ファティマ・アーデライトという女2
投下です。
ブックマーク増えてると嬉しいものですね。
もう少し戸惑うかな? とも思いましたが、無事に町に入れました。
私が居た時代とはやはり違うらしく、傭兵の互助組合のようなものができていました。
あのときにこのような組合があればもっと夜盗被害は抑えることができたのでしょうか・・・。
今考えても意味がないことではありますが、こういった無かった制度を見るとやはりそう考えてしまいます。
「・・・ガルム種一体につき、金貨5枚で話が付きましたので、三体分で15枚になります。こちら、お確かめください。」
ガルム種の報酬は金貨15枚のようです。これでどうやら一息つけそうですね。良かったです。
その稼いだお金を使って晴彦さんは装備を整えるようです。先を見据えられるなんて素て・・・
とと、晴彦さん歩くの早くてうっかりすると置いてかれちゃうんですよね。まってくださいよぅ。
「・・・金貨3枚といったところか。」
宿に着いた晴彦さんは併設されている工房に顔を出し武器を注文しました。
物も見せてもらいましたが、アレが金貨3枚ならかなり安いです。
お抱えの鍛冶師にも中々打てないような逸品でした!
身を守る大事な武器です。良い武器が手に入ってよかったですね! 晴彦さん!
セットで鎧もいかがですか? なんて、屋台みたいなことを言われました。
鍛冶師の腕もそうですが、甲冑師の腕も相当のようです。何気に胸部にブルーメタルの鎧片を使っているのが驚きでした。
ブルーメタルは鉄と霊銀の合金です。二つを溶かして混ぜ、魔的に合成することにより鉄よりも強度の高い物にできるのです。
勿論高級品で、鎧片とはいえそれなりのお値段がするとは思うのですが・・・
「・・・戦槌と合わせて8枚……いや、6枚でいい。」
正直、商売捨ててるんじゃないですかね!? というくらいの値段です。
私的には良い装備でとても嬉のですが、お店的には大丈夫なのでしょうか?
もう守女ではありませんし、干渉するべきではないのですが・・・
「ほぅ。こうみりゃ立派な男振りじゃないか。」
! そうでしょうそうでしょう! 晴彦さんの男振りの良さは半端じゃないですからね!
なかなか見る目があるじゃないですか! こんなにしっかりしている鍛冶師なら大丈夫ですね!
そんな風に一人頷いていると、晴彦さんは魔道具のことを聞いたようです。
そして奥から出されてくる一つのブレスレット。
一つの叡智の結晶のはずですが、今ではファッションの一部なのだそうです。
開発の厳しさを目の当たりにしてきた私にとっては少し微妙な気分です。
安価に手に入るのなら、それはそれで喜ばしいことなのだと思うしかないですね。
部屋を長期で借り、部屋の中で最初にやってくれたのは、私の骨を洗うことでした!
私は思念体で骨の感覚は無いのですが、晴彦さんが触れているのを見ると、何かこう、心弾むものがあります!
あぁっ! そんなに丁寧に肋骨を洗っていただけるなんて! 恥ずかしいです!
頚骨をそんなにやさしく・・・ふふっ。なにやらこそばゆくなってしまいます。
ポロリと晴彦さんの胸元から私の骨が落ちました。皮をはぐときに使っていた骨です。
私の骨だと気づいたらしく、少し、慌ててます。
んふっ。可愛い!
コンコンッ
・・・邪魔が入ってしまいました。どうやら、受付が娼婦の斡旋に来たようです。
私が居るから十分間に合ってます!
と、言いたいですが、思念体なんですよね・・・。
と思っていたら断ったようです。私の想い、通じたんでしょうかね!
翌日、晴彦さんは討伐依頼を受けて町の外に出ました。
見える範囲には敵影は無さそうです。
あ、森の中に入るんですね。
あそこの森ほど澱みは濃くないみたいですよ! 大丈夫。大丈夫です。
晴彦さんは危なげなく討伐を続けていきます。
この日稼いだのは金貨3枚でした!
一日で稼いだ金額としては結構な額だと思います!
額自体は妥当ですけど、怪我も無く、あれほど倒せたのは良かったです。
晴彦さんが一枚のチラシを見つけました。狂乱の猪にご用心。と書いてあります。
どうやら、澱みの花が関係しているようですね。
我がアーデライト国でも、澱みの花被害は大きかったです。
隣国の商業連合国がわが国に密輸し、人心を腐らせていました。
依存性が非常に高く、澱みの花を得るために肉親すら殺す。そんな事件が多かったです。
そんな物を食してしまった猪が居るというのが恐怖ですね。
澱みの塊を食べているようなものです。存在が魔獣に近くなっているはずです。
ひょっとしたら晴彦さんでも倒せないかもしれません。
いやな予感がします。逃げられればいいのですが・・・。
翌日、スキル取得のために教会に来ました!
幾つかのスキルを得られたようです。これでまた一つ強くなれましたね!
スキルは自身が努力した結果得られる物ですが、その際に神から祝福があります。
それらの技術を効率的に使えるようになったり、身体能力に補正があったり様々ですが、とても助けになるようなものばかりです!
神殿から退出する際、ロタル様の司祭にお会いしました。
何か、思い出せそうなのですが。・・・駄目です。欠落しているようです。
晴彦さんにお布施が必要だが、奇跡を見せてやると仰ったようです。
奇跡は普通では起こりえない事を成す業です。それぞれが祭る神の御業、神業を人の身で使う荒業です。
長く険しい修行の果てに使えるようになる業だと聞きました。
晴彦さんが使っている真言魔法も立派な神業です。
そうした業へのお布施は、大体金貨10枚程じゃないでしょうか。
媒体で金貨を使用しますから、結構必要なんです。
金貨じゃなくても大丈夫、と言いますか、本来は新麦とか、新種の野菜とか、そういったものを供物に捧げるものなんです。それらの代わりにそれらほどの価値のあるもの。という意味で金貨10枚程が必要になるんです。
あっと驚くような奇跡や、眼を楽しませてくれるような奇跡までいろんな奇跡があります。ロタル様の司祭はどのような奇跡を体得成されているのでしょうか! とても楽しみですね! 晴彦さん!
宿に帰ると狂乱の猪の知らせが張り出されていました。
注意喚起が目的でしょうか? ・・・うわっ報酬が物凄い。
これは、できれば近づかないほうがよさそうですね。
出会ったときに逃げ切ることができるのでしょうか・・・。
逃げるための準備も怠らないようにしなければなりませんね。
その翌日、やはりというか、嫌な予感通り、狂乱の猪と遭遇してしまいました。
猪が消えたと思ったら後ろのほうに移動してました!
思ったよりずっと早いです!
キメラほどではないですが、それでも目で追うのすら難しいです。
晴彦さんは昨日のうちに作っておいたソーントラップを猪との間に設置しました。
このソーントラップは森の中でも大変お世話になりました。
イエローベアーやビックフットなどの大型魔獣から逃げるときにも大活躍したものです。
猪がうまい具合に突進してきてソーントラップに足をとられました!
晴彦さんの渾身のフルスイングは見事猪をひっくり返しました! さすが、格好いいです!
ひっくり返った猪に魔力を貯めた斬撃の魔法を当てると、あっけなく仕留める事ができました。
澱みの花を摂取して半魔獣のような形態になっていて、皮も大分硬化していたはずなのに・・・。
さすがは真言魔法。といったところなのでしょうか。
晴彦さんもつかれて大変そうです。
でもでも、これで金貨80枚ですね! 当分はお金の心配をしなくてもよさそうです! もう少し貯めれば家も見えてくるかもしれませんね。
となると、奇跡は見ずに貯蓄に回した方が良さそうですね。
「これで80枚か。先ずは奇跡だな。それは見なければ収まらない。」
・・・どうやら、奇跡が先のようです。
我慢も良くないですからね! チャンスのある時に見ておくべきなのかもしれません。
なぜかやけに気になりますしね。奇跡。
そうして私たちは傭兵ギルドへと向かいました。