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夢に生きる  作者: 霜月 仁人
第2章 中学生
4/4

辿る 一

書いてて自分が楽しかったです。


ピピピピピピピピ

うるさい目覚ましの音が部屋に響き渡る。

うっ・・・うーん

音を止めようと必死で手を伸ばすも、目を閉じて寝た状態では目覚まし時計がどこにあるのかわからない。何分か目覚まし時計を止めようと寝ながら格闘していたが、なかなか止めることができないので仕方なく体を起こした。


目覚まし時計を止めようとしてあることに気がついた。

なんだこの目覚まし時計。俺のじゃない。


他にも部屋を見渡すとなんだかいつもと部屋が違う。

ん、ここはどこだ・・・見覚えがあるような無いような。

寝ぼけ眼を擦ってしっかり見ようとする。



「あーーーーーーーーー!!!!!!!!」


だんだん昨日の出来事が頭に蘇ってくる。

そうだ。俺夢から覚めたんだっけ。俺の今まで見てきた現実、全部夢だったんだっけ。


自分の体をすぐに確認すると、やはり中一の時の体のままで現実を思い知らされる。

はぁ、と溜め息を吐いた。

昨日の夜、寝る時に「明日の朝起きたら、俺は高二で全てが元通りになっていますようにっ!!」て天のお星様にお願いしたんだけどなあ。

自分が夢から覚めて実は中一だったという出来事が更に夢だったらいいのになあ、なんて少し抱いた希望は粉々に砕けた。

あ、でも昨日寝て今起きたのも、もしかしたら夢の中かもしれないわけで。

もうなにがなんだかわけがわからないなと思う。そう考え出すと頭がおかしくなってしまう。

夢の中であれちゃんと一日はまわって、俺はそこで生活しなければならないのだ。

もう考えることはやめる。


自分に言い聞かせて、無理に開き直って、朝ごはんを食べるために下に向かった。

自分が中一の頃って朝ごはんは何食べてたっけ。朝練でお腹が空くから結構しっかり食べていくのかな。それともクラブに遅れないように朝ごはんはパン一枚でいいとか、もう朝ごはん食べる時間無いまま家を出たりしているのかな。もう四年も前のことなんか忘れちゃったよ。

朝ごはんがどんなものか期待を膨らませながらキッチンに向かうと既に朝ごはんが作られて置いてあった。


「量、多っ!!!」


第一声はそれだった。量が余りにも多すぎる。クロワッサン5個。目玉焼きのせトースト。ハム。サラダ。それにコーンフレークがある。ミックスジュースとデザートのフルーツまで。

いや、この辺ならまだ俺にもわかる。

しかしだ・・・

テーブルの真ん中にどんっとカツカレーが置かれていた。

これは本当に朝ごはんなのか?いや、その前に一食分であるかどうかも怪しい。

中一の時の俺はこんな量を毎朝ぺろりと平らげていたのか。おかしすぎる。俺はそこまでデブではなかったと思う。どうかお母さんの勘違いであってくれ。お母さん、寝ぼけて間違えてカツカレー出しちゃったんだろ???な、そうだと言っていくれよ。なあ。



「量が多い?どうしたの工。いつもなら喜んで食べるじゃない。早く食べなさい。」

なかなか朝ごはんに手を出さない俺を不審に思ったのか母親が声をかけてきた。

「あ、うん。いや、美味しそうだなあって見とれちゃって。」

「よかったあ〜。昨日工がこんなカレーじゃお腹が膨れないって言ってたから、お母さん奮発してカツカレーにしたのよ。喜んで貰えて嬉しいわ。」

「あ・・・ありがとうママ。」

うわー。カツ、自分から頼んでいたのかよ。いくら運動部の男子中学生といえどもまだ中一だろ?こんな食べるもんなの?というかこの小さい体にこんな量の食べ物がおさまるの???昨日の俺、ほんと酷いことしてくれたなあ。自分にかなり殺意を覚える。カツがないと足りないってどんな胃袋だよ。しかもこれ完食しなきゃなんないじゃん。今日はちょっと量が多くて全部食べられなかったー。ごめんね、ママ。なんていうセリフ口が裂けても言えないじゃん。

「工。早く食べないと学校遅刻するわよ。でもまあいつもの工ならこれくらい5分で食べちゃうから大丈夫よね。」

5分?!?!この量を?!?!?!なんだ俺は化物なのか。すげえなあ。お母さんの言葉にだんだん追い詰められていく。怪しまれないようにするために俺もこの多すぎる朝食を遅くても10分以内には食べ終わらなくてはいけなくなってしまった。果たして出来るのか。無理だ、やっぱり出来ないに決まっている。俺晩ご飯でもこんなに食べねーよ。


いや、でも、待てよ。

今の俺は頭脳は高二だが体は中一の頃のものである。体は現役でこの量を食べていた時のままだからこの料理を案外簡単に食べることが出来るのかもしれない。きっとそうだ。何も怖くない。俺は、食べれる。


確信を持てたので俺は安心してこの朝ごはんを食べる準備が出来た。

よし、いただきます!!!!!大きな声で言う。こういうところから昔の感覚をつかんでいかないとな。ミックスジュースを飲む。美味しい。

そして、俺はそれが自分にとっての日常であるかのように完璧な笑顔とフォームで口の中いっぱいにカツを入れた。

ひと噛み、ふた噛み、




「う゛おおおえええええええええええええええ」


とてつもない吐き気が襲う。だめだ。ここで吐いてはいけない。お母さんが見ている。お母さんが丁寧に朝早くから心こめて作ってくれた料理、無駄にするわけにはいかない。コップに入っていたミックスジュースを手に取り、全て口の中に流し込んだ。



「おえっうええうおおおおおお っうぐ ぐおおっくん」

ハアハアと肩で息をする。辛すぎる。けれどもなんとか吐かずに済んだ。お腹の底からとてつもない不快感が沸き起こる。なにが中一の時の体だ。やっぱり朝からカツなんて食べられるわけがないじゃないか。どうしよう。でも今までの俺なら全部食べてたってことだろう?普通に感心する。どうやって食べていたか知りたい。


「やっぱり工ちゃんの食べっぷりはすごいわねえ。あんな大きなカツを一口で食べて更に一気にミックスジュースまで全部飲むんだもんね。美味しそうに食べてくれているのを見ると作った甲斐があったと思うわあ。ありがとう。」

母親が笑顔で言う。やめてくれ。もうこれ以上俺を追い詰めるのはやめてくれ。

もしかしたら中一の時の俺もこんな風に母親から追い詰められて仕方なくご飯を食べていたのかもしれない。それならちょっと同情する。

あ、けど自分からもっと量を増やしてくれだなんて頼んだんだっけ。

やっぱ同情は取り消しだ。ただの化け物野郎だ。



それから20分かけて俺はようやく、すぐにでも吐いてしまいそうな苦しい思いをしながらボリューミーな朝ごはんを完食した。

クロワッサン5個はお母さんに秘密でビニール袋に入れて服の中に隠した。



時計を見る。午前8時5分。遅刻してしまう確率60%。

久々の学校で緊張するが、ここでくよくよしている暇は無い。

「行ってきます!!!!」

俺は身支度もせずにスニーカーをつっかけ、家を飛び出して懐かしい中学校に向かった。



夢から覚めた初日からこんなに苦戦するとはこの先が思いやられます(;_;)笑

次回から工くんの二度目の中学校生活がスタートします!さて何が待ち受けているのでしょうか・・・!!R15とまではいきませんが少し残酷描写あります。苦手な方はご注意ください。

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