11話『色欲の魔王』
『アメリカ・首都ワシントンD.C』王官邸『ブルーハウス』
ここ、色欲の魔王の支配下アメリカには、首脳官邸『ホワイトハウス』の他に大きな青の建物がある。青き居城のその名は『ブルーハウス』。今や大統領より強力な権力と力を持つ、色欲の魔王の自宅である。
何故、青色なのかというと、魔王にはそれぞれが、特定の色を持っているからだ。
暴食は、黄色
色欲は、青色
強欲は、緑色
憤怒は、灰色
怠惰は、白色
傲慢は、赤色
嫉妬は、紫色
虚飾は、橙色
憂鬱は、黒色。
このようにそれぞれが掲げるべき色を持っている。これは魔力の色だ。そのため、このブルーハウスは色欲のパーソナルカラーの青なのだ。
「王サマー! オ手紙ーー! オ手紙ダヨーー!
ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3」
その青き館で一人の少女の声が響き渡っていた。
少女は走りながら、まるでタックルをするかのように、自らが仕える王の部屋に勢いよく飛び込んだ。
「王サマー! ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3」
その部屋には、二人の男がいた。一人銀色の短い髪と切れ長の目が特徴の男だ。もう一人の正面に立ち、手に書類を持っていることから何かを報告していたのが、分かる。
「おやおや。機嫌がいいですね、アリス。元気がいいのは何よりですが、淑女たる者もう少し礼節を持って行動しなさい」
男の言葉を聞くと、アリスと呼ばれた少女は急停止する。その後、ブツブツと呟きながら、まるでロボットのようにカクカクとした動きで部屋をゆっくり進む。
「レイセツ……レイセツ……(°_°)」
そうして、手紙をもう一人の男の机に置く。
「王サマ、オ手紙、届ケニ、アガリマシタデス(`_´)ゞ」
その不自然すぎる姿を見て、銀髪の男は頭を抱える。
「ぷっ! はははははは! やめてくれ、ヨゼフ、アリス。全く、腹がよじれるぞ!」
そんな二人のやり取りを見て、椅子に座っていたもう一人の男が、腹を抱えて笑う。
男は、青く長い髪を後ろで括っており、薄く白い肌をしている、それはもう美しい青年だった。
彼こそ、アメリカの支配者、色欲の魔王ことラウザール=ブルウ、その人である。
「アリス……、あなた。……さては、先日渡した宿題をやっていませんね?」
「宿題? ソンナノアッタケ? (;´д`)」
アリスは露骨に冷や汗を書きながら、誤魔化す。
「これは、本日も沢山、宿題を出さねばならないようですね……」
アリスは、まるで死刑宣告を聞いた犯罪者のような、悲惨な顔になる。
「ノ、ノウ! 悪イノは絵本デス! 絵本が面白イノガイケナイデス! 私悪クナイ! Σ(゜д゜lll)」
「ほう? では、この世にある絵本が全てなくなれば、あなたは勉強するのかな?」
額に血管を浮き上がらせた姿から、ヨゼフが怒っているのはよく分かることだった。
「Why? ナンデ、ヨゼフハ、ソンナ悪魔ミタイナ事思イツクデスカ! 絵本ニ罪ハ無イデス! (><)」
必死に弁解するアリスだが、すでに言葉に矛盾が生じている。幼さ故の甘さが見て取れた。
「ふむ? あなたも絵本も悪くないなら、誰が悪い?」
底冷えするような声でヨゼフが問う。
「……! Σ( ̄。 ̄ノ)ノ」
自分の物言いの矛盾に気づいたアリスは、驚愕する。
「さて、悪いのはどちらかな?」
完全に悪役の表情で、ヨゼフがアリスに詰め寄る。
「オ、オウ……。ゴメンナサイ。私ガ悪イデス。m(_ _)m」
諦めて謝るアリス。それをヨゼフは……。
「許しません♪」
容赦なく笑顔で切り捨てた。
「……(T ^ T)」
アリスは声も無く、涙を零し始めた。
「まあまあ、許してやりなよ。まだ、十歳だ。そのくらいの年頃は、宿題をやらないくらいの方が健康的だし、欲望に忠実でなによりだ」
頬杖をつきながら、ラウザールが微笑む。
「む、しかしですね」
「相変わらず、硬い。硬いよーー、ヨゼフ。もっと、柔らかくしないと、男は硬いのは、ナニだけで充分だよーー」
カラカラと笑うこの下品な奴が自分の王だと思うと、ヨゼフは頭を抱えた。
「……下品過ぎます。王よ」
「あははは、そう? それは失礼。僕はほら、色欲だから。さてと、アリスも泣き止みな。あ、手紙ありがとね」
誤魔化して笑いつつ、アリスの頭を撫でて慰める。
「さてと、手紙かーー。誰からかな? ん?」
封筒に押してあった龍の刻印を見て、誰から来たか分かったラウザールは、手紙を開けて中身を見た。
「どちら様からのですか?」
「ん? 〝怠け者〟から」
ラウザールの言葉を聞き、ヨゼフの顔が強張る。
「そうですか。で、内容はなんと?」
ヨゼフの問いに、ラウザールは笑顔で答えた。
「それは行けば、分かるかなーー? 上手く行けば、さっきの件も解決するかもしれない。とりあえず、お忍びで『トライデント』に行く手配をしてくれる?」
突然の王の要求に頭を悩ませながら、ヨゼフは恭しく頭を下げた。
「かしこまりました。我が王」
準備をしようと部屋を出ようとした時、ラウザールはさらに続ける。
「おっと、飛行機のチケットは三枚で頼むよーー。行くのは、僕、ヨゼフ、アリスだ」
それを聞いて、アリスはラウザールに抱きつくが、ヨゼフは自分の主人に軽い殺意を沸いていた。しかし、ラウザールのやることには、無駄に見えて、実際、無駄であったことは一度もない。それ故に、王からの仕事はどれだけ、無理難題でもこなさなければいけなかった。その事実にヨゼフはため息を吐き、『了解しました』と部屋に言葉を残した。
《○》
一方、その頃、黒城家では……
「……よし!」
虚飾たる王がドヤ顔で、赤いランドセルを背負っていた。
《○》
『あれ? 今回はナレーション無し?
え? 休暇? そんなの聞いてn……
(回線が切断されました)』