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16話 探し物はなんですか?

「四波さん、最近頑張ってますね。」

バックヤードで在庫の山と格闘していると、神子が声をかけてきた。

今の俺にはわかる。この声のトーンは「何かある」時のやつだ。

俺はあえて丁寧に、かつ距離を置いて返した。

「早乙女さん、どうかしましたか?」

「そんなに警戒しなくてもいいじゃないですか。せっかく、頑張ってる四波さんに…。」

彼女がその場でくるりと回る。制服が眩い光に溶け、一瞬で女神の姿へと変わった。

「新しい能力を授けるのです!」

「…いらない。」

「そう言わずに! 今回のは自信作なのです!」

問答無用で神子が指をパチンと鳴らす。

俺の脳内に、古びたレーダーの走査音のような音が響いた。

「名付けて『探し物はなんですか?レーダー』なのです! これで在庫探しも落とし物の対応もバッチリです!」

「……探し物を見つけられるのか。今回は確かに便利だな。」

「ただ、便利すぎるので使うと…。」

「使うと?」

「使ったらわかるのです!」

そう言い残して、彼女はまた制服の早乙女に戻り、「レジに戻りまーす。」

と軽快に去っていった。

(……使うと何が起こるんだ…。)


試しに、昨日の棚卸しでどうしても見つからなかった「限定フレーバーのポテチ」を頭に浮かべてみる。

すると、視界の端にうっすらと青色の矢印が現れた。

辿っていくと、本来あるはずのない飲料の棚の奥に一箱紛れ込んでいた。

「……マジか。便利じゃん」

その後も、行方不明だった什器の鍵、バックヤードで迷子になっていた伝票などを次々と発見。

特に体調に変化もない。

「神子の考えた能力の割には、今回は当たりか?」と、俺は珍しく上機嫌で一日を終えた。


だが、異変は退勤後に始まった。

「あれ……? 書類整理で使ってたボールペンがない」

仕事用のお気に入りのペン。胸ポケットにあるはずが、どこを探しても見当たらない。

「まあ、明日探せばいいか」と、俺は売場を後にした。


帰り道のコンビニでいつもの第三のビールを買おうと財布を開ける。

「あれ?小銭全部使ってたかな?」

仕方なく1万円を崩す。


玄関の前で、いつものようにカバンのサイドポケットに手を入れる。

……ない。

「嘘だろ。……鍵がない」

ポケット、カバンの底、靴の中まで探したが、鍵は跡形もなき消えていた。

その瞬間、脳内にあの楽しそうな声が響き渡った。

『気づきましたか? 探し物はなんですか?レーダーを使うと「探し物が見つかる代わりに、四波さんの私物が一つ見つかりにくくなる」のです!』

……今日、俺はレーダーを何回使った?

ポテチ、鍵、伝票、備品……。

「……この能力、返品できねぇかな…。」

扉の前で静かにつぶやいた。


結局、その日は家に入れず、駅前のマンガ喫茶に泊まる羽目になった。

翌朝、疲れ果てて出勤し、着替えようと自分のロッカーを開けると――。

昨日あんなに探した家の鍵が、棚のど真ん中に、これ見よがしに鎮座していた。


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