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フィーンド・ルインカルマ  作者: 臣将汰
第一章【憂鬱なる魔王】
1/11

1話『魔王』

毎日午前七時に投稿します。

楽しく読んでいただければ幸いです。

『七つの大罪をご存知だろうか?


 失礼、まずは自己紹介をしなくては……。


 私は嫉妬の名を冠す七人の魔王が一人、


 ミレイ=ヴァイオレット、


 オーストラリアを支配する引きこもりの魔王だ。


 さて、話を続けるとしよう。


 七つの大罪をご存知だろうか?


 暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢、嫉妬。


 人間の持つ感情で、罪源といわれているものだ。


 元々は八つあったもので、


 暴食、色欲、強欲、憤怒、怠惰、傲慢、憂鬱と虚飾があった。


 そしてある時を境に、憂鬱は怠惰へ、虚飾は傲慢と統合された。


 そこに嫉妬が追加される。


 そして七つの大罪となった。


 今この世界は、七人の罪と竜の名を冠した魔王によって支配されている。


 その世界に魔王の名を失ったものが二人いた。憂鬱と虚飾だ。


 これはその二人の出会いと罪の物語


 全く羨ましい。嫉妬してしまうよ』



《〇》



 世界には昔から、人外種と呼ばれる種が存在した。


 獣人種、幻獣種、能力種、擬態種、そして魔人種。


 どの種も突出した力を持ち、人間は魔術、科学、陰陽術などを駆使し、力を拮抗させていた。ある種を除いて。

 それは魔人種だ。魔人種は高い身体能力に加え、体に強力な魔力を持ち、それによって一体の獣僕(ソウル)と呼ばれる魔力を具現化させる強力な獣を持っていた。

 さらに魔人種には決まって九人の王が生まれる。正確には引継ぎ受け継がれているのだが。

 その王は魔王と呼ばれ、それぞれに罪と竜の名を冠しており、竜の刻印が体のどこかに刻まれている。

 そして魔王は一人一人、魔人と比較にならないほど強力な魔力を持ち、王獣僕(スピリット)と呼ばれる島一つを軽く吹き飛ばしてしまうほど、強力な力を持つ獣を複数従えている。

 その圧倒的な力により、世界は今、力を失った二人を除いた、七つに分割支配されている。


 暴食は、ロシアを

 色欲は、アメリカ大陸を

 強欲は、中国を

 憤怒は、南アメリカを

 怠惰は、日本から太平洋を

 傲慢は、ヨーロッパを

 嫉妬は、オーストラリアを支配下においている。


 お互いの力が拮抗しているため、世界はつかの間の平和を手に入れていた。

 その七人以外の二人の魔王が、何故どこも支配していないかというと、理由はただ一つ。継承が途絶え、その最強ともいえる存在が消えたからだ。彼らの行方は誰も知らない。

 故にその存在は、消失を意味するロストと呼ばれた。



《〇》



 薄く不気味に、夜空が仄かに霞む。

 空へ昇る煙を、バチバチと音を鳴らしながら揺れる炎が照らしている。

 パラパラやガラガラと、粉塵と共に轟音を鳴らしながら、ビルや建物が崩れていく。

 その中で一人の少年が、地面を這いずって進んでいた。顔から血を流し、しかし頬には熱い涙で頬を濡らして叫ぶ。


『――――――っ!』


 その先には、黒のワンピースを着た幼い少女が、悠然と佇んでいた。

 肌は浅黒く、髪と瞳は透き通った銀色をしていた。

 少女は、薄くしかし柔らかく微笑む。

 ゆっくりと近づき、少年の頬に手を添える。


『……憂鬱だ。私は疲れた。長く生き過ぎた。お前は言ったな。『私の憂鬱をお前が埋める』と。自惚れるなよ。私は魔王だぞ。私の憂鬱は私だけのものだ。それに私は直に死ぬ』


 そう言われて、少年は声を無くす。

 しかし何かを言おうと口をあけるが、掠れた音が漏れるだけで、声にならない。


『……ぁ、……ぁ!』


 そんな姿を見て、少女は少年の体を抱き寄せた。


『無理をするな。お前は私が唯一認めた人間なのだから。だがな、そんなお前に悪いが、お前にはこの魔王(わたし)を受け継いでもらう』


 その言葉に、少年は首を激しく振る。それを否定するかの様に。だが、少女は聞き入れない。


『さあ、目覚めてもらうぞ。私に出来ないが、お前には、まだやることがあるだろう?』


 そうじゃない、そうじゃないんだ。と言いたげに少年は泣きながら首を振る。徐々に少女の体は輝き、少年に吸い込まれていく。


『最後に一つ。お前の言葉は私の憂鬱を消してくれた』


 もう顔と手だけしか残っていない少女は、両手で少年の頬を掴み、そっと告げた。


『ありがとう。進九(しんく)


 次の瞬間、少女は跡形も無く消える。


『――――――――――――ぁぁぁぁぁっっっっっ!!』


 声にならない奇声を、ボロボロの少年は叫び続けた。

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