第7話 止めてほしかった光
「ぷんぷんゲージ」と「店員センサー」をうまく使えてきた気がする。 真っ赤な怒りには、適度な距離と機械的な相槌。そこに「店員センサー」の光具合を加味すれば、効率的に売場を回せるようになってきた。
(……ん?)
品出しの手を止める。 カップ麺の棚の向こう、眩い光が見えた。 今まで見た光よりも強い。 そこにいたのは、一人の女子中学生だった。 制服の上にだぼついたパーカーを羽織り、周囲をキョロキョロと警戒している。その手は、棚にある高単価の化粧品へと伸びていた。
(万引きか……?)
以前の俺なら、見て見ぬふりをしただろう。面倒ごとは御免だ。 だが、その光は「助けて」と叫んでいるようにも見えた。 俺は商品を補充するふりをして、彼女の背後にスッと立った。
「……何か、お探しですか」
俺の声に、彼女の肩が大きく跳ねた。 伸ばしかけた指が止まり、俺の目と、彼女の怯えた瞳が重なる。 その瞬間、彼女を包んでいた光が、プツンと消えた。
「……っ、何でもない!」
彼女は商品を棚に戻すと、逃げるように店を飛び出していった。 万引き未遂。俺が声をかけなければ、彼女はどうしたんだろう。
(……あんなに光ってたのは、止めてほしかったからなのか?)
胸の奥が少し重い。
レジに立っていた俺の前に、昨日の少女がいた。 彼女の手には、昨日盗もうとしていたはずの少し高い化粧品。 少女は俺と目を合わせようとしない。震える手で俺の前に差し出した。 ピッ、とレジを通す。
「……ありがとうございます」
俺は、あえて昨日のことには触れない。 彼女は一瞬だけ、顔を上げた。 言葉はなかった。けれど、彼女の口元が微かに緩み、本当に小さな笑顔がこぼれた。
「お次の方、どうぞー」
呼ぶ声は少しだけ弾んでる気がした。
事務所に行くと、早乙女が満面の笑顔で出迎えた。
「女の子よかったですね」
見てたのか。
「…何が?」
「さぁなんでしょう?でも、いま四波さん優しい顔してますよ。」
鏡がないから自分がどんな顔をしてるかはわからないが笑ってるのかもしれない。 恥ずかしさを誤魔化しながら笑顔で言った。
「うるせーよ」




