譲れぬ想い
◎本日登場の敵:
★機械歩兵、ランド・ギガス。
アレンの活躍で怪獣騒動は幕を閉じた。
被害も最小限に食い止められ、負傷者は全て輸送船へ搬送されて本土の病院で入院となった。
怪獣の死骸は後日、銀星系連合軍が回収する事になり、遺跡の調査もさらに強力な怪獣が眠っている事を考慮し、十分な武装と対策を検討した後再開される事となった。
フェニックスは現在点検と整備の為に本土にある銀星系連合軍の施設へ向かっていた。
アレンはマーカーに着任許可を貰うと正式にスター・ブレイズ隊の一員となったのだが、現在指令室では更なる問題が起こっていた。
「どう言う事ですかっ!」
マーカーの隣でリリーナがテーブルを叩いた。
そして後ろにいるアレンを見ながら理由をぶつけた。
「何でこの新入りが隊長なんですの? 納得できませんわっ!」
「……うるさいな、誰が選ばれても文句は言わない約束だろ」
「それとこれとは話が別ですわ!」
リリーナはさらに顔を近づけた。
大音量のスピーカーを耳元に近付けて聞いたようにマーカーは顔を顰めた。
リリーナはマーカーから離れると自分の胸に手を当てながら言う。
「司令はお忘れですか? 私は……」
「名門アステリア家だって言いたいんだろ?」
「その通りですわ! それをこんなどこの馬の骨かもわからない、ポッと出の新人なんかと同じにしてもらいたくありませんわっ!」
リリーナは細い指をビシっとアレンに向けた。
すると他の者達が言って来た。
「リリーナ落ちついて、司令の命令は絶対よ!」
「……右に同意」
「そうだよ、大体俺達に家なんて関係無いだろ」
「怪獣1人で倒したんだから普通に凄いじゃん」
「くだらねぇ」
「貴女達は黙ってなさい!」
リリーナは仲間達を黙らせた。
次にアレンを睨みつけると身を震わせながら言った。
「例え司令が何と言おうと、私は絶対に認めませんわ、隊長にふさわしいのは……」
「もう良い! もう解散だ」
リリーナの言葉を余所にマーカーは席を立った。
「俺は事故処理の資料を纏める、お前達は次の命令があるまで待機だ。ルイス、アレンに部屋を教えてやってくれ」
「分かりました」
「待ってください、司令っ!」
「リリーナ、どうしてもって言うなら実力でアレンを抜いてみろ…… そうしたら考えてやるよ」
それだけ言うとマーカーは指令室を後にした。
他の者達も指令室を後にすると後にはリリーナだけが残された。
「くっ……」
怒りが収まらないリリーナは親指の爪を噛みしめると眉間に皺を寄せた。
ルイスに連れられてアレンはフェニックスを歩いていた。
その最中にスター・ブレイズの事を簡単に説明された。
フェニックスは任務上、他の惑星を飛び交う為に機体の整備や物資の補充は全て各惑星やコロニーで行われている。
スター・ブレイズの隊員は司令と自分とアレンを入れて8人、フェニックスの搭乗員は100人を越え、整備班、医療班、開発班、輸送班などに分かれている。
さらに長旅で退屈しない為にサロンやシアターも存在し、はたまた食堂には三つ星シェフに匹敵する料理人が雇われており、クルー達の舌を喜ばせていた。
「任務の内容は知ってると思うど…… 私達には特に決まってる事が無いの、怪獣退治やロスト・テクノロジーの回収、それと軍部内や民間から寄せられる苦情処理が主な任務ね」
「資料でも見たよ、この部隊はあらゆる災害や任務に対応できるように作られた独立遊撃部隊だってね」
「でも今じゃただの雑用部隊、他の部隊からも『軍の盲腸』とか『子供の寄せ集め』とか言われる始末よ…… これじゃお父様が浮かばれないわね」
ルイスはため息を零した。
だがアレンは軽く微笑しながら答えた。
「別に構わないよ、親父もそれを望んでるはずだ」
アレンは苦笑しながら答える。
ルイスはそれに釣られて微笑するが、やがて顔をしかめながら言って来た。
それは指令室での事だった。
「アレン、さっきのリリーナ…… 彼女の事なんだけど、許してあげて欲しいの」
「そりゃ気にしちゃいないけど…… 何か理
由でもあるのか?」
「私は貴方同じで自分の意思で入ったんだけど…… 他の人の殆どがあちこちで辛い目にあった人達なの、彼女もその内の1人よ」
ルイスはデータ管理も任されている。
勿論配属された者達のデータ、前に所属していた部隊の経歴も確認していた。
リリーナはかつて魔法文明に優れた惑星『ベルシエール』のエリート魔術師部隊に所属していた。
しかし任務中に些細なミスを犯してしまい、責任を取らされてこの部隊に左遷されたのだった。
「あの娘、確かアステリアって言ってたな、確かベルシエールの名門貴族だよね…… 気持ちは分かる、優れた家を持つと苦労するもんだよ」
「良く言うわよ、殆ど自由に育ってるクセに……」
「そうでもないよ、これでも結構反発されたよ…… 義父さんからはね」
「危険な目に合わせたくないのよ、私も両親から猛反対されてたわ」
「そう言えば小父さん達元気?」
「ええ、ピンピンしてるわよ、アレンが配属される事を話したら呆れてたわよ、『案の定こうなったか』ってね……」
部隊とフェニックス内の説明がいつの間にか世間話となっていた。
そんな話をしながら廊下を歩いて行った。
物心付いた時から自分は1番で無ければならなかった。
魔法文明に優れ、多くの魔術師達を育てて来た名門貴族に生まれた自分は誰よりも優れて完璧な存在でなければならなかった。
出来て当たり前、些細なミスも許されない環境で育ち、努力を重ねた結果エリート部隊に所属する事ができた。
しかしあの日、全てが変わってしまった。
リリーナが配属されてから約3ヶ月後、ベルシエールと他星を繋ぐ宇宙ステーションがテロリスト達に占拠され、リリーナの部隊に出撃命令が下された。
たちまちテロは鎮圧され、事件解決の一歩手前まで来た時だった。ホッとして武器を降ろした瞬間、隠れていたテロリストの1人にリリーナ自身が人質に取られてしまい、さらには逃亡を許してしまうと言う失態を犯してしまった。
幸い直ぐにテロリストは少し離れた場所で逮捕されたが失態は失態、仲間達からは陰口を叩かれ、両親からも名門の名に泥を塗られたとリリーナを勘当、さらに上層部に手を回して部隊を追放され、この部隊に追いやられたのだった。
それ以来リリーナは誓った。
いつか自分の手で認めさせる、もう一度返り咲く、それが自分の目的だった。
「はっ……」
リリーナは飛び起きた。
塵一つ落ちていないリリーナの自室、中央には1人用のテーブルとイスが置かれ、戸棚には様々な種類の紅茶と手入れをされた高価なティーセットが並び、窓際にある羽毛布団を払って上半身を起こした。
玉の様な汗が流れると額を手の甲で拭う、しかしその後直ぐ彼女の心の中に苛立ちと悔しさが溢れ出した。
この部隊に配属されてもうすぐ1年になろうとしている…… それでも自分は誰よりも努力していた。しかし選ばれたのは配属したての新人だった。
負けない自信はある、しかし誰も自分を認めようとしなかった。
「今度こそ、私は……」
リリーナは両手を強く握った。
しかしその瞬間だった。
『エマージェンシーっ! エマージェンシーっ! スターブレイズ隊の人達は至急指令室に集まってください』
突然艦内にサイレンが鳴り響いた。
リリーナはベットの近くのライセンス・ギアを取り、入口の側にかけてあった上着を羽織ると部屋を飛び出した。
やって来たのは指令室、しかし真っ先に来ていたのはアレンとルイスだった。
リリーナは一度、アレンを睨みつけるように見ると自分の席に座った。
「おいおい、朝っぱらから何の騒ぎだ?」
「眠い~……」
「非常事態なら仕方ない」
「チッ」
ユウト、アイファ、サリー、ジョージもやって来た。
最後にマーカーも指令室に入って来てスター・ブレイズ隊全員集合となった。
点検と整備はすでに終了しており、エンジンが起動すると深紅の機体は朝靄の立ち込める宙に舞い上がった。
フェニックスの船尾部分のブースターが轟音を立てながら猛スピードで進んで行く最中、船内の指令室ではスター・ブレイズ隊が各席に座るとマーカーから事件の詳細を聞いた。
「まずはこれを見てくれ」
液晶画面のデスクに地図が浮かび上がった。
それはエンフィールド全体の地図で、現在地は赤い光、そしてそこから数百キロ離れた場所にある『モラウス』と言う街だった。
その街で過激派のテロが発生、被害は大きく救援を求めていると言う。
「ちょっと待ってください、モラウスを警備しているのはエリート部隊で有名ですよ」
ルイスは解せなかった。
モラウス警備軍には最新鋭の装備と優秀な人材が揃っている、不意をつかれたとは言えそう簡単に救援を求めるような部隊では無かったからだ。
それはマーカーも十分に分かっていた。
しかしどんな場所であれ援護を要請している以上は向かわなければならなかった。
「これよりスター・ブレイズはモラウス警備軍の援護に向かう、今回は『アレ』の使用を許可する!」
「えっ? マジッすか?」
「やった。アレ使うの久しぶりぃ~っ! 最後に使ったのいつだっけ?」
「2ヶ月と3日ぶり」
アイファの質問にサリーが答えた。
するとアレンは目を泳がせながら顔を顰めると右手を左胸に当てて内ポケットの中にあるライセンス・ギアを強く握りしめた。
その様子を見ていたルイスはアレンに尋ねた。
「隊長、どうかしましたか? 隊長も貰ってるんですよね?」
ルイスは尋ねる。
いくら幼馴染であろうとも隊長と部下である以上立場は弁えなければならない。
するとアレンは言って来た。
「あ、いや、そうなんだけど…… 参ったな」
「?」
アレンの不可解な行動にルイスは首を傾げた。
エンフィールド主要都市の1つモラウス、人口はおよそ20億人を超え、普段は静かな朝を迎えるはずのこの街では今爆音が響き、所々で黒い煙が宙に昇っていた。
突如起こったテロに人々は寝巻のまま逃げ惑い、街は大混乱となっていた。
街を襲っているのは両手にはマシンガンやバズーカ砲を装備し、鈍い光沢を放つ鉛色の装甲に赤く輝く単眼で2足歩行型のロボットの軍団だった。
軽く200体は越えるであろうロボット軍団は列を成しながら傷害となる物全てを破壊しながら一直線に進んでいた。目的地は銀星系連合軍モラウス支部だった。
勿論モラウス警備の銀星系連合軍も黙ってはいなかった。
強力な特殊合金で作られたバリケードで道を封鎖、有りっ丈の武装でロボット達を迎撃した。
しかし防衛ラインは次々と破られ、ロボット達は目と鼻の先まで迫って来ていた。
「怯むな! 一歩たりとも先に進ませるな!」
指揮官の命令で警備軍の兵器が一斉に火を噴いた。
レーザーやバズーカなどがロボット達を爆撃するが、ロボットの装甲には傷1つ付いておらずに止まる気配を見せずに一歩一歩とモラウス支部を目指して進んでいた。
「おのれぇ、ナイト隊! 全軍出撃!」
司令官がライセンス・ギアに向かって叫ぶと後方にあるモラウス基地から30を超える機の機械の鎧に身を包んだ軍人達が現れた。
全身白銀の装甲、頭部は緑の両目のヘルメット、胴体は背中にニ重のブースターが取り付けられたジェットパックと大きく広がったウィング型となった両肩の内左肩にはシルバー・フォースの紋章が描かれ右肩の後ろには身の丈ほどもある巨大な剣が収納されたプロテクター、二の腕から手の甲までは同じ塗装だがそこから出ている5本の指部分が黒い塗装で右手に大型拳銃を持ったガントレット、下半身は腿を完全に覆うタセット、そして膝から下は機械のブーツを装着していた。
銀星系連合軍の英知の結晶である魔導機重装甲『Kaleudo・Newーgeneration・Infinite・Glоry・Hоpe・Tool(カレイド・ニュージェネレーション・インフィニット・グローリー・ホープ・ツール)』、その頭文字を取った通称『KNIGHT』を装着した者達がロボット達に一斉砲撃を放った。
たちまち轟音と供に辺り一面大爆発、ロボット達は木っ端微塵に砕け散ったかのように見えた。
しかし爆煙の中から影が浮かび、ロボット達は何事も無かったかのように歩いていた。
破壊されたのは前衛を歩いていた僅か数体だけだった。
「な、何っ?」
警備隊は誰しもが信じられなかった。
ナイトは20人揃えば戦艦1隻沈めるほどの力を持っている、それが半分も倒す事ができなかったのだから無理は無い。
今度はロボット達の反撃だった。
一斉に放たれた砲撃が警備軍の防衛ラインを破壊した。
「うわあああっ!」
爆風により警備軍は地面に放り投げられたボールのように転がった。
「くそっ!」
ナイト隊員を装着した者達はレーザー銃を投げ捨てると右肩に大型の両刃剣を取り出して突進した。
だがこれも全く通じなかった。いや、何とか刃の半分はめり込んだ。しかし破壊するとまではいかなかった。
ロボット達はその者達の腹部に砲口を付きつけると至近距離で砲撃を放った。
「うわあああっ!」
零距離での砲撃により数十メートルは吹き飛ばされ、ナイトは粉々に砕け散り、警備軍はその場に崩れ落ちた。
その後もロボット達は全身を続け、邪魔者がいなくなった道を我が物顔で進んでいた。
警備軍本部まで残り500メートルと言った所だった。辺り一面が暗くなって上を見上げるとそこには一隻の戦艦が浮かんでいた。
青空に比例して深紅の装甲の不死鳥を思わせる戦艦の船底が開くと7人の少年少女達が飛びだして石畳の地面に降り立った。
しかし彼等の姿にモラウス支部の者達は目を見開いて驚いた。
ナイトを装備したスター・ブレイズは街の惨劇を見まわした。
「チッ、随分暴れてくれたじゃねぇか」
「なぁに、俺達が来たんだ。これ以上先へは行かせねぇよ」
「よ~し、思い切り暴れるぞ~」
「メンテナンスは完璧、後は皆の実力次第」
「でも久しぶりのナイトでの戦闘だから気を付けてね…… それよりも」
ルイスはアレンを見た。
他の者も首を向けるがアレンだけがナイトを装着しておらず、代わり右手に両手持ちの両刃剣が握られていた。
隊員達の視線に気づいたアレンは苦笑しながら言った。
「ああ、オレの事はいいよ、本当に気にしないでくれ…… さっきも言った通り、皆は全力で戦ってくれれば良いんだ」
「随分と余裕ですのね」
リリーナはわざとらしく言って来た。
その冷めた目線には皮肉がたっぷりと込められていた。
するとルイスは顔を曇らせながらリリーナに言った。
「リリーナ、そんな事を言ってる場合じゃ……」
「言っておきますけど、この任務で私は自分の優秀さを認めさせますわ、そして誰よりも隊長にふさわしいと証明して見せますっ!」
ルイスの言葉を遮り、リリーナは1人敵に向かって行った。
「おい、リリーナっ!」
「ああっ! 抜け駆けズルい~っ!」
「隊長、リリーナをほおっておけないわ!」
ルイスが言うとアレンは頷いた。
「分かってる…… じゃあサリーとアイファは負傷者を、ルイスもそっちに回って2人を守りつつリリーナを援護してあげてくれ、ジンとユウトはオレと一緒に敵ロボットの壊滅だ!」
「え~、アタシ戦えないのぉ?」
「命令よ、アイファ」
「了解」
「心配すんな、お前の分まで暴れてやるから」
「言われるまでもねぇ」
「じゃあ行くぞ、戦闘開始!」
アレンの合図でスター・ブレイズ隊は地面を蹴って敵に立ち向かって行った。
スター・ブレイダーズとロボット軍団の戦いの火蓋が切って落とされた。
「行っくぜぇーーーっ!」
最初に出たのはユウトだった。
ユウトは銃弾や砲弾の雨を掻い潜りながら間合いを詰めると、いつも持っている刀と違う2倍はある刀身と幅、鍔と柄が一体化した刀を振ってロボット達を切り裂いていった。
ロボットはたちまち真っ二つに切り裂かれると木っ端微塵に爆発した。
「見たかっ!」
ユウトは振り返りながら鼻で笑った。
ジンも負けてはいなかった。
ジンは両手に装着された金のフレームに黒く分厚い金属が無数に重なったグローブを強く握りしめると片っ端からロボット達を殴り飛ばして行った。
すると数メートル背後から砲撃をしようとしている敵を察知、足を捻ると同時に身を翻して砲撃を回避すると砲撃した敵に向かって拳を突き立てた。
「ふんッ!」
ジンの右ストレートが炸裂、ロボットの胸を貫いた。
右腕を引き抜くとまるでドーナツの様に胸部に穴の空き、破損した箇所が火花を散らすとロボットはガクガクと首や腕を動かしながらその場に倒れると機能を停止した。
一方アレンも無駄のない動きで敵と戦っていた。
アレンは生身であるのにも関わらずに寸の所で攻撃の起動を読みながら突進し、剣を振りかざしてロボット達を攻撃した。
「はっ!」
一方アレンも無駄の無い動きで敵の攻撃を交わし、関節を切り裂いて動けなくして行った。
機能停止とまでは行かなくともロボット達は鈍い音を立てながらその場に倒れて動けなくなった。
その様子を見ていたアイファは素直に驚いた。
「隊ちょ~、凄い……」
「アイファ、今は任務中よ、他所見みをしないで」
「う、うん」
ルイスに言われてアイファは自分の仕事に戻った。
するとルイスはアレン達の方を見ると目を吊り上げながら左手でヘルメットの左耳のスイッチを押した。
直ちに備え付けのカメラがロボット達を映し出すと瞬時に情報はフェニックスのコンピューターに送られ、解析されたデータがゴーグルに映し出された。
「よし!」
ロボットの弱点が分かるとルイスは両手で持っている黒く大きなレーザー・ライフルを構えた。
ターゲットをロック・オンすると右手人差し指で引き金を引いた。
たちまち圧縮された光の弾丸が銃口から発射され、ロボット目がけて発射され、ロボットの顔面をぶち抜いた。
さらに引き金を引く度に通常の銃弾の倍はあるだろう圧縮された光の弾が発射されてロボット達の顔面をぶち抜いた。
ロボット達の頭部のレンズ部分はセンサーとなっていて、比較的脆く出来ている事が分かった。
勿論それだけでは無かった。するとルイスのヘルメットに内蔵されている無線機に通信が入った。
『ルイス、言われた通りに調整したけど、調子はどう?』
「問題ないわ、ありがとう」
『どういたしまして』
ルイスは感謝の言葉を述べるとするとサリーの少し嬉しそうな声が返ってきた。
ルイスの後ろではサリーとアイファの救助活動が行われていた。
ナイトのおかげで自分より大きな瓦礫を退け、下敷きになっていた者達を助け出すと一か所に纏めてライセンス・ギアを取り出してあるアプリを押した。
ライセンス・ギアの能力の1つに圧縮能力がある、これはあらゆる物をデータ化して収納する事が出来る、アイファ達が取り出したのは大量の医療セットだった。
傷薬や包帯などを手に取ると的確な処置でアイファが集めて来た負傷者達を介抱した。
「す、すまない…… 君達は一体?」
「アタシ達はスター・ブレイズ隊です。皆さんを守る為に来ましたぁ!」
アイファは笑顔で答えた。
手当を受けている警備隊員は現在戦っている者達を見た。
いくらナイトを装着しているとは言え、自分達が太刀打ちできなかったロボット達をことごとく破壊して行くのが不思議だった。
「まさか、君達全員『強化型』なのか?」
「はい、そうですよ!」
アイファは答えた。
今まで警備軍が使っていたのは数が多いとは言え『量産型』と呼ばれる物で、スター・ブレイズ達が装着しているのは全て『強化型』と呼ばれる物だった。
量産型とはどの部隊にも配備されており、訓練された者なら誰にでも扱えるように設計されている、装着者の技量が高ければ高いほどナイトはその力を何倍にも増幅する事が出来る事ができるのだが、その代わり1台のナイトを数人で使い回しとなっている。
一方強化型と言うのは軍部上層部に実力を見込まれた者が各自の能力に合わせて調整された機体に武装を付属された物で、通常の約5倍の力を発揮するのだが、その分使い勝手が難しい上に疲労度も高くなるので与えられる者は限られている。
普段なら指揮官クラスかエリートに与えられる物で、通常ならば20代前半から半ばごろに与えられる物だが、10代の隊員(1人を除く)全てが強化型と言うのは相当な事だった。
勿論命令を聞かずに1人戦っていたリリーナも強化型だった。
彼女の左手には魔法の力を増幅させる紫色の魔石が甲に取り付けられた特殊合金製のグローブと複雑な呪文の書かれたリムの一体化した弓が装着されていた。
リリーナが目を閉じて念じると足元に金色の五亡星とそれを包み込む真ん中に呪文が画かれた二重のサークルの魔法陣が出来あがった。
さらにリム部分の呪文が輝くと上下の先端から光が伸びて玄となり、右手でそれを引くと金色の矢が現れた。
「迸れ雷、ライザーズっ!」
金色に輝く雷の矢がロボット達の装甲を貫き、各起動系統を破壊した。
武器に装着された魔石により魔法力が増大化、さらにリム部分に掘られた呪文が一点集中させた事で破壊力が上がったのだった。
「はぁ、はぁ……」
リリーナは息を切らしながらアレンを見る。
アレンはバリア・メイルも無しに戦い、まして仲間達に指示を与えながら戦っていた。
確かに隊長に必要なのは力だけでは無く、下の者達を引っ張って行く統率力も必要だ。
戦いぶりも見事としか言いようが無かった。しかしそのやり方がリリーナのプライドを余計に傷つけていた。
悔しさに身を震わせ、赤い唇を噛みしめたその時だった。突然辺りが暗くなった。
「なっ?」
頭上を見上げた瞬間、その場にいる者達全てが目を丸くした。
大きさはフェニックスと同じくらいだろう、巨大な鉛色の円盤が宙に浮かんでいたのだった。
3話目投稿です。
今回は少々長めで読みづらい所もあるかもしれませんが、楽しんでいただけたら幸いです。