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性欲というものは全く、流石三代欲求の一つとでも言ってやれば良いのか。本当に厄介なものだと実感している。

世の中には数多くの性癖がある。社会にある程度認められている言ってしまえばノーマルなものから、(正常な人なら)誰もが認めるアブノーマルなものまで、僕が知らない性癖なんて、この世の中にはごまんとある。


その一種なのだろうか。僕の下で服を乱し肌を露出させる彼女にこれからしなければならない事を考えると僕は途轍もなく逃げ出したくなった。それこそ一目散に、百キロぐらい先まで走って逃げたくなった。けれどそれで彼女が傷ついてしまう可能性もゼロではない故に、僕にはどうすることも出来ないのだった。


彼女の肌に手を滑らせる。吸い付くような少し焼けた肌、時折ぴくりと跳ねる身体が愛おしい。膝を閉じようとする彼女の脚の間を陣取り、濟部を指先でくるくるといじれば、擽ったい、と笑った。

そして僕の手は、濟部から鳩尾、豊満な胸の谷間を通って彼女の細く折れそうな首に辿り着く。王宮を支える細い一本の柱。

僕が恐る恐る首に手を回すと、彼女は本当に幸せそうな顔をする。この世に生まれてきて良かった、貴方にこうされる為にこの世に生まれて来たのよ、と目で語り掛けるように微笑むのだ。それは極上の天女の笑顔と言っても偽りない。

ぐっと力を込め始める。そうすると僕自身も加減がわからなくなって、ただ喜びと悦びを感じる彼女の笑みに囚われたまま、力を入れることしか出来なくなる。ゴタゴタと並べていた御託も頭から消え失せ、性癖がどうとか、アブノーマルだとか、そんな事はどうでも良くなってしまう。

この時点で、僕に為す術は無くなったのだった。


涎を垂らした赤い顔で尚微笑み続ける彼女に、僕も何時の間にか微笑み返していた。幸せだ。そう思った。

他人から見れば歪でも、僕と彼女の間には然るべき愛情があり、情欲があり、悦楽があり、そして歓喜がある。


それを交わす為だけに、今日も僕は首を絞め、彼女はそれに微笑むのだ。

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