夢に生きる
運動神経抜群、成績よし容姿端麗の塩花高校二年生の城崎工という存在は現実を認めたくなかった中学一年生の少年が作り出したものだった。四年間にわたる精巧に作りこまれた長い夢が覚めた時、少年は絶望する。お互いに高め合った親友も笑顔の可愛い彼女も、実際にはどこにもいなくて、これらは全て少年の勝手な妄想であったのだ。そこには先輩からいじめられ、友達の一人もいない暗くて卑屈な一人の少年だけがいた。今まで信じてきたもの、四年間積み上げてきたものの全てがいとも簡単にあっけなく崩れさってしまった今、現実に引き戻された少年はこれから何を信じていけばいいのだろうか。これもまた夢なのかもしれないという大きな不安を胸に抱きながら少年は二度目の四年間を進む。