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プロローグ

 春風薫(はるかぜかおる)は、俺の通う暁高校の有名人だ。


 もっとも、それは頭がいいとか運動ができるとかではない。


 春風 薫という女生徒はその性格が有名なのだ。


 重度のお人好しにして、極度のお節介。


 それが入学からたったの1週間で名を馳せた春風 薫のキャラクターだ。


 通りすがりのおばあちゃんの荷物を持つとか、家無き人に仕事を紹介したとか、自分を殺そうとした殺人未遂犯の裁判に弁護側で出席したとか。


 そして、そんな噂(百歩譲って二番目はともかく、さすがに三番目は嘘だろう)に真実味をもたらす、彼女の親切への執着。


 誰にでも分け隔てなく、誰であれ優しく接するという彼女の逸脱ぶりは、もはや校内に知らない者はいなかった。


 とはいえ、本人の前で困ったりしなければ実に無害であったし、頼めば掃除当番、黒板消し、ゴミ捨てにプリント運びと、皆が嫌がる雑用でも嬉々としてやってくれるので、教員を含めた全員に重宝されていた(彼女の乱用を防ぐための委員会が設立されたほどだ)。


 そんな彼女の前である日、不覚にも俺は困ってしまった。


 そのせいで俺は、荒唐無稽な事件に巻き込まれていくことになる。


 いや、この言い方はきっと正しくない。


 発端は俺の間抜けな失敗だし、巻き込まれたというより勝手に首を突っ込んだと言ったほうが正しいと思う。


 そもそも事件など最初から起きていないとさえ言えるだろう。


 だからこれは、きっと風車に戦いを挑んだ、滑稽な道化を描いた喜劇なのだ。



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