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異世界召喚された少女が魔法使いになって元の世界に帰るまで  作者: 高ノ原 麻矢


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八章 帰還

 それから半月後、わたしたちがドレリアの家に向けて出発するじゅんびがととのった。

 王城の前で、リィヤとサティアさんが見送ってくれる。

「マナカ様、ご無事で元の世界に帰られることを心から祈っております」

 サティアさんは、わたしをやさしくだきしめてそう言ってくれた。

 わたしは、さみしくて切ない気持ちになる。でも、なみだは見せずに、がんばって笑顔を返した。

「サティアさん、今までたくさんありがとうございました。きっと、成功させます」

 そんな私の様子を見守っていたリィヤは、わたしの手を両手でしっかりとにぎる。

「マナカ、元気でね。きっとうまくいくってしんじてるよ」

「うん!ありがとう。リィヤも元気でね」

 わたしも両手でリィヤの温かい手をにぎりかえす。

 こらえきれずなみだがぽろぽろとこぼれたけど、それには気づかないふりをして、わたしはリィヤに向けてせいいっぱい笑った。

 ラッカーさんが、わたしの頭をぽんぽんとやさしくたたく。

「じゃあ、行くか」

 ラッカーさんから声をかけられて、わたしはなごりをおしみながら馬車に乗りこむ。

 すぐにまどを開けて、リィヤたちを見た。

 わたしのとなりにリディアさん、向かいにノストーム教授、御者台にラッカーさんがすわる。

 そうして、馬車は動き始める。わたしはたまらなくなった。

「リィヤ、サティアさん本当にありがとう!」

 リィヤは力いっぱい、サティアさんはやさしい笑みで手をふってくれていた。


 二人が見えなくなって、わたしは後ろがみを引かれる思いのまま、まどから馬車の中へ向き直った。 

 「またね」と言えないわかれがこんなにも切ないものだとは知らなかった。

 うつむいてだまりこんでしまった私のかたを、リディアさんがだきよせてやさしくなでてくれる。

 その温かさに、わたしは気がゆるんで、なみだが止まらなくなった。 


 馬車は何ごともなく進み、出発から約一か月後、ドレリアの森の入口に到着した。

 ドレリアの森に入るには、魔力酔いをさけるために、自分に魔力のかべを作ってから入らなければならない。

 一度やった事のあるラッカーさんとリディアさんは、事もなげに組み立てる魔法陣をえがいて発動させる。

 教授は、こうふん気味にえがいて発動させ、何かじーんと感動している様子だった。

 わたしも、落ち着いて魔法陣を発動させる。

 そして、わたしたち四人はドレリアの森に足をふみ入れた。

 

 ほどなくして、ドレリアの家に到着し、ラッカーさんがドアをノックする。

 すぐにドアが開き、目の前にはドレリアのすがた。

「ドレリア、ただいま」

「おかえり、マナカ」

 始めに旅立ったときには、本当にまた会えるとは思わなかった。

「お久しぶりです。ドルデント大佐、クロレル少佐。マナカをありがとうございました」

「いえいえ。どういたしまして」

 ドレリアとラッカーさんがそんなやり取りをしている横で、教授がうずうずしている。

 教授は話の切れ目ですかさず、自己紹介を始めた。

「はじめまして。私はユーレリア・G・ノストームと申します。レミルシルラ様、お会いできる日を心待ちにしておりました!ユーレリアとおよびください」

 教授のいきおいに、ドレリアは目を白黒させながら返答する。

「こちらこそ、はじめまして。どうぞよろしくお願いいたします」

 教授の顔に言葉に表せないほどの喜びがうかぶ。まるでアイドルに会えたファンみたいだ。

 心の中で「教授、よかったね」と思う。

 ドレリアに中に通され、わたしたちはリビングにこしを落ち着けた。

 ドレリアは、さっそくわたしが帰るための手じゅんをかくにんし始める。

「王城からの通信で打ち合わせていた通り、まずはマナカに体と魂を切りはなす練習をしてもらう。私の魂の紋は、悪いがマナカ以外には教える気はない。うまくできるようになったら、今度はノストーム教授に、魂を固定する魔法を同時にかけてもらう。それができれば、わたしが出入口の魔法をかけて、試しに近場に転移させるという流れだな。私がしでかしてしまったことに対する皆様の尽力、心からお礼申し上げる」

 ドレリアはその場のみんなに頭を下げた。ラッカーさんがうろたえる。

「レ……レミルシルラ様、頭を上げてください。五百年前、国を救ってくれたことを考えたらこんなの大したことではありません。今こそ、国民の代表として、恩返しさせてください」

「そうです。それだけのことを貴方はしてくださっています」

 リディアさんが断言する。

「私は、恩返しもできて、魔法の新たな扉も開けてうきうきですので、ぜんぜん気になさらないでください」

 楽しそうに教授が答える。

 顔を上げたドレリアは、うるんだ目でみんなを見回し、もう一度頭を下げた。


 次の日から、わたしはひたすら魂の紋の練習をがんばった。とても細かくて覚えるのもえがくのもたいへんだ。

 その間に、教授は固定の魔法陣の練習をする。体からはなれた魂がどんな大きさ、形であったとしても、上手くつつみこまなければならない。


 わたしは、一週間かけて魂の紋を覚え、魂を肉体からはなす魔法が使えるようになった。

 最初はこわかったけど、思い切ってやってみれば、大したことはなかった。

 ただ、体が一瞬、ふわっとなって、気がついたらまた体にもどっている。むしろちょっとおもしろい。

 どちらかというと、この魔法のために魔力のかべをいったん外さないといけないことの方がやっかいだった。

 魔力のかべを外している時間がつみかさなってくると、だんだん頭がくらくらしてくる。

 それは魔力酔いの始まりなので、そうなったらその日の練習はそこでおしまいだと、ドレリアにきつく言われている。

 ちなみに、翻訳魔法はすでにわたしにかけている分は外して、みんなの方がサクラ語の翻訳魔法をかけてくれている。

 それから、教授の固定魔法との合成の練習をするようになると、体にもどるまでのたゆたう時間が長くなった感じがした。


 そしてついに、ドレリアの出入口の魔法陣とも合わせる時が来た。

 まず、少しはなれた所に、リディアさんが仮の出口の魔法陣を作る。

 次に、わたしの魔力のかべをドレリアがくずす。

 三つの魔法陣を、三人が息を合わせて同時に発動する。

 体がふわりとうかび上がったような感覚がした。

 おぼえていたのはそこまでで、気がつくとラッカーさんに上半身を支えられて、少しはなれた所でねそべっていた。

 魂が出口の魔法陣から出た後、ラッカーさんがそこまで体を運んでくれたからだ。

「マナカ!成功だ!」

 ラッカーさんはそのままわたしをかかえ上げて立ち上がる。高く持ち上げてぐるぐる回りながら満面の笑みを浮かべている。

「やったな、マナカ!これで帰れるぞ!!」

「うん!!」

 やっと、自分の世界に、家族や友だちの所に帰れるんだ。

 わたしはうれしくてむねがはちきれそうだった。

 でも同時に、気づいてしまう。元の世界に帰ったら、みんなとはもう二度と会えない。

 ほんの数か月だけど、とてもよくしてもらった。大好きなやさしい人たち。そう思うと、気持ちがしゅんとしてきてしまった。

「どうした、マナカ?」

 私の表情の変化に気づいたラッカーさんがふしぎそうに問いかける。

「うん。ちょっと……。元の世界に帰ったら、もうみんなには会えないなって……」

 ラッカーさんは苦笑しながらわたしを下ろす。

「そうだな。それは俺もさみしいが、まあ、マナカが元の世界で笑っていてくれるならそれでいい」

 そして、いつものニカッとした笑顔で頭をわしゃわしゃとなでてくれる。

 わたしもラッカーさんに笑顔を返そうとしたけど、変な顔になっちゃったかもしれない。


 次の朝、朝食の後、みんなで森の開けた原っぱに集まった。

 みんなと過ごせる最後の時間。大好きな人たち。


「ドレリア!」

 わたしは、ドレリアにかけよってだきついた。こうしてドレリアとふれ合うことももう二度とできないと思うと、視界がにじんだ。ドレリアもわたしをぎゅっとだきしめる。

「すまない。たいへんな苦労をかけてしまったな」

 いまだにあやまり続けるドレリアに、わたしはなみだをふいて、力強くわらいかける。

「ううん。わたし、みんなに会えてよかった。この世界に来れてよかったよ。ありがとう」

ドレリアは目になみだをいっぱいにためてくしゃりとほほ笑んだ。ドレリアの気持ちが少しでも軽くなっていたらうれしい。


「ラッカーさん!」

 わたしがかけよると、ラッカーさんはわたしを高く持ち上げてまぶしそうに見上げる。

「おう。元気でな」

 ラッカーさんのいつもの太陽のような笑顔につられて、わたしもなみだ目のまま笑顔になる。

「うん。ラッカーさんも。たくさんありがとうございました」


「リディアさん!」

 リディアさんは、わたしをやさしくだきよせてそっとつつみこむ。

「あちらでもお元気で」

やさしい声がわたしの耳をこそばゆくなでる。わたしにも、ふんわりと笑みが浮かんだ。

「うん。リディアさんもお元気で。ありがとうございました」


「ノストーム教授!」

 わたしが目の前に来ると、教授はしゃがんで頭をなでてくれた。

「ありがとう。君のおかげでレミルシルラ様にお会いするという夢がかなった」

 あいかわらずな教授に、わたしは自然と笑みがこぼれる。

「わたしの方こそ、ありがとうございます。固定の魔法陣、よろしくお願いします」

 教授はじしんまんまんの笑みで答える。

「ああ。まかせておいてくれ」


 そして、いよいよその時は来た。むねがどきどきして手がふるえる。

 ラッカーさんとリディアさんが見守る中、ドレリアとノストーム教授との三人で向かい合って正三角形にならぶ。

 ドレリアは、わたしや教授と顔を見合わせて、じゅんびばんたんをかくにんした。

「さあ、始めよう!」

 ドレリアがわたしの魔力のかべを外すとともに、三人でいっせいにそれぞれが担当する魔法陣をえがく。

「せーの!」

 三人で声をそろえ、一気に魔法陣を発動させた。

 同時に、いまだかつてないまぶしい光につつまれて、真っ白で何も見えない。

 体がふわりとういた感覚がした。



* * * * *



「……今日は垂直と平行をやりました。しっかり覚えておいてくださいね」

 聞きなれた先生の声がして、目を開くと、目の前にはたくさんの字や図形が書かれた黒板。まわりには、クラスのみんな。

 そこはまぎれもない四年一組の教室だった。なつかしさに、くらくらした。

「帰って……きた……」

 まわりを見回しながらつぶやくと、それに気づいた先生が首をかしげる。

「西条さん、どうかしましたか?」

「あ……いえ、大丈夫です」

 そうしてチャイムとともに日直が号令をかけて、二時間目が終わる。

 黒板の日付は、あちらの世界に行く前のあの日のままだった。

 一瞬、夢だったのではないかと思う。

 いや、そんなはずはない。わたしは、自由帳を取り出して、覚えた魔法陣をえがこうとする。

 出口の魔法陣、入口の魔法陣、組み立てる魔法陣、くずす魔方陣、どれもちゃんとえがける。

 ドレリア、ラッカーさん、リディアさん、リィヤ、サティアさん、ノストーム教授。次々とあちらで出会った人の名前と似顔絵をえがいていく。思いつくかぎりをえがき切って、わたしは手を止めた。



 夢じゃない。ぜったいに夢なんかじゃないよ!




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

私が初めてちゃんと構成を練って書き上げた物語、少しでもお楽しみいただけておりましたらとても嬉しいです。

さて、真菜香の旅はひとまずここでおしまいです。

ーなどと言いつつ、2巻の構想もあり、完成した暁にはまた公開したいと思いますので、ブクマか何かしておいていただけると嬉しいです。

最後にもう一度、真菜香の物語を最後まで見守ってくださった貴方に最大級の感謝を捧げます。

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