だが、視線のみ金縛りにあったかの様に、嫌でも黒いソレから視線を反らす事なく、瞳は少し潤み始める。


(クソッ!クソッ!!クソッ...!!!何なんだ!俺は...こんな所で...こんな筈じゃっ...!!!

......俺は...死ぬのか?

...こんなダサい形で...?

俺は......俺はっ...!!!)


恐怖故か、最早、声に成らない思いを巡らせ、恐怖に歪んだ顔が、徐々にぶちギレた不良の様な表情に変われば、男は黒いソレを睨み付け、手に力を入れ握り締め、ゆっくり近く黒いソレに対峙するかの様に、男もヨロヨロと壁に手をやり立ち上がり、ファイティングポーズをとる。


「こんな所で......死ねるかぁあああぁぁあああ!!!!!!」


男は、生きる為に、戦う事を選んだ様だ。

渾身の力で黒いソレの顔の様な所を、拳で殴れば、ドカッと、鈍く肉を殴った様な手応えのある音が響く。


「はぁっ...はぁっ...なっ...何でだよ......」


しかし、黒いソレは、よろける事も無く、何事も無かったかの様に奇っ怪な動きで、殴ったままのポーズで固まる男の腕を掴めば、そのままゴミを捨てるかの様に、軽々と奇っ怪な動きで男を投げ飛ばす。


「がはっ......!!!」


地面に叩き付けられた男は、痛みで顔を歪ませ、先ほどの攻撃に力を使い果たし、体もボロボロになり、指すら動かせない様子の男は、相変わらず奇っ怪な動きで近づいて来る黒いソレを、掠れ行く視界で絶望した気持ちで見るしか出来なかった。


(嫌だ...死にたくない...動け...動けっ...!!!)


男は絶望の中でも、生きたいとの本能が諦める事を拒み、気合いとも言える思いのみで、黒いソレを睨み、男は辛うじて意識を保っている様だ。


そんな男を嘲笑うかの様に黒いソレは、もう、男をどうにか出来る程の距離に来ていた。

黒いソレも、男をどうにか出来る事を理解しているのか、男に手を伸ばす。


「やれやれ。近頃の()()()()()は美しく紳士的ではありませんね?」


強い雨音にも負けない通る綺麗な男の声が、この場にそぐわない、のんびりとした口調で聞こえる。

視界が黒いソレで埋められている男には、誰がその言葉を発したのか見えなかったが、誰だ?と、思う間も無く人を殴った様な鈍い音と共に、男の視界が明るくなる。


「さて、紳士とは何たるかを教えて差し上げる時間ですかね?」


謎の男のセリフで、男は、この謎の男が自分から黒いソレを遠ざけてくれた事を理解した。

ソレを裏付ける様に、今、男の視界には謎の男の後ろ姿が映っていた。


「あ゛ーあ゛ぁあ゛っ!!!」


「ふぅ。全くもって美しく紳士的ではありません。レッスンのお時間です。変身です。」


黒いソレが怒りの様な叫びを上げれば、謎の男はやれやれといった声色で、()()した。

男の目の前で、文字通り、変身したのである。


男は、驚愕し、しかし、昔見た特撮のヒーローみたいな後ろ姿、謎の男から変身の際に聞こえたテンションの高い謎の声と音、男は、体の限界か、安堵したからか、驚愕したからか、深く考慮する前に、闇へと身を委ねた。




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