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BUMP OF CHICKEN  作者: サムライ
1/1

崩れる日常

弱者、臆病者、無能・・・この世界でそう呼ばれる者たちには一つの共通点が存在する。

それは、些細な身体的特徴の差であり、それでいてとても大きな「力」の差。

強者と弱者の圧倒的な差。

それすなわち、魔法を行使する際に必ず必要となる「魔紋」の有無。


それは、ある日突然、人々の体に浮き上がったという。

その日こそ、この世界のあり方を決定的に変えた日「終焉」だ。

これは誰でも知っていること。

この世界に生まれたからには・・・。


この「終焉」と呼ばれる大災害は、今から約300年前に起きたといわれている。

そう・・・この日は、史上最大の大災害として記録されている。


「・・・皆も知ってるわよね、じゃあ、鳴鬼君、この日に何が起きたか言ってみて」


「えー・・・」


鳴鬼神ナルキ ジン漢字だけ見れば大層な人間に見えるかもしれないが、いわゆる弱者と呼ばれる者である。


「神だぜ・・・」


「やめなよ・・・」


ジンが立つと周りがザワザワと騒ぎ出す。

その中にはあきらかに馬鹿にするようにクスクスと笑う声も混じっていた。

しかし、ジンは動じない。

もう慣れているのだ。


幼稚園でも、小学校でも、中学校でもそうだった・・・だから、いまジンがいる高校でもそうなるのはわかっていた。

それがジンの当たり前だった。


「おいおい、わかんねぇのか!・・・あ、そうだよな、お前弱者だもんな!」


「神埼君!」


先生が神埼悠斗カンザキ ユウトを咎める。

彼は珍しいAランクの魔紋を授かった、いわば強者。

強者が弱者を馬鹿にするのは普通だとジンは思っていた。


「すいませ~ん」


「「「あはははははは!」」」


いつもの風景。

ユウトがジンをからかい、それを先生が咎め、ユウトがふざけて教室が笑いの渦に包まれる。

そして・・・。


「ちょっと!なにがおもしろいの?・・・鳴鬼君、大丈夫?」


これもいつものこと。

ジンに声をかけた彼女は、一之瀬茜イチノセ アカネ

アカネはユウトと同じくAランクの魔紋を授かった強者にもかかわらず、ジンに優しくする変わり者だ。


「大丈夫、慣れてるから」


「本当に?」


アカネはこの学校で一番の美少女と言われるほど可愛い。

そんなアカネのことが、ジンは嫌いだった。

美少女で強者のアカネが、弱者のジンに優しくすることをおもしろく思わないやつらも、もちろんいる。

そんなやつらが、自分より弱く、そして気に食わない弱者に何をするかは想像に難くないだろう。


「さあ!鳴鬼君!答えてちょうだい!」


先生が笑顔でジンに答えをせかす。


「はい・・・世界に魔物と呼ばれる者たちが出現し、多くの人々を襲いました」


「正解!まあ、これはみんな知ってるわよね!じゃあ、次は魔紋のことについて学びましょう!」


魔紋には種類、属性、ランクが存在する。


「まずは種類についてね!魔紋にはいくつの種類があるでしょう!」


「3つ!」


先生の質問に誰かが勢いよく答える。


「実はね、4つあるの」


「え?3つでしょ?」


「私も3つしかしらない」


「じゃあ、知ってるのを言ってみて」


「攻撃特化型魔紋!」


「回復特化型魔紋!」


「えーと・・・あ!創造特化型魔紋だ!」


「そう!」


3つ上がると、先生はパチンと手をならす。


「あと一つはなんなんですか?」


「終焉の印」


そこでジンが声を出す。

魔紋がないことに悩んだジンはとにかく魔紋について調べまくったから、いろんなことを知っている。


「よく知ってるわね!そう、終焉の印と呼ばれるものがあるの」


「終焉の印?そんなの見たことも聞いたこともないですよ!」


「昔・・・それこそ「終焉」が起こったころは少しだけどいたらしいわ!そのころ、オリジンと呼ばれた彼らは、圧倒的な力を使って魔物を倒し、今の平和な国をつくったの!」


大和皇国と名づけられたその国は、大きな壁に囲まれている。

魔物の進行を阻むその巨大な壁を作ったのがオリジン・・・終焉の印を授かった者たちだというのは、そこそこ有名な話である。


「その終焉の印ってどんな形なの?」


「それは・・・先生も知らないの!」


先生が助けを求めるような視線をジンに送る。

ジンはしぶしぶと言った感じで話し始める。


「終焉の印に決まった形はないらしいですよ・・・ただ、そのすべては現代の手のひらサイズの小さな魔紋とは比べ物にならないほど大きかったみたいです」


「そうなのね!」


「すごい・・・ねえねえ鳴鬼君、どこで知ったの・・・?」


アカネがジンに小声で話しかける。


「本で読んだことがあるんだ」


先生がまた手をパチンとならす。

そして、教科書のページをめくるようにさとす。


「じゃあ、次は属性についてね!」


「それは簡単ですよ!魔紋の中心にある核の色ですよね!」


「そう!ここは説明はいらないわね!詳しく知りたい人は、教科書を見てね!表が載ってるから!」


「「「はーい!」」」


「ランクもとくに説明はいらないかしら?」


「魔法を行使するときの輝きの強さで決まるんですよね!」


「そう!大丈夫そうね!じゃあ、そろそろチャイムがなりそうなので、少し早いですが終わりま~す!周りはまだ授業してるから騒がないように!」


「「「は~い!」」」


「起立!」


先生から目で合図を受けたクラス委員長が声を出す。

ガタガタと椅子をひく音がして、それがなくなるとクラス委員長はまた声を出す。

全員が礼をして、授業の緊張が解けクラスが喧騒に包まれる。

そうするとジンのもとにいつものやつらが近づいてきて、校舎裏や中庭、屋上なんかに呼び出されるのだろう。


・・・いつものことだ。

そう・・・いつもの日常がまた続くと思っていた。


この日常が続くと誰もが信じていた。

だがその「幻想」はたやすく打ち破られた。


ドーン!!!


耳を劈く爆音と、身を焦がす熱風によって・・・。

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