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STAR・BLAZES  作者: 水無月 明
第1章,星の精鋭達
4/21

戦い終わって

◎本時登場の敵:

☆GⅭガジェット・サイバー・ブレイン

★首領・Drガリヴァ。

★ギガスロイド・サイクロプス


 レーダーに異常は無かった。

 よほど高度な光学迷彩能力を兼ね備えているのだろう、鉛色で黒いラインのパラソル型ドーム型の謎の円盤はフェニックスと対峙するかのように浮かんでいた。

「これが奴等の本拠地か」

 船内で残っていたマーカーは目の前の立体モニターに映っている謎の円盤を見て眉間に皺を寄せた。

 状況からロボット達を操っている元凶なのは間違いない、だが優先するべきはその存在の確認だった。

 マーカーは手元のキーボードの隣にある無線機を取った。

「こちら指令室、直ちに目の前の円盤を『テロ・バンク』と照合させろ」

『了解』

 無線機から若い女性の声が聞こえる。

 フェニックスには前線で戦うスター・ブレイズ隊を補佐するサポート・チームが存在する。

 その内の1つが敵のデータや戦場の状況調査してスター・ブレイズ隊に知らせる…… 所謂目と耳の役割を持つ『オペレーター・チーム』と呼ばれる者達だった。

 現在マーカーがいる別の『観戦室』と呼ばれる場所では数人の女性隊員がフェニックスのコンピューターから銀河ネットを経由して銀星系連合軍のスーパー・コンピューターにアクセスし、円盤の情報を調べていた。

 現在シルバー・クレストの6つの惑星には確認されているだけでも2000を超えるテロ組織が暗躍している。

 テロ・バンクとはそれらの総称で、無論中には宇宙船を所有している組織も存在する。

オペレーター・チームが操作しているコンピューターの画面に『Terror・Bank(テロ・バンク)』の文字が映し出されると無数のテロ組織の名前と所有している宇宙船の画像が映し出された。

 検索時間は1分もかからなかっただろう、返ってきた結果を聞いたマーカーは眉間に皺を寄せると画面に映る円盤を見て舌打ちをした。

「……チッ、次から次へと」

 マーカーは顔を顰めた。

 

 全てのロボットを撃破したアレン達は突如頭上に出現した円盤を見上げていた。

 すると円盤の底から一筋の光が発せられると半透明の男が現れた。

 年は30代前半、ゴーグル状の単眼の眼鏡、青いメッシュの入った長い後ろ髪を束ねて右肩に掛け、胸に『GSB』と言う黄金のプレートを付けた白衣に膝まである黒いブーツの男だった。

 本人は円盤の中にいるのだろう、ホログラフの男は辺りを見回すと間を置くとため息交じりに口を開いた。

『何と不甲斐ない、量産型とは言え子供にやられるとは…… まだまだ改良の余地がありそうだ』

 男が喋り出す中、アレンのライセンス・ギアとナイトを装着している各隊員達の通信機にマーカーから連絡が入った。

『お前達、聞こえるか? テロ・バンクに該当が無い…… そいつは新たなテロ組織だ』

「新しいテロ組織?」

 アレンは眉をヒクつかせると男を見た。

 すると男は右手を胸に当てると敬礼するかのように自分の名を明かした。

「これは失礼、自己紹介が遅れましたね…… 私の名はDrガリヴァ、この宇宙を支配する

『ガジェット・サイバー・ブレイン』の首領です」

「宇宙の…… 支配者ぁ?」

「何を言ってる?」

 アレンが尋ねるとガリヴァは鼻で笑いながら言って来た。

『言葉通りですよ…… 宇宙はより優れた者によって支配されるべき、つまり宇宙1の頭脳を持つこの私こそが支配者にふさわしい』

「テメェ、頭大丈夫か?」

 ユウトは顔を顰めた。

 しかしガリヴァはユウトの言葉など聞いてないように話しを進めた。

『貴方達の実力は認めましょう、ですがこの程度で勝ったと思わないでくださいね、本当のゲームはこれからです』

 そう言うとガリヴァは指を鳴らした。

 途端円盤の船底が開いて1体のロボットが降下して来た。

 それは今までのロボットでは無かった。

 2メートルは優に超える黒光りする装甲、キューブ型の両肩には6つの銃口の回転式機関銃が取り付けられ、その下からは3本爪の鉤爪が生えた巨大な2本の腕、それを支える巨大な足のロボットは地面を砕き、轟音を立てながらスター・ブレイズ達の前に立ちふさがった。

『この『サイクロプス』を今までの『ランド・ギガス』と同じと思わない事ですね……、さぁ、サイクロプス、お前の出番だ!』

 ガリヴァが命じるとサイクロプスの全身が鈍い音を立てながら動き出した。

 サイクロプスはアスファルトに深々と足跡を残しながら歩き出した。

 アレンはロボットの進路先を見る、それは自分達の丁度真後ろ、モラウス警備隊の基地だった。

「まずい、基地に近付けちゃ駄目だ!」

「チッ、スクラップ風情が、調子に乗るんじゃねぇ!」

 ジンは両手の『ヘビィ・ナックル』を構えてサイクロプスに突進した。

 するとサイクロプスの両肩の機関銃が回転するとジンに向かって火を噴いた。

 弾丸の雨の中に怯まずに間合いを詰めたジンは勢い良く引いた右腕に渾身の力を込めて一気に突き出した。

 強力な右ストレートが炸裂、分厚い装甲とぶつかり鈍い音を立てた。 

 だがサイクロプスにダメージは無かった。殴られた箇所は傷はおろかへこみすら無かった。

「くっ! うおおぉぉおお―――っ!!」

 ジンは渾身の一撃が効かなかった事に一度舌打ちをする、だがジンは攻撃を止めずに高速の連続パンチを繰り出した。

 それでもサイクロプスはビクともせず、大きな腕を振るうとジンを薙ぎ払った。

「があっ!」

 バットで打たれたボールのようにジンは吹き飛ばされて少し離れた場所にあった建物に激突して壁に大きく穴を開けた。

 目の前の障害が消えたサイクロプスは何事も無かったかのように再び歩き出した。

「野郎っ!」

 ユウトは両手で構えた『ビック・スラッシャー』でサイクロプスに斬りかかった。

 相手の装甲は今まで破壊して来たロボットとはケタが違う、ユウトは関節を狙って刃を振り下ろした。

 上段に構えて一閃! 見事にサイクロプスの右肩から下を切断した…… はずだった。

 関節は僅かに刃の跡を残した物の傷一つ折っていなかった。

「ぐっ!」

 ユウトは顔を歪ませる。

 サイクロプスはジン同様に目の前の敵を薙ぎ払おうと左手を振るうが、ユウトはとっさに足を曲げて背後に跳んで攻撃を交わした。

 だがサイクロプスはそれを読んでいたかのように右手を突き出すと鉤爪部分が変形してバズーカ砲となって火を噴いた。

 砲撃をまともに食らったユウトは爆煙に包まれながら吹き飛ばされた。

「がああっ!」

 ユウトはアスファルトに転がった。

 ナイトを装着しているのでダメージは無い、だが衝撃はユウトの体に伝わっていた。


 2人を倒したサイクロプスは再び動き出した。

 バラバラに戦っていては勝ち目は無い、そう思ったルイスはアイファとサリーに向かって言った。

「2人供手伝って!」

「分かった!」

「了解!」

 アイファとサリーは後ろ腰に手を回すと装着されているライセンス・ギアに手を回すと液晶画面に映っている白い剣のアプリに触れると2人の武器が召喚された。

 サリーは両肩の横に3発と両足に5発の小型ミサイルが搭載された金色の塗装の『ランチャー・ユニット』と両肩に2本の大型で砲身の長い『ツイン・キャノン』を装着。

 アイファは身の丈はあるだろう長い柄の両先端に六角柱の赤い塗装の分銅が取り付けられた昆状の武器『グラビティ・パニッシャー』を手に取った。

「アタシ手伝って来る!」

 アイファは地面を蹴ってサイクロプス目がけて突進した。

「援護するわ、サリーっ!」

「了解」

 2人も数メートル前に出ると得物を構えた。

 ルイスは両手に持っていたレーザー・ライフル『ブラスト・シューター』の銃身に取り付けられているダイヤルを回すとエネルギーを最小チャージに切り変えてサイクロプス目がけて引き金を引いた。

 サリーもナイトのゴーグルが照準めるとツイン・バスターを握りしめると引き金を引くと砲口から強力なエネルギー波が放たれ、ランチャー・パックから無数のミサイルが発射された。

 エネルギーの銃弾と砲撃とミサイルが放たれてアイファを通り過ぎてサイクロプスを攻撃した。

 激しい轟音と供に爆音に包まれるサイクロプス、そこをすかさずアイファが距離を詰めて大ジャンプ、サイクロプスの頭上まで跳ぶと両手で構えたメタル・パニッシャーに全体重を乗せて振り下ろそうとした。

 だがその時、爆煙の中からサイクロプスが飛びだして怯んだアイファに体当たりをした。

「がはぁあっ!」

 サイクロプスの攻撃を食らったアイファは一瞬呼吸が止まり、小さな体をくの字に曲げながら地面に落下した。

 さらにサイクロプスは地面に着地すると今度は右腕が変形して大砲になると両手で遠くにいるルイス達を攻撃した。

 強力なエネルギーがルイス達の足元を粉砕した。

「きゃあああっ!」

「うあああっ!」

 ルイスとサリーは倒れた。


 少し離れた場所ではアレンが仲間達のやられて倒れて行く姿を見ながら剣を持つ右手を強く握りしめた。

「チッ、まだか?」

 アレンは左手でライセンス・ギアを見る。

 モニターには赤い字で『残り10分』と書かれてカウント・ダウンしていた。

「全く、どいつもこいつも不甲斐ありませんわね!」

 そこへリリーナがサイクロプスの背後に立つと狙いを定めた。

「止まりなさい! さもなくば破壊します!」

 しかし止まる事が無かった。

 いや、ロボットに言った所で無理な話だった。

 リリーナは『ルーン・アロー』の魔力の弦を引くと周囲に無数のソフトボール位の稲光を放つ球体が出来あがった。

「ライザーズっ!」

 叫ぶと同時に弦を射ると無数の球体から金色の雷撃の矢がサイクロプスに放たれた。

 しかしリリーナの魔法もまるで通じなかった。

 先ほど破壊したロボットの装甲と違い、まるで雨を弾くかの様に雷の矢の中を歩いていた。

「くっ、まだまだっ!」

 リリーナは舌打ちする。

 それでもリリーナは連発し続けるが効果は無かった。


 一方ルイスは倒れながら無線でリリーナに呼びかけた。

 なぜそこまで手柄を立てたいのかは分からない、だが彼女が冷静じゃ無かったからだ。

『リリーナ、攻撃が効かない以上相手の弱点を探るのが得策よ、一旦攻撃を中断して……』

「貴女は黙ってなさい! こんな鉄人形、アステリアの名にかけて粉々にしてやりますわ!」

 リリーナはルイスの静止を一蹴するとさらに目を鋭く尖らせた。

 途端足元の魔法陣がさらに輝きを増し、リムに書かれた呪文も強く発光すると中央の魔石がはまっているスリングと一体化したグローブ部分魔力が集まり始めた。

 すると今まで見ていただけだったガリヴァは目を細めた。

『アステリア? ……ああ、あのクズ貴族ですか』

 わざとらしくため息交じりに言って来たガリヴァの言葉がリリーナの耳に入った。

 リリーナは眉間に皺を寄せながらガリヴァを睨みつけた。

「な、何ですって? もう一度言ってみなさいっ!」

『何度でも言いますよ、魔法等と言う低次元な物をありがたがる貴族など、クズ以存在以外の何物でもありません…… これなら石槍を持った原始人の方がまだマシですよ』

 ガリヴァは両手を上げながら言い返した。

 明らかに見え透いた挑発だった。

 それは誰もが分かっている、しかし今のリリーナだけは別だった。

 怒りに身を振るわせ眉間に皺を寄せると魔法陣の輝きが不安定になり、ルーン・アローの魔石に蓄えられていた魔力がさらに強力に膨れ上がった。

 それを見たルイスはリリーナに向かって叫んだ。

「リリーナ、聞いちゃ駄目よ!」

『それでもやれるものならばやってみなさい、そんな攻撃じゃ鼠1匹倒せやしない…… 所詮魔法など過去の遺物です!』

「リリーナっ!」

「うあああああっ!」

 最早ルイスの声は届かなかった。

 暴走したリリーナは『強力』などと言う言葉を越えた雷魔法を放った。

 まともに食らえば生身の人間ならば髪の毛1本も残らないだろう、しかし……

『かかりましたね』

 ガリヴァは目を細めると口を三日月形に変えて笑った。

 途端サイクロプスの上半身が180度回転するとあろう事かリリーナの雷撃魔法を受け止めてしまった。

 だが驚くべきはそこでは無かった。

「なっ?」

 その光景にリリーナは目を見開いた。

 何とサイクロプスのボディが雷を吸収し始めたのだった。

 全ての雷撃を吸収し終えたサイクロプスは全身をスパークさせて一気に放電した。

「まずい、皆逃げろ!」

「「「「「うわぁぁあああーーーっ!」」」」」

 アレンは叫んだ。

 人々の悲鳴が響くと同時に周囲の建物が轟音と供に粉砕されると周囲が瓦礫と化してしまった。

 幸い距離は離れていたのでモラウス支部の人間達に危害は無く、ナイトを装着していたユウト達やそうでないアレンも攻撃を交わしていたので無傷で済んだ。

 何が起こったのか状況が読めずに片膝を付きながら周囲を見回すリリーナにガリヴァが言って来た。

『驚きましたか? サイクロプスはあらゆるエネルギーを分解して吸収する事ができるのですよ、例え魔法と言えどもね』

 ガリヴァは指を弾いた。

 するとサイクロプスの胸部が左右に開き、中から巨大なレーザー砲が迫り出してエネルギーが集まり始めた。

『貴女には感謝しますよ、わざわざ基地を破壊する手伝いをしてくれたのですからね』

「……わ、私が?」

 リリーナは自分の手を見た。

 敵の挑発に乗り、結果として敵の手伝いをしてしまった。

 また失敗してしまった。

 その事実にリリーナの心が音を立てて崩れ、ナイト越しの肩が震え出すと全身の力が抜けてその場に項垂れた。

 すると相手を利用し、心をへし折ったガリヴァは見下しながら言って来た。

『せめてもの情けです、先に貴女を楽にしてあげましょう』

「まずい!」

 アレンは自分のライセンス・ギアを見るとディスプレイのカウントは残り10秒を切った。

 一方サイクロプスのレーザー砲にエネルギーが充填されると狙いをリリーナに定めた。

「バカっ! 何やってんのよ!」

「お前死にてぇのかっ? さっさと逃げろ!」

 アイファ、ユウトもリリーナに叫ぶ。

 しかし瞳から光が無くなったリリーナは最早動く気力すら失しなっていた。

 そしてサイクロプスの最強のレーザー砲撃が発射されようとしたその時、アレンのライセンス・ギアのカウントが0となった。

「間に合った!」

 アレンは走り出すと右手の剣を放り投げ、ライセンス・ギアの銀星系連合軍の印のアプリを起動させた。

途端アレンの体が光に包まれた。


 それは一瞬の出来事だった。

 サイクロプスから巨大なレーザーが発射された瞬間、リリーナの目の前に1つの影が現れるとレーザーを強く握った裏拳で薙ぎ払った。

 レーザーは空高く舞い上がり、そのまま消えて無くなった。

『なっ!?』

 ガリヴァは目を見開き、顔を強張らせると言葉を失った。

いや、どころかその場にいる者達全てが信じられずに固まった。

 敵味方を巻きこんで常識はずれの行動をしでかした彼に皆が注目する。

 すると彼は側にいるリリーナを見た。

「大丈夫か? リリーナっ!」

「……え?」

 リリーナは顔を上げる。

 そこに立っていたのはナイトを装着したアレンだった。

 しかしナイトは自分が装着している強化型でも…… ましてや量産型でも無かった。

 両者よりもスッキリとした作りとなっていて、全身の装甲が白くて縁取りが青い、胸と両肘と両膝に菱形の水晶、頭部を覆うヘルメットと青い単眼のゴーグル、丸みを帯びた肩と胸の中央にアーマー、両腕は幾つものプレートを重ねたガントレット、ベルトの左右に先端が3つに別れたタセット、両腕同様にプレートを重ねて作られたブーツのナイトだった。

「ルイス、彼女を頼む!」

 そう言うとアレンはサイクロプスに向かって身構えると石畳を蹴って走り出した。

 目にも止まらぬとはこの事だろう、信じられない速さで間合いを詰めると強く握った右拳を突き出した。

「はあっ!」

 その場にいる者達はさらに驚く事になる。

 何と強化型のナイトでもビクともしなかったサイクロプスが殴り飛ばされたのだった。

 ボロボロになった石畳の地面をさらに砕きながらサイクロプスは横転する。

 各起動系をフル稼働させて立ち上がるサイクロプスに向かってアレンは両足を揃えてジャンプ、今度は右足を突き出した。

 サイクロプスは右腕の鉤爪を伸ばしてアレン目がけて突き出した。

 しかし飛び蹴りが衝突した瞬間、鈍い音と供にサイクロプスの右腕が砕け、肘から下が地面に転がった。

 破壊された肘から火花が飛び散り、内部のチューブや機械が露わとなった。

「うおおおっ!」

 アレンの猛攻は続いた。


 一方、取り残されたリリーナの元へルイスがやって来た。

「リリーナ、大丈夫? 怪我は無い?」

 ルイスは心配してリリーナを見る。

 殆ど放心状態だったリリーナは震える指でアレンを差しながら言って来た。

「な、何なんですの? あの人……」

 するとルイスは苦笑しながら答えた。

「でしょうね、未だに私も理解できないの」

 するとそこへグラビティ・パニッシャーを杖代わりにしたアイファとジンの肩を持ったユウトもやって来た。

「……どうなってやがんだ?」

「あれって、もしかして個人型か?」

「個人型? 何それ?」

「ああ、それはね……」

 ルイスはアイファに説明する。

 ナイトは大きく3つに分けられる。

 1つ目はどの部隊配備されている、ある程度訓練を積んだ者ならば誰でも扱う事が出来る量産型。

 2つ目は自分達が装着している実績を認められた者に合わせて性能を調整され、専属の武器兵器と供に与えられた強化型。

 そして3つ目はそのパーツや素材その物を厳選し、1から装着者に合わせて作られる個人型であった。

 量産型の性能を上げ、無理やり武装を取りつけただけの強化型と違い、個人型は桁外れの性能を誇っている。

 しかしその分装着者にかかる負担が大きい為に100秒と言う制限時間付く、ゆえに制限時間を越えると自動的に解除され、24時間は装着不可能となってしまうと言うデメリットも存在していた。 

 アレンは先日のメガバランの件で装着時間を使い果たしてしまい、その為に装着できずにいたのだ。

「使いたくても使えなかったって事か……」

「本当に昔から変わらないわ…… 人助けの為なら周りが見えなくなるから」

「ルイス、隊ちょ~の事知ってるの?」

「一体何者?」

 アイファやサリーが質問する中、少し戸惑ったルイスはやがてため息を零しながら言って来た。


 アレンとギガンテスの戦いは決着がこうとしていた。

 サイクロプスは左腕でアレンを攻撃するとアレンは横に跳んで回避する、するとゴーグル越しに見える制限時間が映し出された。

「あと30秒……」

 アレンは即刀蹴りでサイクロプスを突き飛ばして右手を伸ばすと手の中に一筋の光が集まり始めた。

 それはやがて側面に三日月型のパーツが取り付けられた中央に大人の男の握り拳くらいはあろう水晶が取り付けられた円盤状の鍔、切っ先から根元までが光沢を放つ刃の両手剣『オーラ・ブレード』となった。

 アレンはオーラ・ブレードの柄を両手で握りしめるとサイクロプスに斬りかかった。

「はああっ!」

 鈍い音と供に分厚い装甲が切り裂かれて内部のメカやチューブが切り裂かれて火花を散らした。 

 一方自らが作り出し、まして今まで優勢だった状況を逆転された事を快く思わないガリヴァは忌々しく顔を歪ませた。

『何をしている! 全エネルギーを結集して全てを消し飛ばせ!』

 ガリヴァが叫ぶとサイクロプスの両肩のマシンガンがアレンに向かって火を噴いた。 

 しかしアレンはその刹那に後ろに跳んで無数に放たれる銃弾を回避する、だがその瞬間に背後にモラウス基地がある事に気が付いた。

 サイクロプスは胸のレーザー砲に再びエネルギーを集まり始め、再びあのレーザーを発射しようとしていた。

 レーザー砲の威力は先ほどより上だろう、アレンなら余裕で避けられるだろうが背後にあるモラウス基地も仲間達もひとたまりも無い。

しかも装着時間が残り15秒を切っている今、さっきの様にレーザーを弾き返したとしてもナイトが自動解除されてしまい誰もサイクロプスを止める事ができなくなる。

考えている時間は無い…… 残された方法はただ1つだけだった。

「そんな事はさせない!」

 アレンはオーラ・ブレードの切っ先をサイクロプスに向けながら剣を横に構えた。

それに反応するかのように背中のブースト・ユニットが展開してジェット機のように突っ込んだ。


 残り10秒を切った。

 レーザー砲にエネルギーが溜まるよりも先にアレンのオーラ・ブレードがサイクロプスの機体を貫いた。

 オーラ・ブレードが深々とめり込むとアレンは言って来た。

「そんなにエネルギーが欲しけりゃ、くれてやる!」

 アレンが目を見開くとオーラ・ブレードの外側のパーツが左右に展開し、鍔元から大きなエネルギーが放たれると巨大な刃となってサイクロプスの機体を貫通した。

 体内に直接エネルギーを流し込まれた事で内部のメカが爆発を起こした。

 アレンはさらに体を捻るとオーラ・ブレードでサイクロプスの胸から上を斬り裂いた。 

『ガ、ガガ、ガガガガ……』

 サイクロプスは仰向けに倒れると轟音を立てて大爆発、木っ端微塵に砕け散った。 

 同時にアレンの装着時間に限界が訪れると個人型ナイトは自動解除されて光の粒子になって四散し、1つに固まるとライセンス・ギアとなってアレンの手の中に収まった。

 アレンは敵を倒した解放感にため息を零す、だが勿論これで全てが終わりじゃ無いので注意を削ぐ訳にはいかなかった。

 何故なら敵はまだ残っていたからだ。

『……くっ、サイクロプスが』

 ガリヴァは身を震わせて歯を軋ませていた。

 自分の作り出したロボットが子供に敗北、まして散々威張り散らした揚句の事なのでプライドはズタズタだった。

 そのガリヴァに向かって目を細めるとアレンは訪ねた。

「まだやるかい? 今度は自分で!」

 アレンの強い瞳とガリヴァの怒りに満ちた目が睨み合って数秒、最初に動いたのはガリヴァの方だった。

 大きくため息を零し、落ち着きを取り戻したガリヴァは皮肉交じりに言って来た。

『まぁ良いでしょう、今回は大人しく負けを認めますよ、ですが覚えて置くのですね、宇宙に君臨するのはこの私だと言う事を!』

 ガリヴァの立体映像は消えて無くなると浮かんでいた円盤が消えて無くなった。

 

 戦いが終わり、スター・ブレイズ隊員達はフェニックスに帰還した。

 指令室では全員が集まって反省会となった。

「首謀者は逃走、だが警備軍の基地は死守、街への被害も最小限に食い止めたか…… まぁ、上出来だな」

 マーカーは安堵のため息を零した。

 久々に始末書や上層部に小言を言われないと思うと嬉しさも2~3倍に膨れ上がった。

 するとアイファがアレンに向かって言って来た。

「そりゃそうだよ、アレンさんメチャクチャ凄かったし」

「いや、オレは最後に少し戦っただけだよ……」

「まぁたまた。謙遜すんなって」

 アレンが言うとユウトが後ろから首に腕を回して来た。

「聞いたぜ、さすがは勇者アレフ・ブルースターの息子様だぜ」

「なっ…… ってルイスっ?」

 アレンはルイスを見る。

 するとルイスは顔をしかめながら目を泳がせた。

 アレンは深くため息を零しながら呟いた。

「君がまさかこんなに口が軽いとは思わなかったよ……」

「何だ。ルイス言ったのか…… オレも言われたから黙ってたが、黙ってる必要は無いだろ?」

 マーカーも言って来た。

 アルフ・ブルースターとはスター・ブレイズ隊の設立者でアレンの父親だった。

 その名は銀星系連合軍でも知らぬ者はおらず、圧倒的な強さとどんな者にも分け隔てなく接する優しさを兼ね備えており、人々からは『勇者』と崇められていた。

 勿論銀星系連合軍に登録されているデータにもライセンス・ギアにも父親の姓で登録されているが、アレンは特別扱いされる事を嫌で今まで母親方の性を名乗っていたのだった。

「誰かさんと大違いだね」

 アイファは皮肉交じりにリリーナを見る。

 だがリリーナにいつもの気迫が無く、ただ無言のままうつむいていた。

 アレンはそんなリリーナに尋ねた。

「リリーナ、どうした?」

「い、いえ…… 何でも」

「もしかして怪我でもしてた? だとしたらゴメン、守れなくて……」

「あ、いえ、そうじゃありません、ただ…… ごめんなさい!」

 リリーナはアレンに向かって頭を下げた。

 その姿を見た者達全てが凍りついた。

 まるで世界中の時が止まったかのように刹那の沈黙が指令室を支配すると、やがてフェニックス全体に響き渡るほどの声で隊員達が叫んだ。

「う、嘘だろ? リリーナが謝った?」

「アンタ、頭打ったんじゃないの? 医務室行った方が良いよ!」

「理解不能……」

「はぁ…… 明日は雪だなぁ?」

「司令まで失礼ですよ、いくらリリーナだって人間なんですから!」

「貴女も随分失礼ですわね」

 リリーナはルイスに向かって目を細めた。

 だがそれでもアレンに対しては申し訳なさそうに両肩を窄めた。

「私が愚かでした。自分の事しか考えずにつまらない意地を張り続けて、あまつさえ取り返しの付かない大惨事を……」

 リリーナの瞳から涙が零れ落ち、両手で顔を塞いだ。

 アレンはまるで自分が泣かせてしまったかのようにうろたえ始めたが、やがて一息置くと言って来た。

「リリーナ、世の中失敗しない人間なんかいない、それどころか失敗しなきゃ分からない事だってある…… それをどう取るかで君は大きくなれるよ」

「……アレン様」

 リリーナは涙を拭うと今まで誰にも見せた事の無い笑顔でアレンを見つめた。

 それを見たマーカーは深くため息を零し、座席に体重を乗せながら自分の部下達を見た。

(隊長、やはり貴方の息子ですよ)

 マーカーは微笑した。

4話目です。

戦闘シーンが長引いて前回より少々長くなってしまいました。

楽しんでいただけたのなら幸いです。

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