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夢に生きる  作者: 霜月 仁人
第1章 目覚め
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過去

頭がぼーっとする。

涎でびちょびちょに濡らしてしまった机の上には参考書が広げられていて、どうやら俺は勉強している間に寝てしまっていたのだと理解した。

しかしこの参考書、中一の時に使っていたものだ。

「あれ、俺なんで今更こんなの勉強していたんだろう。復習か・・・?」

そう一人で呟いて寝る前のことを考えようとしてみたものの、全く思い出せず、なんだかひどい頭痛までしてきた。

部活で疲れすぎちゃったんだろうか。明日の朝練は休もう。

俺はベッドにダイブした。



「工!!!起きなさい!!!!!」

次に目が覚めたのは母親の声でだった。

目覚ましを見る。午後7時47分。

あれ。夜だ。俺、晩ご飯食べずに寝てしまっていたのか。

ああもううるさいな。まだ頭がすっきりしない。

「ご飯いらないのーー???」

しんどい。このままもう一度寝てしまいたいと心から思ったが、お腹の音がぐうとなって俺は渋々下に降りることにした。

「いるって!!!ちょっと待って!」


階段を下りてキッチンに行くと既に父と母がちゃんこ鍋を食べ始めていた。

「あれ?直樹は??」

弟の姿が見当たらない。ちゃんこ鍋は直樹の大好物だ。いつもなら楽しそうに鍋奉行をしているのだが、まだ部屋にいるのだろうか。

「直樹やったら今日からサッカーの合宿やで。あれ、工にはまだ言ってなかったけ。鍋奉行おらんと鍋もさみしいなあ。」

笑って母親が言う。

「え。そうなん。聞いてないけど。」

「まあまあ。弟がめっちゃ好きで寂しいのはわかるけどそう不機嫌にならんといて。明々後日には帰ってくるから。な?」

なんでブラコンみたいに思われているんだ。高校生の兄が中3の弟好きとか気持ち悪い。しかも暑苦しすぎる。まあちっちゃい時は結構仲良かったけどさあ。

というかサッカーの合宿て直樹、高校受験に向けてサッカーやめたところじゃなかったっけ。合宿には行くのか。なんだそれ。まあどうでもいいけど。

「あーそう。あと、俺今日ちょっとしんどいから明日の朝練は休むわ。」

「朝練?え、あんた部活に入ったん?やめたばっかやん。もう大丈夫なん???」

母親が意味のわからない返答をする。

俺は大阪府立塩花高校テニス部正レギュラーだ。まずやめるとか有り得ない。

「お前、親に心配かけんように嘘ついてるんか。ええで。」

父親まで意味のわからないことを言う。

「その手の傷まで付けられて、杉山先輩にまで殴られてまで部活行くことないで。もう我慢せんでええんやで。」

杉山先輩・・・?はっとして自分の手を見ると右腕が包帯でぐるぐるに巻かれていて、包帯には少し血が滲んでいた。

杉山先輩は俺が中一の時に中三で俺を虐めていた先輩だ。頭も良く、テニスも上手く周りからも信頼されていた。更には生徒会長までこなしていて傍から見れば本当にスーパー人間のような人であったと思う。

しかし俺に対する虐め方は酷く暴力的で残虐で、毎日部活後に部室で俺を殴ったり裸にさせて写メを撮ったり俺のラケットをゴミ箱に捨てたり、本当に最低な奴だった。俺はその先輩に殴られて右腕を怪我させられ、それを見つけた両親に中一の冬、部活を辞めさせられたのだ。

しかし、それから杉山先輩は悪行がばれて学校を退学になって、あれから4年以上も経った今じゃ俺となんの関係もないし、消息も知らない。



それなのに。なんで・・・。



まるで過去に戻っているかのようだ。戻ってしまっているのか。いや、そんなことがあってはならない。

「ごちそうさま!!!」

俺は箸をおいて階段を駆け上がった。はやく、過去に戻っていないことを確かめたかった。証明したかった。








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