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フィーンド・ルインカルマ  作者: 臣将汰
第一章【憂鬱なる魔王】
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10話『龍獣』


「ジークフリートがこの島に?」


『ああ、おそらく。ログスの目的はジークフリートの起動だろう。そのためにレクドを狙ったんだろうな』


「ジークフリート、魔王を殺すために作られた英雄兵器……」


 奏によってもたらされた情報によって、その存在は知っていた。

魔王倒すために太古の文明が作り出したオーパーツ。それが英雄兵器だ。英雄兵器は世界に数えるほどしか存在せず、遺跡の調査でその数は二十五個ほど存在することが明らかになっている。しかしその全てが発見されているわけではない。そしてそのうちの一つがジークフリートである。

巨大な人形兵器。かつて悪竜の血を浴びてその身が不死身となった英雄の名を冠するその兵器は、魔王の血をその身に浴びる事で起動する。その身と武器は神鉄と呼ばれる神の世界の金属で出来ており、あらゆる攻撃を通さない。その力は魔王と同格かそれ以上である。そんな化け物をログスは目覚めさせようとしていた。



《〇》



『行きますよ。憂鬱王!』


 ジークフリートのコックピットに入ったログスはそう宣言する。ジークフリートを見据えた進九はうすら笑みを浮かべる。


「またあったな。糞英雄人形……。この前の落とし前、つけてやらぁ!」


進九がそう猛ると、体から濃密な魔力の波動が溢れ出る。


「吠えろ! 五番目ザ・フィフス、ライヴ・ジーブ!」


 叫び声で呼び出された、進九の五番目の羊の王獣僕、ライヴ・ジーブ。ライヴ・ジーブの能力は強力な電力。それによって、ジークフリートは一時的に動きを止める。


『甘い! その程度では、これは止まりませんよ!』


 しかし、神鉄大剣バルムンクを取り出すジークフリート。それで電撃を切り裂く。


「そうか、ならあいつを使うしか無いな」


 距離をとる進九は、更に濃密な黒の魔力を編み出し始める。


『さあ、どうします?』


 それに気付かず、ログスは進九を挑発する。


「宮木さん。悪いけど、レクドを連れて出来るだけ、離れてくれ。頼む」


 そう進九は千尋にお願いする。


「……分かった」


 それだけ言うと、千尋はレクドを抱え走り出す。


『どうしました? もう彼女達には用はありませんが?』


 ログスは更に、進九を挑発する。


「そうじゃない。巻き込みたくなかっただけだ。コイツは手加減とかそう言うのが一切出来ないからな!」


 そう進九が叫ぶと、それは黒き雲に覆われ、周りの空間が歪みだす。進九の左目が黒く光り、そこから線が額の方に伸びる。その線は額で形を成し、龍の刻印となった。


『な、なんだ! この現象は!』


 ログスは突然の事に慌てる。


「嘆け、嘆け、我が運命さだめを。


謳え、謳え、龍の狼煙めざめを。


時は狂い、空は食われ、黄昏の笛を待つ呪いの龍よ。


失われし、憂鬱たる魔の王が、命じる。


喜べ、反映は消え、安らぎは無い。


悲しめ、殺戮は増え、戦いは続く。


世界を〝呪う〟なら、我が呼びかけに応じよ。


始まりのしもべ、原初の龍よ。我が身に降りかかる最悪を屠れ。


 起きろ、一番目(ザ・ファースト)、ブレク・オロス」


 まるで、巫女の祝詞のように、また、王が配下に命じるように言葉を紡ぐと、左額の刻印が輝く。次の瞬間、進九の上空の雲の中心に亀裂が走り、そこから一体の黒い巨大な龍が現れる。

 『龍獣』と呼ばれる、王の持つ最強の王獣僕、それが龍獣である。一番目の龍の王獣僕、それがブレク・オロスだ。


『グルァァァアァアアアアア!』


 黒き龍は雄たけびを上げる。


『こ、これが、『龍獣』!? だが、恐る事はない。例え最強の王獣僕だとしてもこのジークフリートに叶うものはない!』


ログスはバルムンクでブレク・オロスに斬りかかる。そして剣がブレク・オロスの首を捉えた時、異変は起きた。本来なら、ブレク・オロスの長い首がはねられるところだが、そんな事は起きなかった。起きた事は、バルムンクがブレク・オロスの首を捉えた部分だけが消失し、刀身の中央が消え、切っ先と刀身が途中から消えた奇妙な剣だけが残った。


『バ、バルムンクが! 一体何がどうして⁉︎ 神鉄で出来た剣ですよ⁉︎』


 初めてログスが恐怖を覚える。


「我が身に纏う武具となれ! 一番目、ブレク・オロス」


 その言葉により、ブレク・オロスは進九の手に集まり、槍へとその姿を変える。


『このままでは……。くっ』


 もう逃げることしか頭にないログスに、進九は構える。

 ジークフリートが後退しようとする。


「おせぇ! 喰らい尽くせ。ブレク・オロス!」


 しかし気にせず、進九が槍を投擲する。

 その槍がジークフリートの胴体に直撃した瞬間、槍は消えその代わりに、ジークフリートの体が削れていく。英雄兵器であるジークフリートには、自動修復機能が、ついているのだが、何故かそれが機能していない。

 それはまるで、見えない龍がジークフリートを喰らい尽くしていくようだった。


『じ、ジークフリートが! 何故、修復しない!』


「ブレク・オロスの象徴は時間と空間、そのものだ。ブレク・オロスに喰われた存在は、この時間から、空間から、世界から無かったことになる。初めから無い物は直さないだろ?」


 冷徹に進九から発せられた言葉に、ログスは絶望に染まる。


『なんだと! 魔王を倒すための英雄兵器が! 馬鹿な! こ、こんなことが、許されるのかぁぁぁぁぁあああああああ!』


 そんな絶叫と共に、ジークフリートは消滅した。


「許されるんだよ。それが魔王だ」


 いつの間にか出ていた月を見ながら、進九はそんな事を言った。



《〇》



『この後、レクドは進九が預かる事になった。

 そして、千尋は進九とレクドの監視役として隣の部屋に住む事になった。

 これからも三人の物語は続いていくことになるだろう……。

 って、コイツら、リア充か! ふざけんなよ!

 私だって青春したいんだ!

 見てろ。いずれ、この嫉妬王が主人公になってやる!

 覚えてろ……』(回線が切断されました)


 この作品はこれにて完結の筈でしたが、予定を変更し、連載したいと思います。

というわけで第一部はこれにて終了です。

 明日からも新たな作品を投稿しますが、それとは別にこの作品の連載は続けるつもりです。

 いつも通り朝の七時に投稿します。

 これからも応援して頂ければ幸いです。

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