17話 仲良しパート3人組
サンライズ下町店の休憩室。
「ねえ、昨日のドラマ見た?」
「見ました。」
「見た見た! あの展開は無理があるわよねぇ」
高橋さん、佐藤さん、鈴木のパート三人は、いつものようにお茶を片手に盛り上がっていた。
そこへ、店長がひょいと顔を出した。
「はい、お三方。そろそろ休憩終わりよー。レジ戻ってちょうだい」
「「「はーい」」」
三人は息の合った返事で、重い腰を上げた。
「副店長、四波。私はこれから本部に行くから。今日ちょっと人数少ないけど後よろしくね。」
「……はい。」
副店長は小さな声で答える。
「かしこまりました。まぁあの3人いるから多分大丈夫ですよ!」
夏夫が余裕な返事をしていた。
だが、この日はいつもと違った。
レジに戻った三人を待っていたのは、怒涛の客列だった。
「あら、ごめんなさい! 打ち間違えちゃったわ!」
ベテランの高橋さんが、珍しく焦った声を出す。急ぐあまり指がもつれ、レジの修正操作に手間取っている。
「次の方…どうぞ…。」
隣の佐藤さんのレジには、なぜかカゴ二つ分を山盛りにした客ばかりが並び、一向に列が短くならない。
「へぇー…そうなんですか…。」
さらに鈴木のレジでは、近所でも有名なお話好きのおばあちゃんが、スローペースで世間話を始めていた。
「なんてこった!……これは厳しいぞ…。」
レジ外で、夏夫は品出しとカゴ整理をしながら、溢れかえる客列に冷や汗を流していた。
高橋さんのミスフォロー、佐藤さんの袋詰め、鈴木さんのお客の誘導。体がいくつあっても足りない。
(このままじゃパンクする……!)
そう思った瞬間だった。
「おばあちゃんまたね〜。…お待たせしました!こちらのレジどうぞ!」
鈴木のおばあちゃんの接客が終わった。
そこから他のレジのお客が鈴木のレジに流れる。
…キラーン!高橋さんと佐藤さんの目が輝いた。
「お待たせしちゃってごめんなさいねー!」
高橋さんの元気で勢いのある接客。
「500円のお釣りです。ありがとうございます。次の方どうぞ。」
佐藤さんの淡々として、スピード感のあるレジ作業。
「お会計2700円です。お次の方はこちらにカゴ置いてお待ち下さい!」
鈴木のレジ待ちのお客への気遣い。
3人が何とかいつも通りの動きに戻った。
長蛇の列がみるみる内に減っていく。
(おぉ!これなら何とかなりそうだ!)
そこへ、ガシャンとバックヤードの扉が開く。
「遅くなりました!これからレジ入りますね。」
本来は休みだったはずの神子が笑顔で現れた。そして、彼女の後ろにはハンカチで汗を拭いてる副店長がいた。
「ん?神子と副店長どうしました?」
2人が現れた時にはレジはすでに平穏になっていた。
……数時間後。
ようやく嵐が去り、閉店後の事務所。
「ああ……疲れたわねぇ」
「今日はどうなることかと思いました…。」
高橋さんと佐藤さんが、ぐったりと椅子に沈み込む。
「神子さんお休みだったのに、ありがとうございます。」
鈴木が神子にお礼を言う。
「いえいえ。それでは皆さんおつかれさまです。お先に失礼します。」
神子は颯爽と事務所を後にした。
「神子さんはいつも素敵ですね!」
「今日は助かりました。」
「…そういえば、長年一緒に働いてるけど、神子ちゃんとプライベートなことあんまり話さないわねぇ…。」
一瞬フッと風が吹いた気がした。
「そうだ!この後みんなでパッとご飯食べに行きません?!」
鈴木の提案に、二人は「賛成!」と即答し、賑やかに夜の街へ消えていった。
「……さて」
静まり返った事務所。
「残った仕事、やっちゃいましょうか」
夏夫がそう言うと、隣でパソコンに向かっていた副店長が、汗を拭きながら答える。
「…うん。…四波くん…助かるよ…。」
二人はキーボードを叩く音だけを響かせ、黙々と事務作業に没頭した。
外では雨が、しとしとと降り始めていた。




