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最初の町《ペルソナタウン》→無力なる者の懺悔

 春風の親切さを異常と評するなら、彼女はその存在が超常的だった。

 達観したような穏やかな目に、膝裏のあたりにまで伸びた髪。

 俺と同じくらいの身長は、春風の町の中では一際高く見える( 頭の高さが均一なのも、この町の気持ち悪さの要因だ。工場で生産された人間を見てる気分になる )。

 彼女がこの世界の何かであることが分かっているのに、俺は声をかけることを躊躇してしまう。

 見るもの全てを圧倒するような儚い美しさを、彼女の横顔は湛えていた。

 …まぁ、いくら俺が圧倒されようと、マップ上での主導権はぐみにあるわけで、結果として俺は何の躊躇も躊躇いもなく声をかけたのだけど。

「あっ、えーっと…」

 しかし口を開くのは俺であり、何を話すか決めるのも俺の仕事だ。

 心の準備もないままに話しかけたので、何を話せばいいのか分からない。

 自慢じゃないが、女子に自分から声をかけた回数なんて、片手があればカウント出来るくらいだからな!

「いやぁぁぁああ!?」

「痛ぁぁぁああ!?」

 殴られた。

 凄い速さで殴られた。

「な…何こいつ…まさか、この訳の分からない世界の親玉!?」

 しかも盛大に壮大な勘違いをされた。

 てか訳の分からない世界って。お前このゲームのキャラじゃねーのかよ。

「とりあえず、まずは手足を千切って…」

「とりあえずで他人の手足を千切るな!!」

 誰だこいつのことを「儚い美しさを湛えた少女」と評した奴は!!野生の動物より猟奇的じゃねーか!!

「待てって、別にラスボスでも不審者でもねーよ」

「……………」

 めっちゃ白い目で見られた。

 明らかに疑っている。

 今にも「その格好でよくそんな白々しいことが言えるよね」とか言い「その格好でよくそんな白々しいことが言えるよね」やがったしかも一字一句全く違わずに。

「おいおいそいつは聞き捨てならねーな。俺の格好のどこが不審者なんだよ」

「ニット帽を被ってマスクとサングラスを着けた人が釘バットを装備していたら、それは不審者と言っていいと思うけど…」

「……………」

 仰る通りで。

 そういや、ぐみの悪意あるコーディネートのせいで、俺は今不審者なんだった…。

 背面の窓を睨み付ける。

 ぐみは目を反らし、吹けもしない口笛を吹いて知らん顔をしている。

 …後で覚えてろよてめー。

「ちょっと!空を仰ぎ見て誤魔化さないでよ。結局、あなたは何なの?」

「え?いや、空じゃなくて画面の向こうの妹をだな…」

「……………」

 今度は「この人あれだ、頭怪我しちゃった人だ…」みたいな目で見「この人あれだ、頭怪我しちゃった人だ…」るだけではあきたらず直接声に出しやがった。

 止めろよ、傷付くじゃねーか。

「まぁそれはさておき、道を聞きたいんだ」

「よくこの流れで道が聞けるわね…」

 見知らぬ誰かは大きく溜め息をついた後、「それで、どこに行きたいの?」と聞き返してくれる。

 ありがたいけどあれだな、この女子からは苦労人の気配がするな。

「この近くに洞窟とか森とかない?最近様子がおかしいとかって話があるとなお良いんだけど」

「それなら町の大通りを真っ直ぐ行くと洞窟があるわよ。そこに関して様子がおかしいって話は聞かないけど、そこに関して話す町の人の様子はおかしいわね。どうもあの洞窟、『なかったこと』にされてる感じがするっていうか…」

 …教えてもらっておいて何だけど、さっきまで不審者と呼んでいた奴を相手にこうも色々と喋っていいのだろうか。

 相談相手には不向きだな。

「…しかし、なるほど」

 おそらくその洞窟で当たりだろう。

 この町で『なかったこと』にされているということは、俺たちの知っている春風が『なかったこと』にした何かが、その洞窟にはあるはずだ。

「でも、あんなところに何しに行くの?それにあそこ、町の人が入り口を固めてて中には入れないよ?」

「…マジ?」

「マジマジ」

 またぞろバトル展開かぁ…。

 嫌だなぁ…。今の俺がバトったら完璧にアンダーグラウンドの仲間入りだよ( ビジュアル的に )。

「まぁ、大した用じゃねーよ。うん、ホント何でもねーから。じゃ、道教えてくれてありがとな!」

「……………」


  ◇


「…だから何でもねーってばよ」

「その格好で『てばよ』とか言わないで」

 すげぇ目で睨まれた。

 ナルトが好きなのか…つーか何でゲームのキャラにそんなプロフィールがあるんだよ。

 このゲームは春風の心が素材なんだから、春風が好きだってことかな。

「町で『なかったこと』にされた洞窟に不審者がやってくるなんて、事件の匂いがするじゃない」

「うーん…」

 不審者がやってきたんじゃなくて、やってきて不審者になったんだけどなぁ…。結果だけ見れば、怪しまれて当然か。

「あんたが洞窟に訪れる正当な理由を教えてくれたら、私もあんたに構わないのだけれど」

「…理由ねぇ…」

 言っても納得しねぇだろうなぁ…。

 ゲームのキャラでなくても「現実の知り合いの妖怪変化をどうにかするための手掛かりがあるかもしれないから」とか言われたら、最初に感じるのは憐憫だろう。

 また頭の痛い子扱いされるのは嫌だ。

 と、いうわけで。

「囚われの女子を助「ダウト」速えーよせめて最後まで言わせろ!!」

 まさかの支持率0%だった。

 くそぅ、一体なぜ信用してもらえないんだ。

「まぁ、仮に女の子を助けに行くっていうのが本当だったとして、その格好の男の子に助けられる身にもなりなさいよ…。不審者が恩人とか、不登校確定もののトラウマよ」

「…そこまで酷い?」

「それぐらい酷い」 マジかー…。

 何だよ良いこと一つもねーじゃん不審者装備。

「むしろどんなメリットがあると思っていたのよ…」

「しゃーねーな…。おーいぐみ!防具類だけでも元に戻してくれねーか?」

『ふゅー♪』

 …いや、だから吹けねーなら止めろよ。正直見ていて痛々しいんだよ。

 つーかお前、今のが今回最初のセリフじゃね?

 初セリフが『ふゅー♪』ってどーよ。

『…ところでマスター』

「ん?あぁ、そういや…うん、何でもねーや、どうした怜悧?」

『何でもなくないですよね今完全に私のこと忘れてましたよね』

「えーと、それよりどうしたんだよ、ところで何なんだ?」

『流さないでください逸らさないでください今はそっちよりこっちのほうが優先事項です』

「…いや冗談だよ、落ち着け。悪かったよ俺が悪かった」

『ではマスターにお詫びを要求してもいいですか?』

「良心的な範囲ならいいけど…それよりお前、俺に何か伝えたいことがあったんじゃないのか?」

『いえ、別に見知らぬ誰かが「うわ…電波系って初めて見た…」みたいな目でマスターを見ていたというだけです。そんなことより、お詫びというなら今度の日曜日に、買い物に付き合って下さいませんか?』

『あーっ怜悧ばっかりずるいよ!じゃああたしその次ねー!』

「……………」

「……………」

 見知らぬ誰かが物凄く悲しそうな目で俺を見ている…。

 そういやこの女子には画面窓が見えてねーんだから、そこに向かって話しかけたら完全に電波系として認識されてしまうことくらい、少し考えたら分かりそうなものなのに…。

「いや…待て、これはその…!」

 慌てて弁解を試みる俺だが、見知らぬ誰かの人差し指が、それを遮る。

 そして彼女は、聖母のように優しい微笑を浮かべ、まるで子供をあやす母親のように暖かな眼差しを俺に向け、口を開く。

「大丈夫。それでも私は、あなたの味方だよ」

「何一つ大丈夫じゃねェェェ!!」

 その後、とりあえず怜悧に2人と会話するための専用回線を繋いでもらった。


  ◇


「この洞窟には入れません。お引き取りください」

「ほら、だから言ったでしょう?この洞窟には入れないって。ねぇ、聞いてるの?」

 もちろん聞いている。

 しかし、残念ながらそれどころではない。

 今文字通り俺の目の前には、文字通り2つの選択肢が提示されているのだ。

『にーちゃん、どっちにするか早く決めてよー』

『この選択肢は時間制限付きのようです。あまりゆっくりとは考えられませんよ?』

 わかってる、早く決めなければ時間切れになることくらい。ただ、どうだろう。この選択肢は、案外その時間切れが正しい回答のような気がするのだ。

 だって。

「この洞窟には入れません。お引き取りください」


→・邪魔をするなら容赦し  ないぞ


 ・お望みとあらば靴の裏  も舐めます


「選択肢に悪意を感じるぅぅぅ!!」

「……………」

 見知らぬ誰かに「また発作か…」みた「また発作か…」いって早えーよそして何で毎回一語一句同じなんだよ。実はこいつ俺の心を読んでんじゃねーだろうな…。

 そういや、この女子の名前まだ聞いてねーや。

『もー!決めないならあたしが決めちゃうよ!』

「ちょっ」


→・邪魔をするなら容赦し  ないぞ  {ピッ


 ぎゃああああ!!

 やりやがったぐみのやつ!!どんだけバーサーカーなんだよ!

「ねぇ、どうするの?」

 ヤバい、この格好であんなセリフを言ってしまったら、今度こそこの名も知らぬ女子に犯罪者のレッテルを張られてしまう!

 しかもあの選択肢には何らかの強制力があるらしく、いくら口を閉ざそうとしても、俺の意志とは関係なく言葉を紡ごうとするのだ。

「………ッ!」

 しかし全く抵抗できないというわけでもなさそうだ。

 マップ移動時ほどの強制力ではないらしく、例えばセリフの内容は俺が決められるようなのだ。ただし、ここでも時間制限があり、それを過ぎるとは自動的にあの選択肢のセリフを喋らされるみたいだ。…曖昧な表現ばかりで申し訳ない限りだが、俺も初体験なので勘弁してほしい。

 とにかく俺がやるべきことはどうやら、時間内に選択肢のセリフをソフトな言い回しに変えて話すことらしい。

 バトルパートに入るのもやむを得ないと思わせるセリフ回しを考え出さないと、俺が何でも暴力で解決しようとするやつみたいになる…。

 この格好でそのキャラは致命的過ぎだ。 どうせゲームの中だし、気にすることねーじゃんと思う人もいるかもしれないけど、当人的にはそうもいかないのだ。

 自分がそういうキャラだと思い込んでしまうと、そういう行動を取るようになってしまう。

 怪異のキャラクターが、人間の認識に左右されるのと同じだ。あるいはその逆というべきか。

 だから俺は考えた。

 俺が犯罪者にならない言い回しを、RPGの主人公に足るセリフ回しを。

 そして、浮かんだ1つのセリフ。

 俺はそれを、主人公らしく、明るく、元気に、声に出す。

「レッツパーリィィィ!!」

「見知らぬ不審者が狂気の犯罪者にジョブチェンジした!?」

 見知らぬ女子が引いていた。

 実に実に。

 どうやら俺は、セリフのチョイスを間違えたらしい。


→拒絶Aがあらわれた!

→拒絶Bがあらわれた!

「まーた露骨なネーミングだな…」

「てか何で私もこのバトルに参加してるの?」

「共犯だと思われてんじゃね?」

「不名誉極まりない!!」

 うん、ごめんね巻き込んで。

『どうしようにーちゃん、逃げるのコマンドが選べない!!』

『てことはボス戦なんだろ?だったら仕方ねーさ』

 つーか、一応約束を守ろうとしてくれたんだな。

 まさか俺が人質としてここまでの力を持っていたというのか?

 いやいやまさかねぇ。

 ブラコンじゃあるまいし。

『いいの!?いいんだね!?後で「あんときたたかうコマンド選んだからご褒美は無し」とか言わない!?』

『言わねーよ!見知らぬ女子のほうは仕方ないにしても、何でお前からの支持率も0%なんだよ!』

 怜悧もそうだったけど、こいつらはどんだけ俺がそのご褒美とやらを撤回することを危惧しているんだ。

 内容がキスをするとかならまだしも、約束した以上は撤回なんかしねーよ。


 →たたかう  {ピッ

  まほう

  どうぐ

  にげる


 ぐみがコマンドを選び、それによって俺の動きが最適化される。

 最初に動いたのは俺。

 どうやら《拒絶》は《お人好し》ほど速さがないらしい。

 がつんっ!

→拒絶Aに55のダメージ!

「………うわ」

「リアルに引かないでくれよ!傷付くじゃねーか!」

「…釘バットで女の子を殴ったんだから、傷付いておきなさい」

 そう言って彼女は、自らの武器を構え、攻撃的な目をした春風―――《拒絶》に銃口を向けて、引き金を引く。

 ドンッ!

→拒絶Aに48のダメージ!

「あれ?まだ死なないんだ…。面倒くさいなぁ」

「俺以上に反省点満載じゃねーか!」

 「まだ死なないんだ」って言ったぞ!自分が銃撃した相手が立ち上がったのを見て「面倒くさい」とか言ったぞこの女子!

「えー?戦闘中にそういうこと気にするー?器が小さいなぁ」

「拳銃で女の子を狙撃したんだから、少しは傷付きなさい!」

「私はいいのよ!あんたと違って可愛いから!」

「お前絶対女子の友達いないだろ」

「何で知ってるの!?」

「誰でもわかるわ!!」

 自分の容姿を理由に好き勝手やるやつが同性からの反感を買うのは、あらゆる作品で使い古されたパターンだ。

 人のこと言えねーじゃねーか。

『…うん?今のにーちゃんの言い分、妖怪変化の正体を見破ったあたしの論理とほとんど同じなような…?』

「さーて気を引き締めろ、あいつらの攻撃がくるぞ!」

「え?あ、うん…どうしたの急に。何かを誤魔化すみたいな口調になってるよ?」

→拒絶Aのこうげき!

「………っ!」

『にーちゃん!大丈夫!?』

『っあぁ、平気だ…っ』

→りんりに16のダメージ!→拒絶Bのこうげき!

→りんりに14のダメージ!『マスター!』

『大丈夫だって、体力はまだ 3/4近くある!』

 不本意ながら、この町に入る前にレベル上げをしていたおかげで、ダメージはそんなにない。このペースなら、敗北の心配はほとんどないだろう。

「だとしても、結局攻撃を食らっちゃうのは変わらないでしょう?あんたがボコられる分にはいいけど、私が攻撃されたら嫌だし…」

「自己中の見本みたいな女だなお前は!」

「いやぁそれほどでも〜♪」

「誉めてねーよ!懐かしいなそのセリフ!」

『にーちゃん、楽しいお喋りもけっこーだけど、今は戦闘中なんだからね!』

『ん?あぁ、わかってるけど…』

 どうしたんだ?何かピリピリしてるような…。

「それよりさ、あんた何か大きいダメージが期待できるスキル持ってない?」

「スキル?そういやレベル上げのときに何か覚えてたな…」

 ステータス画面を呼び出し、魔法の項を確認する。

・まほう

 フルスイング


 ……………。

 いやいやいや。

 とりあえず、魔法じゃねーじゃん。

『ん?魔法使うの?りょーかい、任せてー!』


  たたかう

 →まほう

  →フルスイング {ピッ

  どうぐ

  にげる


「ちょっと待てェェェ!この格好でそのスキルはだめだろう!!この小説年齢制限かけてねーんだぞ!」

 今はまだ戦闘中の描写に関する苦情みたいなものはきてないけど、さすがにこれは…

「でもあんた、さっきも釘バットであの子を殴ってたわけだし、そんなの今更じゃない?」

「お前あんとき引いてたじゃん!何で肯定側みたいなスタンスなんだよ!」

「この世界で生き残るためにはね…綺麗なままじゃ、いられないのよ」

「騙されない!そんな風にそれっぽいことを言っても、俺は騙されないぞ!」

「それにこういうのって、血がドバーッとかブシャーッとかならなければ大丈夫なんでしょう?コロコロコミックのギャグ漫画には、キャラクターが車に轢かれて死ぬとかが日常茶飯事な漫画があるわよ」

「現実と漫画を一緒にするな!あれはギャグだからまだ許されてるんだよ!」

「でんじゃらすじーさんとか、あれ普通に大量の吐血をしてるじゃない」

「実名を出すな!あれはだからあくまでギャグタッチだから許されてるんだって!」

 …でも確かあの漫画って、シリアスな長編もやってたよな…。だとすれば、何か他の基準があるのかもしれない。

 素人がいい加減なことを言っちゃいけないよな。

「とーにーかーくー!血が出るわけでも相手が生々しく大怪我するわけでもないんだから、サクッと殺っちゃいなさい!」

「殺るかァァァ!!殺ってたまるかァァァ!!そこは越えちゃなら「えぇいうるさい黙れさっさと殺らないなら私があんたを殺る」見知らぬ女子が劇的ビフォーアフター!!」

 最初に不審者ルックの俺に引いてたお前はどこに行ったんだ!?まぁあのキャラが戻ってきてもひたすら引かれるだけだから「帰ってこい」とは言わないけどね!

「く…っ!負けるかよ!そんな安っぽい脅迫に、俺は屈しな…」

 かちゃっ。

「仰せのままに、マドモアゼル」

 …いや、待て。まず言い訳をさせてくれ。

 だってあれ、返事があと少し遅かったら発砲してたぜあいつ!目が据わってたもの!有言実行の信念がピリピリ伝わってきたもの!仕方ないじゃないか、殺らなきゃ俺が殺られるんだ!

→りんりのこうげき!

→りんりはまほう、 フルスイングをつかった!

 ごっ!!

→拒絶Bに 101のダメージ !

「拒絶Bィィィィィィ!!」

 許してくれ…!弱くて弱々しくて弱っちい俺をどうか許してくれ…!

「なかなかやるじゃない!これならまとめて倒せるわ!」

→謎の少女のこうげき!

→謎の少女は機関銃を掃射 した!

 ズガガガガガガガ!!

→拒絶Aと拒絶Bはまとめ てデスった!

「デスったって何ィィィ!?」

「死んだってことでしょ?」

「わかってる!わかってるけどよ…!」

 わざわざ面白く言う必要ないじゃん!これじゃあの2人は、あのギャグ1つのために命を奪われたようなもんじゃないか!!

『繰り返すようですがマスター、彼女らは感情ですので、命なんて最初から持っていません。この世界での戦闘はいわば心の葛藤と同義です。感情を押さえ込むなんて、誰でもやっていることでしょう?』

『…にーちゃんにとっては、そういう問題じゃないみたいだね…』

「ほらほら、何を放心してんの?私たちの冒険は、まだまだこれからよ!」

「俺は…なんて無力なんだ…」

 こうして。

 打ち切りされた漫画の主人公みたいなセリフを言う女子に曳かれて。

 俺は春風が『なかったこと』にした、心の奥へと足を踏み入れた。

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