4話『竜の名を待つ王』
あらすじの内容を変更しました。
本文との食い違いなどがあったので、修正しました。
他にもおかしな点などございましたら、感想欄などで教えて頂ければ幸いです。
「な、なんで、接触しちゃうの――! うわ、これ、どうしよ。上司から極力関わるなって言われたのに――! ホントどうしよかな――?」
そんな二人の様子を見ていたセーラー服の少女、千尋が一人いた。
しかし、二人がしばらく歩いていると、千尋は突然、二人を見失った。
「しまった! 一体どこに!」
すると肩をポンポンと叩かれる。
千尋が振り返るとそこには、進九の姿があった。
「今日は客が多いな? さっきまで、俺達を尾行していたろ、お前?」
少女は警戒しながら、進九の忌み名を呼んだ。
「『ヴリトラ』!」
その時、進九の眉がピクッと上がった。
《〇》
この世界に存在する七人と存在が不確かな二人の魔王は、全員、古に存在した竜、ドラゴンの名が付いている。
そしてその九人の魔王はそれぞれ、龍獣と呼ばれる龍の王獣僕を必ず一体、その身に宿している。それ故、九人の魔王はそれぞれ龍の名前で呼ばれる。
暴食王は、『バハムート』。
色欲王は、『ミドガルズオルム』。
強欲王は、『ファフニール』。
憤怒王は、『ケツァコアトル』。
怠惰王は、『アジ・ダカーハ』。
傲慢王は、『リンドブルム』。
嫉妬王は、『ティアマト』。
虚飾王は、『ザッハーク』。
憂鬱王は、『ヴリトラ』。
各魔王は、そう呼ばれている。
つまり、千尋は進九の正体を知っている人間だということだ。
《〇》
「はぁ、憂鬱だ。何で、俺の事知ってんだ? 何? 俺のファン?」
鞄を背負ったまま、レクドが足にしがみ付かれる進九は、呆れた様にふざけて対応する。
「ふざけないで! あなたが不死の呪いに掛かったロストの憂鬱王、黒城進九だという事は、分かってるんだよ!」
駆鋼剣を構えたまま、千尋は威嚇を続ける。
「……お前、何者だ?」
少し睨みながら、進九は聞く。
「僕は、F機関の裂姫、宮木千尋!」
「F機関? わりひめ?」
聞きなれない単語に、進九は尋ねる。
「な! ヴリトラなのにF機関と裂姫を知らないのか?」
進九の惚けた態度に、千尋は驚く。
「ああ。聞いたことも無い」
そんな態度の進九に呆れて、千尋はため息を吐き、駆鋼剣を降ろす。
「F機関、正式名称Fenrir機関。人外種、特に魔人、魔王によって世界を滅びないように守る日本政府の組織で、裂姫は戦闘術式を主体とした巫女だよ」
「へぇ――。そんな組織が日本にあったのか。裂姫は戦闘巫女って感じか……」
逆にわざとらしい態度過ぎて、本当に知らなかったんだろうなと、千尋は思う。
「まあ、概ねそんなとこだよ。それにしてもそんな事もしらないなんて。本当にあなたはヴリトラなの?」
首を傾げる千尋に、どうでもいいように進九は紹介する。
「おお、こんなでも魔王とか呼ばれる世界最悪の失われた王、憂鬱王ですよっと」
そうほざきながら、レクドの頭を撫でる。
「……♪」
頭を撫でられ、満足そうにするレクド。
(偉く懐かれたな。ああ、憂鬱だ)
そう思いながら、進九は本題に入る。
「で、その宮木さんが、尾行していたのは、どっちだ? 俺か? それとも……、このガキか?」
「えっと、それはね……」
それを千尋が答えようとする。だが割り込みが入った。進九の背後の通路が吹き飛ばされる。
「昨夜振りですね! 裂姫!」
それをした犯人は、黒のスーツを着た男だ。その男は、ブレイクを投与した獣人の肩に乗った、第一級犯罪者、ログス=プシル、その人だった。