旅立ちの勇者
◎本日登場する敵:
☆銀星連合軍(訓練施設兵器)
★浮遊兵器、レーザー・ビット。
★バーチャル怪獣、レベル5。
これはとある宇宙の物語り。
漆黒の宇宙に浮かぶ人工衛星。
その中は草木1本生えていない荒野となっており、砂嵐が吹きすさぶ中に1人の少年が立っていた。
彼は黒い光沢を放つゴーグル付きの白い金属性のヘルメット、上半身は楕円を描いた両肩のパーツが取り付けられたプロテクター、両腕を覆う分厚いグローブ、五亡星に翼が生えた紋章が描かれた長方形のバックルと金属のベルトの右腰部分には白い装甲のハンドガンタイプのレーザー銃、背中部分には黒い金属性の鞘に収められた両刃の剣が取り付けられ、両腿から下も無数の白いプレートを重ねて折り曲げた様なブーツと言う重装備で身を固めていた。
その少年の周囲を人間の握り拳大はあろうカメラのレンズの様な物が取り付けられた白い球体状の物体が浮遊していた。
この物体は動く物に反応して攻撃を放つ様に作られた自動追尾機能付きのレーザー・ビットだった。
その数はざっと30は超えているだろう、少年の爪先がジリッと音を立てたその瞬間、ビットにあるレンズ状の発射口が光り輝いた。
「はっ!」
ゴーグルの内側に隠された瞳がカッと見開くと少年は一気に前に跳んで赤く発光するレーザーを回避した。
少年は身をかがめて前転するとすかさず右手でレーザー銃を手に取り、横に跳ぶと追撃のレーザーを回避、グリップを持った右手に左手を重ねて手首を固定するとそのままビットに向けて銃口を向けて引き金を引いた。
そして青白いレーザーが発射されるとたちまちビットを貫くと爆音を立てながら粉々になって地に落ちた。
地面に転がりながらもレーザー銃を両手で構えて撃ち続け、そのまま立ち上がって体制を整えて発砲すると他のビットも破壊して行った。
するとビットはレーザーを止めると側面から上下左右に三角形の凝縮されたエネルギーの刃が出現、手裏剣の様に回転しながら少年に襲いかかった。
少年は構わずに発砲を続けるが、圧縮されたエネルギーと高速回転も相まって少年の攻撃は簡単に弾かれてしまった。
「チッ!」
少年は舌打ちすると飛んで来るビットを回避した。
そしてレーザー銃を投げ捨てると今度は腰の剣の柄を握りしめて引き抜いた。
鈍い光沢を放つ刀身が輝くと、両手で握りしめ、地面を蹴って走り出すと迫りくるビット目がけて剣を振るった。
「うおおぉぉーーっ!」
渾身の力を込めた斬撃が炸裂し、ビットはたちまち一刀の元に斬り伏せられた。
真っ二つに切り裂かれたビットは火花を散らしながら爆発した。
全てのビットを破壊し終えた時だった。
突然少年の周囲が暗くなった。
「んっ?」
振り向くとそこには巨大な生物が少年を見下ろしていた。
明らかに少年の10倍はあるだろう、緑色の鱗の肌に虎の様な模様が入りノコギリの様な牙が並んだ大きな口、大きく飛び出た爬虫類の様な目、鋭く飛び出た2本の角が生えた頭、両手には3本の鎌の様に伸びた爪、逆関節の4本の爪が生えた太い足と大蛇のような尻尾を地面に叩きつけた。
怪獣は大きく裂けた口をさらに広げ、身を仰け反らせると高々と咆哮を上げた。
『グォォオオオォォーーッ!!』
「……こりゃラストに凄いのが」
少年は苦笑する。
すると怪獣は大きく息を吸うと口を紅蓮に燃える炎を吐き出した。
「おっと!」
少年は両足を揃えて後ろに跳ぶと怪獣の火炎攻撃を回避した。
すると怪獣は今度は身を翻し、野太い尻尾を振りかざして少年を襲った。
巨大な大木が鞭の様にしなりながら少年を薙ぎ払らおうと迫り来る…… しかし少年はそれをあっさり跳びあがって回避してしまった。
だがただ回避しただけではない、少年は尻尾の上に着地すると一気に怪獣の頭上目がけて駆け上がった。
自分の体の上を虫の様に走り回る少年を振り払おうと怪獣は身を震わせるが、少年は上手に跳び上がりながら頭上を目指した。
「たあっ!」
そして右足に力を入れると頭上を大きく蹴って跳びあがった。
空中では体制は変えられない、怪獣は再び紅蓮の火炎を吐き出そうと口を開いた。
怪獣の口の中で炎が燃え盛るが、少年は怯む事も怯える事も無く両手で剣を強く握りしめて大きく振り上げた。
「うおおぉぉおおぉぉーーーっ!!」
少年は渾身の力を込めると勢い良く剣を振り下ろした。
すると一閃…… 勝負は決まった。
少年が着地すると刹那の間、時が止まったかのように静寂が訪れた。
さらに少年が立ちあがって剣を振るうと怪獣はたちまち真っ二つに切り裂かれ、地響きを立てて崩れ去った。
「ふう……」
少年は息を吐くとゆっくりと目を閉じた。
するとその瞬間。
『訓練終了! 訓練終了! レベル5クリア、バーチャル・システム解除』
大きなブザーと供にアナウンスが響いた。
途端周囲の風景と怪獣の死骸が消えて無くなると真っ白な壁と赤いタイル張りの部屋となった。
少年が戦っていた場所も怪獣も全ては疑似的に作り出された物だった。
ただしビットだけは本物で、床には残骸が散らばっていた。
「終わったか」
少年は微笑しながら数メートル先にある部屋の出口に向かって歩き出した。
扉が1人でに左右に開くと数人のスタッフが少年に駆け寄って身につけているプロテクターを解除し始めた。
すると少し離れた所に1人の中年の男性が立っていて、少年に向かって拍手を送った。
見た目は40半場だろう、黒い肌に顎ひげを携えた貫禄のある面構えとガッチリした体格…… その上から肩だけが黒く、胸に五亡星が描かれた純金製のメダル型の勲章が飾られた白い生地の詰襟の服、下は白い生地のズボンと黒い皮の靴を履いていた。
彼はこのコロニーの主任教官を務めているデイン・マグナだった。
「素晴らしい、見事としか言えん…… 本来3年はかかるメニューをここにきて半年で終わらたのだからな」
「教官の指導があってこそです、ありがとうございました」
労いの言葉に少年は礼を返す。
するとデインは一息つくと苦笑しながら言って来た。
「ああ、本日をもってここの訓練は終了となる…… しかし淋しくなるよ、最近はここを利用する者も少なくなって来たからな、最近の若い奴等は根性が無くて行かん」
デインは呆れながら深くため息を零した。だがそれは同時に喜びでもあった。
確かに知り合った者と別れるのは淋しい、だが若者が強く成長し、大きくなった背中を見届けるのが教官としての勤めだった。
しかしデインは1つだけ気がかりな事があった。
「しかし本当に良いのかね? 君ほどの実力ならば他の部隊でも活躍できるのに…… わざわざあそこを選ぶとは」
デインは首を傾げた。
すると少年は口の端を上げながら言った。
「良いんですよ、約束でしたからね」
「そうか…… ならば体に気を付けてな、アレン・ブルースター少尉」
デインは右手の指を全て伸ばして敬礼をした。
一方、ヘルメット以外のプロテクターが外されると首から下は青い全身タイツの様な姿となった。
そして最後に残ったヘルメットは自分自身の手で脱ぎ捨てると、その下に隠されていた素顔があらわとなり、首を振ると髪に弾かれた汗が小さな水滴となって飛び散った。
すると少年…… いや、『アレン・ブルースター』はヘルメットを左の脇腹に抱えると右手で敬礼して返したのであった。
自分の初投稿作品、楽しんでいただければ幸いです。
これから頑張りますのでよろしくお願いします。