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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第四章 鬼の仮面

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第三十九話 永遠の少女について

 俺とクルピアちゃんがコレディッカ先生の研究室に呼び出された、翌日の夜。


 俺はイロハ(クルピア)ちゃんの部屋を訪ねていた。


「今日は何の用じゃ?プラティエ」


「いやあ、最高位魔術師のことで聞きたいことがあったんです。一人、気になった人がいて」


「ふむ。昨日見せた、あのデータか。……まあ、其方が気にしそうな奴など、一人しかおらんか」


「そうです。……アリス・スコット。彼女のことについて」


「そんなことじゃろうと思っておったわい。其方は幼女に目が無いからのう」


「そーですその人です!少女に目が無いので!」


 あまりにも欲望に正直すぎるだろうとは思いつつも、抑えるにも限度があるのが欲望というものである。


 そして俺はまた、欲望に抗えなかった。

 それだけの話である。


「……やれやれ。妾では不満か?ベルリナでも?」


「不満じゃないです!」


「なのに、新しい幼女へ走るのか」


「幼女は大好きなので」


「ふーん、浮気か?ふーん?」


「いやいや、違いますよ」


「違わなかろう」


「ハンバーグは美味しいですよね?」


「いきなり何じゃ。……まあ、そうじゃが」


「エビフライも美味しいですよね?」


「そうじゃな」


「オムライスも美味しいですよね」


「ええい、それが今の話と何の関係があるのじゃ」


「つまり、ご馳走が何種類あっても美味しそうなように、幼女は愛でられるだけ愛でたいって話です」


「カスか!最低じゃな其方!」


「それほどでも~」


「褒めとらんわい!見損ないかけたぞ、我が弟子よ!」


 ここで見損なったと言わない辺りに、クルピアちゃんの優しさが垣間見える。


「大丈夫ですよ。俺はロリコンですけど、大好きなクルピアちゃんに不誠実な真似はしないので」


「今の発言だけでもだいぶアウトじゃがのう」


「とにかく、幼女はこの世の宝です。俺の助けなんかいらないかもしれませんけど、いざという時に幼女には頼って欲しい、頼ってもらえる、そんな存在でありたいんです」


「良い風に言っておるがカスじゃからな。……まあ良い。其方には見込みがあるからのう、これも良い機会か……紹介してやっても良いぞ」


「えっ!?良いんですか!?」


「アリスは良き友じゃからな。きっと喜ぶじゃろう」


「ヤッター!」


 まさか、ここまでとんとん拍子で事が進むとは。


 俺は歓喜の雄叫びを上げたい気持ちをグッと抑え、握りしめた両手を上に挙げた。


「アリスは特に『強化(ググーン)』が上手くてのう、強化されたアリスにパワーで勝つのはほぼ無理と言って良い程じゃ」


「ちゃんと凄い人みたいですよね、アリスちゃん」


「まだ会っていないのに《《ちゃん付け》》とはのう。流石というか何というか」


「でも、クルピアちゃんと肩を並べる人なら、それも当然なんでしたっけ」


「妾もアリスも、最高位魔術師じゃからな。特にアリスは、『子供の真理』に完全な形で触れておる。成長する魔術に関しては、右に出る者はおらんのやもしれぬのう」


「幼女が成長する過程は、何物にも代え難いですからね」


「さっきから其方は幼女の何なんじゃ……」


「守護者とでも言いましょうか」


「自惚れるな。……そんなアリスじゃが、真理に触れた代償はきっちり払っておってのう。一覧にも書いてあったのは思うが、身体も精神も成長できなくなってしまっておる」


「重大な代償ですね」


 幼女が幼女のままでいるのは嬉しいが、幼女が成長するという過程が消えてしまっているのは何とも嘆かわしいものである。


「其方は幼女を何だと思っておるんじゃ……幼女が好きと言ったり、でも成長はして欲しいのか」 


「幼女は成長するとこも含めて幼女なんですよ」


「何を言っておるのかさっぱり分からん」


「成長しない幼女も尊い幼女ですけど、何か可哀想で胸が痛くなって、それどころじゃなくなるんです」


「マトモなんじゃかカスなんじゃか。……まあ、アリスの場合は事故じゃから、その考えは正しい……というか、妾もそう思っておるがの」


「いやあ……何とかならないんですかね」


「ならんな。……というか其方もまだ幼いではないか。同じくらいの歳の女子(おなご)を好きになるのは当然のことじゃろ。何故、わざわざ自らを『ロリコン』と銘打つ?」


「いやあ、俺……そういえば言ってなかったですけで、俺が俺じゃなかった頃の記憶があるんですよ」


「オレオレ言い過ぎて話が入ってこなかったが、アレか。前世とかいう与太話の」


「そうです。で、その時は俺も大人だったので、あえてそう言ってるだけです」


 思ったよりもあっさりと前世についてカミングアウトしてしまったが、齢十二の俺が自身をロリコンとする理由を話すためには、こうするしか無かったのである。


「現世で子供なら、どこまで行っても子供じゃと思うがのう。……まあ、前世で仮に大往生したとて、妾からしてみれば百歳以上年下の、赤子のようなものじゃが」


「いやあーいいっすね」


「何がじゃ」


「ロリババアっぽいセリフで。これだからクルピアちゃんのことが好きなんです」


「複雑な気分になる言葉じゃのう」


「褒めてますよ?めちゃくちゃ」


「そ、そうか……。どれ、これ以上妾の頭がごちゃつく前に、アリスへメッセージを送っておいてやろう」


「いやったぁー!ありがとうございます!」


「よいよい。その代わり、今日は妾を撫でながら寝かしつけてもらうぞ」


「何ですかそのご褒美!?喜んで!でも何で!?」


「……人肌が恋しくなっただけじゃ。其方なら安心できるからのう……って、言わせるな恥ずかしい」


「いやっほーぅ!今日はツいてるなぁー!」


 こうして俺は、アリスを紹介してもらう代わりに、クルピアちゃんの頭を撫でて寝かしつけることになった。


 こんなに都合の良いことがあるだろうか。


 今日は俺にとって、最も素晴らしい日の一つになるのであった。

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