閑話→とある少女の幸福回顧
憂鬱で仕方がなかったはずの新たな生活を、しかし私は満喫していた。
理由は簡単、友達が出来たから。
「るかちゃん、おはよー!」
「うん、おはよー!」
教室に入ってすぐ、友達のるかちゃんに挨拶をする。そのあとは先生がくるまでおしゃべりして、休み時間には一緒に遊んで、放課後にはたまにるかちゃん家で遊ぶ。
ありふれた幸せだったかもだけど、私は楽しかったし、るかちゃんも満喫してたと思う。
「にしても『るかちゃん』って呼び方になれちゃうなんて…。私も普通じゃなくなってきたのかなぁ…」
「あはは、その言い方だとまるで私が変な人って言われてるみたいだねー!」
「…そう言ったつもりだけど…」
「………」
「………」
「あはは、その言い方だとまるで私が変な人って言われてるみたいだねー」
「丸々そういう意味だよ!?」
リテイク失敗。
真っ向から包み隠さず言われちゃった。
そんなに変かなぁ…私は普通だよね?
「自分で普通って言ってる人ほど普通じゃないらしいよ?」
「…るかちゃんひどい…」
若干泣きそうなのをこらえて非難する。でもるかちゃんはそんなのお構い無しに、お胸を張って『まぁ、私は普通だけどね』みたいな得意顔。
…涙は女の武器だって聞いたことがあるけど、同じ女の子には効果がないみたい…。
「まぁ、私は普通だけどね!」
「…あれ?るかちゃんの主張と行動が噛み合ってないような?」
「………?そうかな?気のせいだと思うけど…」
「…気のせいかな?」
「気のせいだよ!」
「気のせいかー」
こんな感じのおしゃべりをして過ごするかちゃんとの毎日に、暖かくって幸せだった。
教室のどこかから、私たちに向けられた悪意に、気付けないほどに。