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祭りは始まる前が楽しいと言いますが、ゲームも起動するまでが楽しいのかもしれません。……嘘ですやっても楽しいですやめられません

 なんだか寄り道ばかりしている感があるが、どうでもいいことに時間を使い過ぎている感は否めないが、もう少し我慢してほしい。

 大丈夫、ゆっくりではあるが、確かに物語は始まりつつある。

 もっともこの話の始まりをどこと定義するかは、意見の分かれるところだと思う。

 事の中心である( 彼女からすれば勝手に中心に据えられたという感じだろうが )春風 薫が体験した何かを始まりとするなら、遅すぎる開幕だ。どんだけ予告ダイジェストを流していたんだという話である。

 俺が春風に声をかけられたときや怜悧が生まれた瞬間が始まりだとしても前振りが長すぎるだろう。


 では今この瞬間を。


 春風の下駄箱から溢れ出た大量の手紙( 俺みたいなもんから見たら、5通は大量の部類だ )を発見したこの瞬間を始まりとしてならどうだろう。

「……………」

 正直、リアクションに困った。

 ていうか何だこれ。

 春風に人気があることは知っていたけど、5通って。

 どう見ても18歳以下にしか見えない青少年ぐらいはいるだろうけど( 決してロリコンなわけではない、テレビと教室で実際に見たことがあるだけだ )、一周回ってもはやギャグみたいにモテるやつまで実在するとは…。

 そもそもなぜ俺がこんな場面に立ち合っているかといえば、それはついさっきの出来事に起因する。

 どういうわけだか、春風が「一緒に帰ろー!」とか言い出した。

 そしてさらにどういうわけか、これにぐみが猛反発したのだ。


  ◇


「だーめー!!にーちゃんはあたしと一緒に帰るのー!」

「3人で一緒に帰るっていう選択肢もあると思うんだけど…それもだめなの?」

「だめだめだめー!!にーちゃんも何か言ってよ!」

「別に俺は構わないけど…何がそんなに嫌なんだ?」


  ◇


 そんな一幕を経て、ぐみは絵本バージョンで俺の制服の中に潜りこんでしまった。

 仕方がないから、そのまま春風と下駄箱に向かって今に至るというわけだ。

 しかしそこはギャグみたいにモテる女、春風 薫さんである。

 俺がリアクションに困っている間にも、慣れた動作で手紙( ていうかぶっちゃけラブレターだろう )を取り出し、慣れた運動でゴミ箱に向かい、慣れた動きで…って!


「ちょっと待てェェェ!!」


 流れるような動作でラブレターを捨てやがった!

 誰にでも優しいキャラはどこ行った!

「うん?どうかしたの緑野くん」

 さっきまでと変わらない調子で、そう返す春風。

「どうって…今の、は…」

「あはは。心配してくれるの?優しいね、ありがとー。でも大丈夫だよ」

 …いや、前言撤回だ。


 春風の様子がおかしい…どこを見ているのかわからない。


 まるで、俺ではない誰かを見るような、今ではない昔を見るような。

「これは罰で、わたしが背負うべき罪なんだよ。だからへいき。」

 今度こそ、わたしがたすけるからね。

 輝きを失った焦点の合わない目に俺ではない誰かをうつした春風は、それだけ言って帰ってしまった。

 まさかあれはいじめの一環なのかと思い、捨てられた手紙を開封してみてすぐ後悔した。

「…なんか電波全開だったねあの人」

「そーいうことはせめて本人の前で言え」

「言うのはいいんだ…」

 捨てられた手紙の執筆者に、勝手に読んだことを心の中で謝りつつ、いつの間にか人間フォームになっていたぐみに発言の訂正を促す。


 この瞬間を物語の始まりだとするなら、それはあまりにも唐突な始まりだった。


  ◇


「へぇー。この子が淋漓の言ってた新しい妹さん?」「緑野 怜悧と申します。以後お見知りおきを」

 春風がラブレターをダストシュートした日の3日後、教室では研修を終えた怜悧が黒兎と挨拶をしていた。怜悧は相変わらず感情の読めない無表情で、黒兎も相変わらず小学生にしか見えなかった。

「いつもの小学生扱いはともかく、相変わらずって単語が出るほど離れてないでしょ」

「そうなんだけど、なんか久しぶりな感じがするんだよな」

 まぁ2話しか間は空いてないのだけれど、いっそ懐かしくさえ思う。

「おはよー黒兎くん緑野くん!あっ、この子が怜悧ちゃん?初めまして、春風です!」

 黒兎と談笑していると、いつもの春風が会話に参戦してきた。

 しかし3日前の春風を見て以来、俺にはその普段通りな様子さえ異常に見えてくる。

「…初めまして、怜悧です。失礼ですが、マスターとはどういったご関係ですか?」

「本当に失礼だな!」

 うちの妹陣は悪くも悪しくも遠慮が無さすぎる。

 ただ、その遠慮の無さのおかげで春風が質問攻めにあっているので、この隙に黒兎に、春風の裏の顔…3日前の言動について聞いてみる。家業柄そうなのか、黒兎は学校の噂にやたら詳しいのだ。

「あぁ、その話なら結構有名だよ。少なくとも、告白のために軽く下調べするだけで耳に入るくらいには」

「…じゃああのラブレターはなんだったんだ?」

 嫌いだとわかった上で送るなんて、やっぱりいじめ…?

「いやほら、世の中には少し普通じゃない趣味を持ってる人がいるから。そういう人たちが、春風さんが自分の書いた手紙を捨てるのを見て喜ぶための手紙だったんだと思うよ」

「……………」

 やっぱりいじめじゃないだろうか。

「だからたぶん、そのあと勝手に手紙を見た淋漓も支持率が上がってると思うよ」

「……………」

 やっぱりいじめじゃねーか。

「いきなりそんなこと聞いてどうしたの?まさかとは思うけど、淋漓も告白するつもりなの?」

「いや、そーいうわけじゃねーけど…」

 そこから先は続けられなかった。九十九神シスターズに飛び掛かられたからである。

「にーちゃん!今のはどーいうこと!?ちょっと聞き捨てならないよ!」

「彼女の優れた点と私たち姉妹の劣っている点を具体的に教えてください。1週間もあればマスターにご満足して頂ける仕上がりになってみせますから」

「何でもかんでも恋愛に結びつけるな!俺はそういう安易な発想が大嫌いだ!」

 結局、飛び掛かってきた愚妹どもを引き剥がす作業のせいで黒兎との会話は打ち止めになった。

 妹×2を引き剥がすのに今までの倍以上時間を消費したことを除けば、実にいつも通りな朝だった。


  ◇


「しかしマスター。真面目な話、彼女は止めておいたほうがいいです」

「うん、あたしも怜悧とおんなじ考えだよ」

「真面目であれ不真面目であれ、その話はもう終わっただろうが。今さら蒸し返すな」

 昼休み。

 新たに加わった怜悧によりぐみの盗み食いは阻止され、久々に落ち着いた食事ができる( ぐみが生まれて以来だ )と思って迎えた昼休みは、怜悧のそんな一言から始まった。

「まぁそう言わずに聞いてください。彼女は人間ですが、どういうわけか微かに妖気を感じるのです」

「それ…!妖怪変化の前兆じゃないか!」

 怜悧のセリフに、弾かれたように黒兎が反応する。

 黒兎は陰陽師の家系で、その仕事は妖怪変化を代表とする怪異関連の事故の対処だ( 他にも怪異が起こした事件を解決する仕事があるが、同じ陰陽師でも事件と事故では、いわば部署が違うらしい )。

「しっかしいくら怜悧が怪異だからって、素人に先越されんのはプロとしてどうなんだよ」

「う…そうなんだけど…。っそれより、早く対処してこないと!」

「ち…逃げたか」

 まぁ、確かに早く対処しないとまずいのだが。

 妖怪変化って、深みにはまると滅するしか( 説明するまでもないと思うが、殺すということだ )なくなるらしいし。

 黒兎の対処を待つこと3分、一仕事終えたみたいな顔をして、黒兎が戻ってきた。

「よー、おかえり。どうだった?」

「何事もなく終わったよ。春風さんも協力的だったし」

 達成感に満ちた黒兎の報告に怜悧が首を傾げる。

「…その口ぶりだと、対処に非協力的な人がいるみたいに聞こえます」

「うん、たまにあるんだよ。自分が怪異になりかかっているっていうことが受け入れられなくて、結果的に怪異化が加速しちゃうパターンが」

「そうなのですか?」

「ジジツから目を反らしたダイショーってことだね!」

 ぐみがもっともらしい横やりを入れる。

 構ってほしかったのか?

「まぁ厳しい言い方をするとそうなるのかな。他にも、対処後に悪化するパターンとかもあるんだよ」

「え、マジで?」

 それは知らなかった…というより、それは対処が甘かったってことじゃないのか?

「いや、このパターンは対処の出来に関係なく、対処をしたことが悪化の原因になるんだよ」

「えー?対処って、大丈夫な状態にすることじゃないの?」

「そうなんだけど、手術は大がかりなほど当人への負担が大きいのと同じだよ。妖怪変化っていうのは、人間が暗い感情を溜め込んだときに、その感情を苗床に怪異化することを言うんだけど、これに対処を施すと、抱えた感情が大きいほど心に負担がかかるんだ」

 だいぶややこしい話になってきたせいか、ぐみはすでに舟を漕いでいる。

 怜悧はそれとは対照的に早く続きをと黒兎を急かす。…兄弟は年下のほうがしっかりした子になりやすいと聞くけど、ここまで顕著なもんなのか?

 「いくら対処を施しても、一度芽生えた感情は無かったことにはできない。ちょっとしたきっかけで再燃し、対処を施されて弱った心を一飲みにしてしまう」

 結局は、ぐみちゃんの言った通りなのかもね―――と。

 黒兎は怪談を締めくくるように、妖しく笑ってそう言った。

 結局、その日の昼休みの話題は、黒兎の妖怪豆知識に終始した。


  ◇


 まぁ、ここから先は賢明な読者の皆さまの予想通りだ。

 もうバレていると思うので先に言ってしまうが、あの後春風は闇に飲まれ、俺たちは春風が助かるために頑張った。

 オチの分かりきった物語を読むのは退屈だろうが、先に述べた通りこの話は喜劇だ。

 意気込んで風車に挑む空回りな道化を笑ってくれれば重畳だ。


 では、物語を再開しよう。


 黒兎と妖怪雑学を語り合い、家に帰ってから初めて兄妹3人で買い物に行ったあの日から。


「…あのなぐみ、お前子どもの頃ならまだしもこの歳になってまで兄の腕にぶら下がるな。重いし歩きにくい」

「…え?だめなのですか?」

「ちょっと待て怜悧、何でお前まで空いてるほうの腕を猛禽類のような目で狙っているんだ」

 日もすっかり落ち、太陽に変わって街灯が道を照らす時間。

 なぜこんな時間に妹を両腕にぶら下げるという一風変わったスポ根な場面が出来上がっているのかといえば、ジークが倒れたからだ。

 ジークはTシャツの九十九神で、その能力《過剰な重ね着》( 『ルビはアンダーウェアだ』と母さんが得意げに言っていた。ぐみがああなったのは確実に母さんのせいだ )は、着用者として登録した人のダメージを肩代わりするというものだが、家に帰ったらそのジークが文字通りボロ雑巾と化していた。

 俺たちはそんな酷い怪我を負う機会はなかったので父さんか母さんか、あるいは両親のダメージを肩代わりした結果なのだろう( あまりのダメージ量に、ジークが人の姿を保てなくなっていた。…俺が車に轢かれたときでもこれほどではなかった )。

 大慌てで陰陽師に一報を入れた( 存在が危うくなった怪異をつなぎ止めるのも彼らの仕事だ )俺たちは、そんな理由から自力で食料を調達しなくてはならなくなったのだ。

 とはいえこのパーティーには料理ができる奴がいなかったので、予算の都合からコンビニ弁当を買うことになったというわけだ。

「…しかしジークさん、あんなときでも家の心配をするんですね」

「運ばれる直前まで、洗剤の分量とかご飯代のある場所とかをにーちゃんに教えてたもんねぇ…」

「本当にどこまでお母さんなんだよ…」


 そんなことを道々話しながら歩いていたら、突然何かが降ってきた。


「うわぁっ!?」

「………っ!!」

「んなっ…何だぁ!?」

 地面はコンクリートで舗装されていたし、それは地面を砕くほどの勢いで降ってきたというわけでもない。

 視界は良好だし、街灯だってついている…だから。

 だからそれが何なのかを、俺は視認できていた。


 しかし、それが何なのかを理解する前に、それは俺に狙いを定めて襲いかかる。


「―――ッ!!」

 俺が無傷で絶句できたのは秘めた力が解放されて超人的な回避をしたからとかではなく、ぐみが俺に飛び付いて横っ飛びしてくれたからだ。

 情けねー兄貴である。

「何こいつ…災害型怪異!?」

「姉さん、落ち着いてよく見てください。でないと私は姉さんをダメな子呼ばわりしなくてはならなくなります」

「…なんか妹からの風あたりが厳しい気がするよぅ…」

「この不安定な妖気、闇を纏った人のような姿…妖怪変化の症状と酷似しています。つまり…」


「あー、なるほど!この人春風さんか!」


 やっぱり、と。

 俺は、最初にそう思ってしまった。

 こいつの目が、下駄箱のところで見た春風の目によく似ていたから。

 どこを見ているのか分からない―――目。

「何でその結論に達したのか興味の尽きないところですが、つまりこれは元人間であり、そして…」


「何でってそりゃ、あれだけ露骨に伏線張ってたら誰でもわかるよ〜」


「お前そんな根拠どころか違和感とさえ言えないようなことであいつの正体を断定したのか!?」

 俺の同意を返せ!

 それとも妹のスペックの低さを考慮しなかった俺が悪いのだろうか…。

 余談だが、この楽しいおしゃべりには妖怪変化も暴力枠で参加している。

 堕ちたばかりなせいで体が馴染んでないのだろう、実はそんなに速くない妖怪変化の攻撃は、真人間の没個性な俺でも避けられる。

「そんなバカな根拠で人の話の腰を折らないでくださいダメ姉さん」

「ダメ姉さん!?怜悧今あたしのことダメ姉さんって言った!?」

「そんなことはどうでもいいんです。重要なのは、マスターが協力してくだされば、この…人?を人間に戻すことができるということです」

「……………」

 ……………。


 は?


「俺が!?何だそのラノベ展開!?」

「事実は小説より奇なり、ということです」

「ということですじゃねーよ!!せめて納得のいく説明をしろ!」

「この場にいる人間がマスターだけだからです」

 この妖怪変化を助けるにあたって、心の能力が必要なのです―――と。

 怜悧は、その理由を話しはじめた。

「ざっくり説明しますと、私の能力でマスターをあの…人でいいですよね、あの人の心の中に送り込むことができます。そうしたらあとは、妖怪変化の原因を直に処理することが可能です」

「マジでか!?」

「マジです」

 対妖怪変化を生業とする黒兎から見たら反則みたいな能力だ。

 と、そのとき。

「う…うぅぅ…っ!」

「お!?喋った!春風さんが喋ったぞにーちゃん!」

「だからダメ姉さん、漫画脳な根拠であの人を春風さんと断定しないでくだ…」


「あああぁぁァぁァああアアア!!」


「っいけません…闇が馴染んできています。このままでは陰陽師に通報して滅してもらうしかなくなります!マスター!」

「おう、任せろ!」

 やっべー、何だこの展開、すげーテンション上がる!

 これ完全に俺が主人公な流れじゃん!

「ではまず、マスターはラインを繋いでください!」

「…………へ?」


 ラインって何?


「心には互いを紡ぐ能力があるでしょう?あれであの人の心を繋いでください!」

「いやいやいや無茶を言うなァァァ!!心にそういう能力があるとは言っても使い方がわかんねーんだよ!!」

 閃きって自分の意思で起こせる現象じゃねーだろ?それと同じだよ!

「だって自分の心でしょー!?にーちゃん何で使えないのさー!」

「うわっ!?さっきより速えぇ!」

 右、左、また右。

 襲ってくる妖怪変化の攻撃が鋭さを増し、ラインどころか会話さえ難しくなってきた…!

「《本の背表紙って地味に痛い》!」

 妖怪変化と俺の間に入り、技名を叫んで一閃する。

 しかししょせん本の背表紙で殴った程度のダメージしかないので、相手は全く怯まない。

 妖怪変化がぐみとバトルパートに入り、ここぞとばかりに声をあげる怜悧。

「今ですマスター!ラインを繋いでください!」

「だから無理だって!繋ぎかたがわかんねーんだよ!!人間は訓練しなきゃ何もできねーんだ!!生まれた直後に二足歩行して白米を食す赤ん坊がいるか!?」

 俺は寡聞にして聞いたことねーぞそんな気色悪い赤ん坊!

「けど、春風さんは友達でしょう?一度ラインを繋いだことがある相手なら、もう一度同じことをすれば…」

「あいつが春風かどうかなんてわからないだろうが!」

 ぐみのギャグのせいでなあなあになってたけど、あいつが春風だと決定付けるものは何もないからな!?

「大体友達っつーのも春風が勝手に言ってるだけ…」

 …ん?

 ちょっと待て…一度繋いだことが、ある?

 要するにラインってのは、相手との繋がりのことなのか?

 そういうことなら…そしてあいつが春風なら。


 ど素人の俺にも、ラインを繋げる方法があるかもしれない!


「…失敗しても、がっかりするなよ?」

「私と姉さんは、どんなマスターも大好きです」

「…例えば、実は人殺しな過去を持ってたら?」

「それでも大好きです」

「そこは嫌いになってもらいたいんだが…」

 リスキーな妹だ……。

「それにマスターがそんな殺伐とした人なら、私のダメ姉さんはあんなにふわふわしていません」

「…そーだな」

 その通りだ。

 俺は大きく息を吸い込み、自分の考えが間違ってないを考える。

 重度のお人好しにして、極度のおせっかい。

 春風 薫と繋がる方法はこれで間違っていないかを考えて―――吸い込んだ息を、喉を震わせるために吐き出す。

 力強く。



「春風!!今困ってんだ、助けてくれ!!」



 瞬間。

 俺とあいつの間に、光が弾けた。

「…ありがとうございますマスター。ラインを確保致しました。次は私の番ですね」

 怜悧の髪が踊りだす。

 それは風が吹き上げるように舞い、やがては光と戯れる。

 光の中に1と0の羅列が浮かぶ頃、輝きが強さを増して視界を塗りつぶす。


「…―――ゲーム、スタート」


 物語がいつ始まったかはわからない。

 けれど、俺が事件と呼んだ喜劇は、この瞬間に始まった。



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