13話 能力とは
あの事件から数日。
俺はひどい熱にうなされ、アパートの布団に沈んでいた。
目を閉じると、あの時の白い光が脳裏に焼き付いて離れない。
荒れ狂っていた怒りを、一瞬で無理やり感情を書き換えてしまった。
得体の知れない恐怖が指先を震わせる。
(……そんな大層な力じゃないと思ってたんだけどな)
そんなことを考えていると、視界にひょいと、聞き慣れた声が降ってきた。
「ぷんぷんゲージに、あんな強制終了ボタンみたいな力があったなんて。私も知らなかったです……。ちょっと、怖いですね」
「……っ、早乙女!?」
いつの間にか枕元に早乙女が立っていた。
「何でお前がここに……。っていうか、鍵、閉まってなかったか?」
くるっと回って女神の姿になって得意気に、
「神に鍵など無意味なのです! あと、これお見舞いなのです!」
神子が差し出してきたのはプリンだった。
このタイミングで、よくもまあプリンを食えと言えたものだ。
「……お前、自分が授けた力なのに知らないことなんてあるのかよ」
俺が呆れて問いかける。
「神様にもわからないことは、たくさんあるのです!」
女神の姿で、彼女は真剣な目を向けてきた。
「どれだけ身体に影響が出るか、私も予測できないのです。だから、今はしっかり寝るです!」
彼女はまたくるりと回転して、いつもの制服姿の早乙女に戻った。
「では、また売場で待ってます。」
「あ、おい――」
パッと、彼女の姿が消える。
部屋には、場違いに甘い香りを放つプリンだけが残された。
(……結局、何しに来たんだ、あいつは)
静まり返った部屋で、俺は再び天井を仰いだ。
神すら知らないあの力は、あまりに強力で俺の手には余る…。
(……もっと、穏やかな仕事なら、あの力を使わずに済むんじゃないか?)
(あるいは、逆に。この力をもっと正当に、誰かのために役立てられる場所が他にあるんじゃないか……?)
今の俺なら、もっと「マシ」な人生を選び直せるのではないか。
そんな考えが、熱で浮ついた頭に芽生え始めた。
「……ちょっと、転職、考えてみるか」
俺は震える手でスマートフォンを掴むと、求人サイトの検索欄に指を走らせた。




