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計画その2 ルール確認

 いろいろな場所から少年の缶蹴り相手であるプレイヤー三人が現れた。一人はいかにも忍者が着そうな装束を着た男。多分彼がサスケって奴だろう。もう一人は、迷彩服に身を包んだ男。彼がタイサと。そして、どっかの映画でエージェントが着そうな、ロングコートと、黒いサングラス。オールバックの髪型をした男、コロシヤがやってきた。

 近づいてきた彼らを見て気が付いた事だが、明らかに大の大人である。いや、ただの大人ではない。四十代後半から五十前半のオヤジだ。三人とも眉間にしわを寄せ、俺を睨んでる。ちょっと怖い。

 俺は、事の成り行きを彼らに聞いた。そして頭で整理していた。

「え~っと。つまり、貴方達三人は昨日、久しぶりに同窓会で会ったと。で、サスケさん? の家で一晩泊まった。別れを惜しみながら三人で歩いていると、少年が近寄ってきて、缶蹴りをやらないかと誘ってきた」

「そうでゴザル」

 うぜ~。この忍者うぜ~。今時ゴザルなんてテレビの忍者でも言わないよ。

「そんで、誘われた三人は、日ごろの成果を互いに見せ合うために誘いに乗り、少年と缶蹴りを始めた。と」

「そうだが。何か問題でもあるのかね?」

 この大佐ムカツク! 何だよ! この上から見下すような発言は!!

「しかし、少年は缶蹴りのルールを知らなくて、三人が教えた。で、ルールに飛び道具ありっていうのを加える事で、三人の特技……つまり、手裏剣、スナイパーライフル、ナイフ投げを見せ合い、お互いの能力を認め合おうとした。と」

「そ~なのよ~。あら、何かいけなかったかしら~?」

 この殺し屋オカマかよ!! そんな怖い顔でダークな格好してオカマ口調なんて逆に怖いよ!

 まぁそれはともかく、だいたい把握したぞ。まず、こんな見るからに危険な三人に、声をかけた少年が馬鹿だってことはこの際どうでもいいとして、明らかに、こいつら三人は、自分勝手に少年の缶蹴りを楽しんでいたわけだな。わかった。理解しといてやるよ。

「貴方達の言い分はわかりました。でももういいでしょう。少年を解放してあげてください」

 この人達だって、流石に気が済んだだろう。もう子供じゃないんだし。お互いの力を見せ付けれたんだろうし。

「そうでゴザルな。流石にやり過ぎた。すまぬでゴザル」

「確かにな。それは悪かった」

「そぉね~。僕ちゃん。ごめんね」

 三人は少年に頭を下げ、ちゃんと謝った。そうだよ。話せばわかるさ。

「少年。良かったな!」

 俺が言うと、少年が笑顔で頷いた。

 はぁ、一件落着だ。今回は以外に早かったな。まぁ俺の勘だと、俺の今までの流れからするとこの辺りからおかしい展開になって行くんだが、今回はそれもなさそうだ。

「しっかし君の銃の腕前は凄かったでゴザル。まぁ私の手裏剣ほどではなかったでゴザルが」

 うん。何事もなく終わりそうだ……。

「何だと? お前の目は節穴か? 我輩の銃こそ最強なのだ!」

 そう。何事もない……よ。

「あら~。よしなさいよ二人とも~。私のナイフが一番良かったに決まっているじゃな~い」

 うわぁ~。喧嘩始まっちゃったよ~。今のうちに逃げないと。何か嫌な予感するんだよ。

「そこまで言うのなら、もう一度勝負でゴザル」

「臨むところだ。我輩の力を見せ付けてやる」

「私だって本気だしちゃうもん!」

 ……うわ。何かやばいな。

「あの~。僕はそろそろこの辺で……」

「何を言っているのでゴザルか? 君は鬼でゴザルよ」

「いや、そのですね。用事が……」

「よし、配置に就け。すぐに始める!」

「あの~。無視しないで頂けます?」

「みんな~。手加減しないからね!」

 完全無視じゃねえか! このままだと、俺死んじゃうよ! 何とかしなきゃ、何とかしなきゃ!

「あの! 待って下さい!」

 俺は叫んだ。流石に三人も俺の声に耳を傾けた。三人は俺の顔を見ながら、各自の武器の手入れを始めた。

「あのですね~。思ったんですけど。さっき見てたらですね、三人の技っていうか武器の能力っていうか、それらは均一なんだと思うんですよ」

 俺がそう言うと、三人はキョトンとした顔をした。

「そうでゴザルか?」

 忍者がそう言いながら、他の二人と顔を見合わせた。もう少しだ。ふと隣を見ると、まだ少年が立っていた。こいつにも手伝ってもらおう。

「……少年もそう思うよな?」

「僕は紙一重でタイサがうま……」

 俺は咄嗟に少年の頚椎にチョップし、気絶させた。そして、少年の腰に手を回し、無理矢理立たせた。

「僕もそう思うよ!」

 腹話術なんてお手の物だ。強いてマイナス点を挙げるなら、少年の口から出てきている泡を隠せないくらいだろうか。

「何が言いたいのだい?」

 大佐が聞いた。いい感じだ。

「だから、武器を使うのは無駄かと思います」

 俺が言うと、大佐は顔を真っ赤にして反論した。

「無駄とは何だ! 我輩とこの銃は25年前の闘い以来ずっと……」

「いやいや、そうじゃなくて! 何と言えばいいかわかりませんが……つまり、武器は皆さん巧いので比べられないと思うわけですよ……それに、もしもの事があったら危険ですし」

「大丈夫だ。我輩の命中率は100%だ。500m離れた場所からでも、君の眉間に穴を開けることが出来る」

 何で標的が缶じゃなくて俺の命に変わってるんだよ!!

「それは凄いですが、僕は一般人ですし……」

「そういう甘い事を言うから弱くなるのでゴザル。忍びの世界では命を狙われるのは当たり前でゴザル」

 お前の信じる世界はここにはねぇよ!!

「そうかも知れませんが、やっぱり死ぬのは怖いですし……」

「だいじょ~ぶよん。殺すときは苦しまずに殺してあげるから」

 怖いよ!! 目がマジだよ! 血走ってるよ! っていうかリアルだよ!!

「じゃあ質問なんですが、三人は武器にしか頼ってないんですか?」

「そんな事は断じてない! 我輩はこの身一つで敵地に潜入したこともある」

 お……いい感じいい感じ。この際、缶蹴りくらいならやってやる。でも飛び道具はまずいからな。このままこいつらを乗せれば、最悪の事態だけは避けられそうだ。

「サスケさんもコロシヤさんもですよね?」

「当たり前でゴザル」

「そうね~」

「なら、ちゃんと自分の体力だけで缶蹴り勝負しましょうよ! 一番僕の守る缶を倒した人が勝ちって事で」

 そうすれば、俺にだって勝ち目がある。俺だってやるからには勝ちたい。『鉄壁の鬼』のプライドにかけて。

「なるほどな。我輩はそれで問題ない」

「私もでゴザル」

「私もよん」

 あぁあ、単純な人間で良かった。俺は、腕で抱えた少年を地面に捨てると、缶を陣地に置いた。さて、俺も本気を出してしまうか。

「では始めるんで、隠れてください。あ、カウントは何秒にします?」

「5秒で結構。それ以上は必要は無い」

 うわぁ、大佐。強気発言して、後で吠え面をかくなよ~。

「わかりました。数えます」

 そう言って、俺は、缶を足で踏みながら目を瞑り、数を数えた。カウントダウンは5秒から。ゆっくり数を減らしていき、ゼロと言った瞬間、目を開いた。

 さて、誰から見つけちゃうかな。

 俺は缶から足を離し、改めて公園を見回した。北側には、滑り台が配置されている。その後ろには数本木が立っていて、この辺りにも隠れる事が出来る。南側には何かいろいろな文字が彫られた大きな記念碑が置かれている。この後ろにも隠れる事が出来る。さらに東側には、ブランコとトイレがある。ブランコの後ろにも木が立ち並び、隠れられる。もちろん、トイレの中も注意しなければ。最後に西側には、砂場がある。砂場を覆うように屋根があり、屋根は蔦科の植物が生い茂り、しっかりと屋根の上を確認する事が出来ない。最悪ここにも隠れる事が出来るが、見つけられたとき、降りるのは一苦労だろう。

「よし」

 まずは大穴の、記念碑の裏を探そう。そう思い、それに近づこうとしたその時だった。

『ゴボゴボ』

 何か音がした。振り向くと、砂場のほうから、音が聞こえた。何だろ? そう思った次の瞬間、地面が盛り上がり、缶に向かって何かが接近してきた。しかも凄いスピードだ。モグラのように土の下を進んでくる何かを凝視していると、缶の手前でそれが止まった。

 やばい! そう思った時には遅かった。土から這い出してきた忍者が、缶を蹴ったのだった。

「ちょっと待て! そんなのありかよ!」

 俺は慌てて缶を拾い上げ、低位置に缶を置いた時には、既に忍者の姿はなかった。

「まずは私の先制でゴザル!」

 どこからともなく、勝ち誇った忍者の声が聞こえた。畜生! あんなやり方ありなのかよ! 確かに飛び道具は使っていないさ。でも、土を潜って近づいてくるなんて、普通の人が出来ない事をやるのはなしだろ……。

 まぁいい。もう同じ手は喰らわない。対策だって出来る。それに、他の二人はあんな事出来ないだろう。

「くよくよするな、次だ次!」

 そう。もう蹴られなければいいんだ。大丈夫! 俺は『鉄壁の鬼』なんだ!

『ブーン』

 ん? 何だ? 何かまた音がする。何だろう? だんだん近づいてくる。

『ブーーーン、ブーーーーーン、ブーーーーーーーーーン』

 ちょっと待てって。嫌な予感がする。俺はこの音を知っている。これは大型のバイクの加速音だ!

『ブーーーーーーーーーーーーーーン!!!!』

 俺の前を、真っ黒な大型バイクに乗ったコロシヤが通り過ぎた。そして、案の定、缶を蹴られた。もう嫌。

「私も一回蹴ったわよん!!!」

 走り去りながら、オカマが叫んだ。もうどうでもいいよ。

 缶を拾い、また元に戻した俺は、大佐がどんな手を使うのか予想した。

 ジープにでも乗って出てくる。間違いない。

『パタパタパタパタパタパタ』

 あ~。なるほど。その手で来たか。

 俺の頭上からゆっくりとヘリコプターが公園に近づいて来た。しかも、ただのヘリコプターではない。最初は小さい普通のものだと思ったが、徐々に近づいてくるうちに、全貌が明らかになった。広い公園が一瞬にして闇になるほどの大きさをもったヘリコプターなのだ。それは、ある程度の高度を保ち、今は俺の頭の上で浮かんでいる。ヘリコプターのドアが開くと、ロープが落ちてきた。片方は上に繋がれ、もう一方は、缶のすぐ上まで垂れ下がっている。

 シュルシュルと音を立てながら、大佐が蜘蛛の様にロープを伝い降りてきて、缶を蹴ったのを、俺は何も考えずにじっと見ていた。

「ははは! 我輩も1回目の任務完了だ!」

 そう言いながら大尉は、ロープにぶら下がったまま空へ消えていった。

「集合!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

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