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計画その3 真剣勝負

「じゃあ君はあれかね、ヘリを使うのを禁止すると言うのかね?」

「はい! そう言ってるんです!」

 はぁ~。マジ大変だよ。何でいちいち説明しなきゃいけないんだよ。鬱陶しい。なんでこんなにも偉そうに話が出来るのか理解できない。そもそもこいつ、タイイとか名乗っているから、自衛隊とかの大佐かと思っていたが、本当にそうなのか疑問に思ってきた。威厳があるようには見えるし、自衛隊にあるような巨大なヘリコプターを使っていたから、もしかしたら本当に偉いなのかもしれないが、迷彩服のコスプレをした、ただのオッサンにも見えてくる。

「バイクも駄目なの~?」

「当たり前です!」

 このオカマもマジで気持ちが悪い。別にオカマは否定しないさ。人間生きていればいろいろあるし、このような人種だって存在する。それはいい。しかし、彼は、顔が悪人。格好もエージェントっぽいし、サングラスの中に薄っすら見える目も、殺し屋の如く怖い。ギャップがムカツクんだ。

「それに、サスケさん。缶への接近は地上から来てください」

「何故でゴザルか?」

 この忍者の嘘っぽい。何か日本以外の国の人が勝手に想像した忍者像のようだ。銀さんや蛇鬼はいい。実際に凄いし、忍者の格好をしているわけでもないのだから。でもこいつは違う。やはり忍者のコスプレをしたオッサンにしか見えない。

「いいですか? 缶蹴りは地上の競技なのです。つまり、地中から攻めるのは禁止なんです。これは、日本缶蹴り暗黙のルール第二条の規約にあります(嘘)ので、守ってください」

「何と……そのようなルールがあるのでゴザルか?」

「はい。約八千ほどあります」

 何か、すげぇ驚きの目で忍者に見つめられているんですけど。ねぇよ? そんなルールねぇよ? 最近のゲームでもそんな数のルールないよ? わかってるのかな?

「では、水遁の術という水を操る術で缶を流すのは第二十条とかでゴザルか!?」

「水遁の術は第百七十条です。ちなみに火遁の術は七千二百八条です」

 ここまで言ったら普通嘘だって気が付くよな? 凄く感心した目で俺を見ているんですけど……。まぁいいや、騙せているなら。

「まぁとりあえず皆さん、わかりましたね?」

 三人のオヤジは頷いた。とりあえずもう、普通の缶蹴りが出来るだろう。やっと俺の能力を発揮する事が出来る。

 これからが本番だ。

「2……1……0! 行きますよ!」

 そう言って、俺が缶から離れた時だった。何故か目の前に忍者が現れた。馬鹿じゃないか? 俺の足元には缶が置いてある。名前を言って、缶を踏んでしまえば終わりだ。

「ニンジャさんみっ……え?」

 目の前の忍者が三人に増えていた。あれ? 目が疲れたのかな? 俺は手で目を擦って、改めて五人になった忍者を見た。あ~、なるほどね。その手で来たか。そう思っている間に、忍者は十人に増え、俺を囲っていた。そして、時計回りに、十人の忍者が走り出した。どんどん回転が早くなっていく。

「はっはっは! どうだ! 私の分身の術!! これで、どれが本物かわかるまい!!」

 うわ、ムカツク。すっげぇ勝ち誇った目で俺見てるよ。

「どうだ! 手も足も出ま……」

「サスケさんみっけ!」

 俺は十人の忍者を無視し、缶を踏んだ。

「ちょ……ちょっと待つでゴザル!」

「そうでゴザル!」

「それはないでゴザル!」

「ルール違反でゴザル!」

 十人が一列に整列した。そして、それぞれが俺にツッコミを入れた。

「どうしました?」

 俺が皮肉っぽくそう言うと、十人の忍者の抗議が始まった。

「本物を見つけないと駄目でゴザル!」

「そうでゴザル!」

「分身して混乱させる計画が台無しでゴザル!」

「そうでゴザル!」

 そうだと思ったよ。本当に馬鹿な奴だ……。

「では質問ですが。実際、本当のサスケさんはどの方ですか?」

 俺の質問を聞いて、目の前に並ぶ忍者全員が唖然とした顔で溜息をついた。

「何を言っているのだい? 私が本物でゴザル!」

「何を言い出すんだ!? 私が本物でゴザル!」

「冗談を言うな! 私が本物でゴザル!」

「お前こそ冗談言うな! 私が本物でゴザル!」

「冗談は顔だけにするでゴザル! 私が本物でゴザル!」

「お前達! いい加減にするでゴザル! 私が本物でゴザル!」

「この詐欺師め! 私が本物でゴザル!」

「何を言うか! お前なんか死ね! 私が本物でゴザル!」

「私以外の九人は嘘つきの大馬鹿やろうでゴザル! 私こそ本物でゴザル!」

「嘘つきは私以外の九人でゴザル! 私が本物でゴザル!」

 はいはいはい。誰でもいいよ。っていうかお前達自分に対して酷い事を言っているが、その辺は面白いからいいか。

「あの~」

『何でゴザルか!?』

 うわ、すげぇ。声がぴったりだ。その辺はやっぱり同じ人間なんだな。

 いやいや、感心している場合じゃない。そろそろ頃合だ。

「一つ提案があるんですが、分身を解いたらいいんじゃないですか?」

『……なるほど』

 そう言って、忍者がみんな揃って、合掌した。そして、眼を瞑り、何か怪しい呪文を唱え始めた。どこからともなく煙が上がり、忍者を包み込んだ。ゆっくり煙が消えていくと、十人いた忍者は一人になっていた。

「どうだい? これで私が本物だと、わか……」

「サスケさんみっけ!」

 そう言って、俺は改めて缶を踏んだ。

「あ!! インチキ!!」

「何か問題でも?」

 これで俺は一人、確保した事になる。やっとだ。やっと俺の『鉄壁の鬼』の力が発揮できる。

 あと二人。大尉と殺し屋だ。きっと一筋縄では行かないのは目に見えているが、きっと捕まえてやる。俺はマジだ!

 俺はまるで獲物を狙う肉食獣のような目つきで、辺りを見回した。どこだ? どこにいる? 

 俺が振り向いたその時、記念碑の辺りから、誰かが近づいてきた。誰かわからないが、還暦過ぎくらいのおじいちゃんだった。ゆっくり、ゆっくり、俺の方へ近づいてくるおじいちゃんの表情は、恐怖に怯えていた。近づいてきた事で気が付いたのだが、そのおじいちゃんの背後には、ぴったりと殺し屋が張り付いている。それに気が付いた俺は、缶に近づき、それを踏もうとした。その時だった。

「動くな!!」

 殺し屋が叫んだ。その声で驚いてしまった俺は、動きを止めた。やべぇ、殺気を感じた。動いていたら、殺られていたかもしれない……。

「それ以上動くと、この人の命はないわ」

 そう言って、殺し屋は、おじいさんの首根にナイフを押し当てた。

「た……助けてくんろ~」

 おじいちゃんが、苦しそうにそう哀願した。いや~、何ていうか、人質になるために生まれてきたみたいに、似合っているよ。うん。おじいちゃん、すっげぇ輝いてるよ。何か目から零れてる涙も生々しいし。

「助けてくんろ~。わ、わしゃ、まだ死にたくねぇんだよぉ。あと五十年は生きてぇんだよ~」

 えっと、見た目八十前後なんで、百三十まで生きると。すげぇな。その意気込みは、関心に値するよ。

「きょ、今日は、お隣のエツコさんとカラオケ行くんじゃ~。助けてくんろ~」

 うわぁ~。この年でまだハッスルしますか。凄い生命力ですね。その意気込みは、関心できねぇ。

 まじかよ……。俺が何かしたら、このおじいちゃんが殺されちまうのかよ……。

 俺は焦った。そして、どうしたらいいか対策を考えた。何か良い口車はないだろうか。

 一歩ずつ、殺し屋が缶に近づいてきた。やばい。このオカマに缶を蹴られたら、せっかく確保した忍者も逃がしてしまう。俺は、歯を食いしばった。

 っていうか、缶蹴りに勝つためにここまでするのかよ! 俺は、目の前にいる、勝つためには手段を選ばない大人に落胆した。しかし、気を落としてばかりはいられない。俺はそんな大人と戦うために選ばれた戦士なんだ。こんな大人たちに苛められて悲しんでいた少年の為に、俺は戦うんだ。そう、俺は出来る男なんだ!

「いいんですか?」

 俺の言葉に、殺し屋は足を止めた。

「何が?」

 殺し屋の反応を見た俺は、話を続けた。これで説得できるかどうかは、正直運だ。

「あなたは、殺し屋さんでしょ? たぶん推測ですが、殺し屋さん。あなたは、その職業に誇りを持っているんではないんですか?」

 自分で言っていて、意味がわからなかった。殺しに対して誇りを持つなんて、そんなの馬鹿げているよ。

「確かに、誇りを持っているわ……」

 認めちゃったよ! やばいよやっぱこの人! ま、まぁいい。この缶蹴りが終われば、この人と二度と会うことはないだろうから。

「そうですよね。誇りを持っていますよね。なのに、そうやって簡単に人を殺めていいのですか? それが殺し屋という職業に、誇りを持っている人ですか? 僕は殺し屋という仕事がどんなものかわかりませんが(知りたくもないが)きっと、今あなたがやろうとしていることは、あなたの殺し屋という誇りを汚す事だと思いますよ。だから、その人を解放してあげて下さい」

 俺がそこまで説得すると、殺し屋は、持っていたナイフを地面に落とした、そして、人質であったおじいさんを解放した。おじいさんは、すんごい速さで公園から出て行った。

「完敗だわ、あたしの負け」

 そう言って、殺し屋は泣き出した。どうやら、俺の言葉に胸を打たれたらしい。俺は泣きじゃくる殺し屋に一言声をかけ、仕事に戻る事にした。

「殺し屋さんみっけ!」

 さぁ、どこからでも来い。あの林が怪しい。俺の勘はそう囁いている。そうか、そこか。そこにいるのか。ははは、あれだね。簡単だよ。俺の力を発揮すればこれくらいね。朝飯前なのさ。ほら、あの木。あの一番背の高い木の横から、迷彩服が見えているではないか。ははは。あれは大尉君ではないか。馬鹿だな。見え見えですよ。ほら、徐々に出てきちゃってますよ。迷彩柄のズボンが。俺は少し近づいて目を凝らした。間違いない。大尉しかいない。俺は笑いを堪えるのに必死だった。

「今だ!」

 俺が注意していた方向から、そんな声が聞こえてきた。やっぱりそうか。そこにいたのか。俺は、目を離さないよう、林を見つめていた。

 その瞬間、その林から迷彩服の男が飛び出してきたのだ。

 十人ほど……。

「全員突撃!!!!」

 待てよ! なに後ろで指揮してんだよ! でもって、すっげぇ偉そうに葉巻くわえてんじゃねぇよ! この公園は、丁度一年前くらいから禁煙になったんだよ! 子供たちの憩いの場を汚すんじゃねぇよ! 違うよ! お前が缶蹴りやれよ! 何だよこの部下どもは! 部下も断れよ!

「行け! 行け! 殺せ!」

 俺に目掛けて突撃する集団に対して、俺は何も出来なかった。ただ目を瞑ることしか。

 次に俺が目を開けたときには、砂煙と、宙に浮かぶ缶だけが目に入った。

「集合!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

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