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ゆめのはなし

作者: こしあん子

こんな夢を見た、という書き出しでこの話を始めるとすると夏目漱石は怒るだろうか。

私は元クラスメイトの男子と歩いて(Aくんとする)談笑していた。今日は空が綺麗だ、とか明日の時間割は歴史ばっかりなの、とか全く話の筋が通ってなくて断片的で至極適当な会話だったような気がする。正直あまりおぼえていない。しかし空は真っ黒だったし景色も真っ暗だった。

しばらく歩いた後Aくんが急に前に急に現れた人物を指差して

「あの人だれ?」

と呟いた。

ゼラニウムだよ、とまた脈絡のない言葉。

「あの人だれ?」

Aくんは録音されたテープみたいにそれしか言わなくなった。

「あの人、だれ?」

「Aくん」

前に立っていた人物はAくんだった。

気づくと周りにたくさん人がいてそれらは顔は見えなかったが後姿や動きは私たちと全くおんなじだった。

「あれは?」

「あれは私だよ」

「じゃあ、あれは?」

「あれもAくん」

よくよく考えたらおかしいが、夢ならば仕方ないのだろう。これが俗に言うどっぺるげんがぁってものなのかな、と思った。

そういえば、とAくんは切り出した。おまえ、憑かれてるぞ。

「疲れてる?たしかにこの頃眠くて仕方な…」

「肩。」

ふと肩を見ると半透明のゼリーみたいな小さなAくんが肩に乗っていた。私、憑かれてる。と確信したのをよくおぼえている。

触ろうとしてもぐにゃりと通り抜けてしまう。それどころかむしろAくんゼリーが大きくなって飲み込まれそうになってしまう。きゃ、と軽く悲鳴をあげた。

そのとき、周りにいたAくんやら私がくるり、とこちらを見つめた。

全員虫の顔をしていた。何の虫かはわからない、わからないが無駄に大きい目や細長い口。みんな違う顔。

叫んだ。しかしそれは耳障りな虫の音でしかなかったのだ。

その刹那、Aくんがわたしを食べた。長い長い食道を堕ちる。墜ちた。

そこにはまたAくんがいてこちらをにこにこと見つめていた。ふつうのAくんの顔だった。

「Aくん…!」

あれだれ?とまた同じ声が上から降ってきた。

たくさんのゼリーのAくんと虫の羽音。

遠ざかるAくんの微笑。

そこで目が覚めた。


そうしてわたしはAくんのことが好きなのだな、と寝起きのぼんやりした頭で悟った

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― 新着の感想 ―
[一言] そこまでA君がでてきたら、そうでしょうね〜。 でも夢でもいろいろ怖い感じの場面がたくさんありますね。 虫の顔…とかビクっとするでしょうね。
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