18話 仕事仲間
かつて、俺は仕事中「一日が早く過ぎればいい」とただただ時間が過ぎるのを待っていた。
だが、神子が俺を転生させてから、俺自身が少しずつ、確実に変わり始めている。以前よりも周りを見て、関わるようになっている。
「四波くん。唐揚げ、一個多く作っちゃったから食べちゃって!」
そう言って、揚げたての唐揚げを差し出してきたのは、惣菜担当の井上さんだ。
この道30年の超ベテランだ。
「ありがとうございます、井上さん。やっぱりここの唐揚げが一番美味いです」
「あら、上手いこと言っちゃって」
井上さんは嬉しそうに笑い、また鉄鍋に向き直った。
精肉コーナーの方では、今日も豪快な声が響いている。
「ちょっとこれ、他のパックに比べて少ないんじゃない?」
客の指摘に、精肉担当の剛田さんが頭を掻きながら出てきた。
「おっ? そうかい? ちょっと待ってな! ……ほい、おまけしといたよ!」
明らかに多い量を追加して、強引に納得させてしまう。
意外とお客の中にファンが多い。
その様子を物陰からぷんぷんゲージが高い店長が見ていても、剛田さんはどこ吹く風だ。
鮮魚コーナーには、海無し県出身の山梨がいる。
「オデの仕入れに間違いはねぇだ。今日のはピチピチだど」
普段はのんびりした田舎っぺ口調だが、包丁を握れば別人だ。誰よりも早く、そして美しい刺身を盛り付けていく。
たまに「あぁ……!」と一人で怒っている時は、鮮度が気に入らなかったか、骨に身が残りすぎたのだろう。
「あ、夏夫! 暇してんの?」
声をかけてきたのは、青果担当の小林だ。俺と同期だが、今は既婚で子持ち。サッパリした性格で、よく軽口を叩き合う仲だ。
「最近、あんた仕事頑張ってるね!何か良いことでもあった?」
「……まあ、色々とな」
そんな小林が、ニヤリと笑った。
「今日さ、旦那と子供が向こうの実家に行ってて暇なのよ。仕事終わりに飲もうよ!山梨も行くって言ってるし」
小林に背中を叩かれ、渋るように、
「了解」
と答えた。
かつての俺なら、適当な理由をつけて断っていただろう。
仕事を終え3人で居酒屋に向かう。
「今日は魚だべか?」
「あんた魚のことになるとうるさいから焼鳥だよ!」
今は思う。
一人で飲む銀色の缶ビールも美味いが、この騒がしい連中と囲むジョッキも、悪くない。
転生してから、世界は思っていたよりもずっと、賑やかで、楽しくなっていた。




