6話『怠惰王』
「で、なんで、君の家なのさ」
そんな不満を千尋が漏らす。
「仕方ないだろ。あの辺、さっきの騒ぎで、学生はどこにも入れなさそうだったろうが。そしたら一番近い俺の家で決まりだろ?」
お茶を入れながらそう言う。レクドはテケテケと部屋を歩き回る。
「貞操の危機を感じる」
「そんなもん感じるんだったら、その短いスカートどうにかなんねーの?」
デリカシーの無い事を言う進九に、顔を赤くして千尋は反抗する。
「これは任務で用意されただけだから、好きで着ている訳じゃない!」
「だから、何の任務なのさ」
「だーかーら。そーれーは!」
そうまた説明しようとすると、千尋の携帯が鳴る。
「ちょっと待って。はい、もしもし。は、はい! 白峰様ぁ! はいはい。なんの御用で? え? はい、はい。分かりました。変わります」
そうすると、進九は千尋の携帯を渡される。
携帯を耳に近づけると、聞きなれた鬱陶しい声が聞こえた。
『よお、元気にしてたか? 進九』
「か、奏!?」
『おう、久しぶり。我が盟友『ヴリトラ』』
電話の向こうの相手は、日本から太平洋を支配下に置く魔王。怠惰王『アジ・ダカーハ』こと、白峰奏だった。
《〇》
『懐かしいな。『アウトバー』以来か』
白峰奏。怠惰王で、六体の王獣僕と日本を従える魔王。長い黒髪が特徴の美女で大の酒好き。先代の魔王からの付き合いで、盟友と呼ばれている。
『アウトバー』は依然あった戦いの名前だ。
『それにしても、憂鬱厨のお前が、自分の部屋に女を連れ込むとは、やるね――』
「俺にそんな度胸はない!」
『あはは。知ってる――。ちなみにF機関は私が作った組織だ』
今代の怠惰王、白峰奏を一言で表すと怠惰平和厨だ。自らの周りで起こる騒がしさが大の苦手である。別に平和を愛しているわけではなく、静かにしてほしいだけであり、自分は怠惰に過ごしたいだけなのだ。そのために魔王に対する国際的組織を作るならば、納得の理由である。
「なるほど。魔王が魔王に対抗する組織を作るとは皮肉が効いてる。で、何のようだ? 話、あんだろ?」
このタイミングでの連絡には意味がある。すぐに本題に入る。
『相変わらず、頭の回転は速いな。勿論。話はその今、お前が保護してる幼女レクドのことだ。私が保護しようと思っていたのだが』
その話から大体の事は汲み取れた。
「大方、宮木はあんたの部下だろ」
『当たり! お前が、人付き合い苦手だから近づくなって言ったんだが、レクドの方から接触するとはな』
「ああ。で、レクドは一体何者なんだ?」
進九はそう聞くと、奏からため息が返ってくる。
『気付いてなかったのか?』
「はあ? 何を言って」
『レクドは我々の同類だよ。正確にはお前の同類だが』
「なっ! まさか!」
その言葉で進九の考えは確証に変わる。
『ああ、レクドはロスト、虚飾王。『ザッハーク』の蘇理だ』